中国では一部の小売業者が低価格を売りに積極的にシェアを拡大し、大きな利益を手にしている。ロイター通信は「こうした経営戦略が厳しい価格競争を一段と激化させ、エコノミストは中国でも消費者の間に日本型のデフレマインドが定着し、慢性化するのではないかと危惧している」と伝えた。

ロイター通信によると、中国の安売り業者は不動産危機や高い失業率、暗い経済見通しで消費心理が落ち込む中、何とか需要を掘り起こそうとコーヒーから自動車、衣料品に至るまで、あらゆるものを値下げしている。低価格帯の通販「拼多多」のような企業は、電子商取引大手アリババなどライバルに対抗するために値下げに踏み切り、売上高が増加した。

小売業者は何よりも価格で勝負するため、商品の納入業者は厳しいコスト圧縮を強いられ、利益率が圧迫される。その結果、賃金の伸びが鈍ったり、単発で仕事を請け負う低賃金の「ギグワーカー」への依存度が高まったりして家計の需要が打撃を受ける。

中国の自動車メーカーは国内需要の低迷を受けて、ほぼ2年にわたり価格競争を繰り広げている。一部のディーラーや自動車金融会社はこの2カ月間に頭金なし、さらには金利ゼロなどのローンプログラムを開始した。

米スターバックスは「安売り業者間の熾烈な競争」(ラクスマン・ナラシムハン最高経営責任者)のせいで第1・四半期に中国での売上高が8%減少。この数カ月で割引クーポンの利用を増やし、価格を安売りの瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)などに接近させている。

一方、直近の決算シーズンで安売り業者は利益が市場予想を上回り、競合他社を凌駕(りょうが)した。「拼多多」を運営するPDDホールディングスは131%の増収を記録。フードデリバリーアプリの美団は25%、ディスカウントストアの名創と瑞幸咖啡もそれぞれ26%、42%の増収だった。

オーストラリア・メルボルンにあるモナシュ大学のヘリン・シ教授(経済学)は「この状況が続けば中国は悪循環に陥るかもしれない」と指摘。

「付加価値の低い消費がデフレを引き起こし、利益率が悪化して賃金が下がり、それがさらに消費を押し下げるという負の連鎖だ」と警鐘を鳴らした。

中国欧州国際ビジネススクール(上海)のアルバート・フー教授(経済学)は「長期的には価格競争によってさまざまな産業で弱小プレーヤーが淘汰(とうた)され、生き残った企業は価格を引き上げてサプライチェーンに一息つかせることができるようになるかもしれない」と話した。ただ、こうした展開が可能になるのは「価格競争が引き起こす市場からの業者撤退を補うだけの雇用と所得が他の産業で創出された場合に限られる」とくぎを刺した。(編集/日向)