パリ五輪にバドミントン女子ダブルスで出場した志田千陽選手は、中国でも「人気爆発」の状態だ。松山奈未選手と組んだ「シダマツ」ペアは3位に終わり、優勝したのは中国の陳清晨/賈一凡ペアで、2位は劉聖書/譚寧ペアだった。
まずは笑顔と優美なフォームで人気集める
最終段階に入ったパリ五輪だが、今年の日本人選手で「最大の勝者」は志田千陽選手だ。金メダルは取れなかったが、知名度や広告価値は急上昇した。
志田選手でまず感じるのは、甘い笑顔と優美な打撃フォームだ。アジアを中心に人気を博し、特に中国では極めて多くの人に好まれるようになった。ネットでの人気はうなぎのぼりで、優勝した選手以上だ。志田選手はネット投票で「バドミントン界最強の美少女」に選ばれたことがある。まず、そのよく笑う姿が中国人の気持ちをつかんだ。中国人選手が強い競技としては意外なことに、多くの中国人が「志田千陽選手が金メダルを獲得するのを見たい」と断言した。
もちろん競技場では、実力こそが冷厳な原則だ。中国の陳清晨/賈一凡ペア、劉聖書/譚寧ペアは、人々の期待にたがわずに中国勢として金銀のメダルを独占した。
負けても粗暴なふるまい見せず涙する
テニスなどでは、女子を含めて試合に敗れた選手がラケットをコートに叩きつけるなどの行為が目立つ。志田選手は違う。試合に敗れた直後に「楚々とした様子」で涙を流した。志田選手にとっては気の毒な話だが、「梨花帯雨(美女が悩み苦しむ風情)」によって、多くの人の検索対象になった。かつての卓球の福原愛選手も、中国人選手に敗れて泣いたことで、中国での人気が大きく高まった。志田選手についても、同じ構図だ。
さらに興味深かったのは、3位入賞者として表彰台に上がった際に、優勝ペアを称えて中国国歌が流れると、志田選手が中国人選手に従って、曲を口ずさんだことだ。中国ペアになかなか勝てない志田の脳裏には、このメロディーが刻まれているようだということだ。
志田選手の画像や動画は試合後に、ネットの多くのSNSで広がって、一夜にしてフォロワー数が100万人を突破した。志田選手の広告価値に改めて注目した企業も多い。
「お寺育ち」で人格を形成か
志田選手はパリ五輪出場前からすでに有名で、日本のメディアは「秋田美人」「バドミントン界の永野芽郁」と評していた。日本では「秋田美人」「京都美人」「博多美人」が「三大美人」とされている。われわれ中国人が西施や貂蝉に抱くイメージにやや似た面がある。
他の多くのスポーツ選手と違って、志田選手はスポーツ一家の出身ではなく、父親は僧侶だ。
志田選手と松山奈未選手のペアは2015年に結成された。2人のコンビネーションが乱れることはないが、日本国内でも世界選手権でも、獲得できたのは銀メダルや銅メダルで優勝とは縁がなかった。また、21年開催の東京五輪では出場を逃した。しかし2人はくじけずに力を伸ばし続け、22年には国際バドミントン連盟の世界ランキングで自己最高の2位に達した。
また、英国オープンやインドオープン、中国マスターズ、ワールドツアーなどでは優勝を果たし、「なかなか抜きん出ることができない窮地」に別れを告げた。決勝で中国ペアに遭遇しなければ、志田選手は世界一になる。
自分を泣かせる中国人選手をリスペクト
志田選手はパリ五輪の試合が終了した後に、ペアを組む松山選手とのツーショット写真をたくさん投稿した。まるで姉妹であるような画像からは温かみを感じた。志田選手はさらに、パリ滞在中に中国の選手と遊ぶ様子も紹介した。特に、「偶像として尊敬する」譚寧選手とのツーショット写真では「怒涛の大量投稿」をした。
中国で劉聖書/譚寧ペアの人気は高い。
志田選手が競技場で、譚選手の前で泣いた回数は、おそらく友達やコーチの前で泣いた回数の合計よりも多い。志田選手の夢の中には譚選手がしばしば出てくるような気さえする。二人は一種の「縁」で結ばれているのではないか。(翻訳・編集/如月隼人)