2024年9月2日、韓国メディア・韓国経済は「自由貿易協定(FTA)交渉の過程で韓国の厳格な衛生植物検疫(SPS)を問題視する国が増えている」と伝えた。「輸出市場の拡大に向けFTA締結国を増やし世界一にする」という政府目標も揺らぎかねず、検疫政策を柔軟にすべきだとの声が上がっているという。
記事によると、韓国とのFTA再交渉を進めている複数の国が、韓国の検疫に問題を提起している。アルゼンチン、ブラジルなどが加盟している南米南部共同市場(メルコスール)とは21年9月まで7回にわたり交渉を行ったが決裂。韓国政府は今年、交渉を再開する方針だが、検疫などの問題で大きな進展をみせていない。22年3月に交渉再開を宣言したものの、いまだ正式な交渉が行われていないメキシコの場合も、検疫が障害物となっている。産業通商資源部のチョン・インギョ通商交渉本部長は先月22日の会見で、「複数の国の通商当局者から、そのような(検疫問題)質問を受けている」と認めている。
検疫は国民の健康に直結する問題のため、全ての国が世界貿易機関(WTO)の基準に従って厳格に行っているが、韓国の交渉相手国が共通的に問題視しているのは、「韓国が検疫を貿易障壁として悪用している」ことだという。
代表的な例がリンゴとナシで、豪州は1989年にリンゴ輸出を申請したが、現在まで一度も韓国に輸入されていない。国際社会で「韓国はリンゴとナシを輸入しない国」というイメージが強くなり、各国とのFTA交渉の場では「他国ならとっくに実現できている農産物輸出が、韓国では10年以上、止められている」と不満の声が聞かれるという。「韓国はわが国に自動車と携帯電話を熱心に売ってくるのに、農産物検疫を理由に輸入を防ぐ」と漏らす官僚もいたという。
また、メルコスール、メキシコとの交渉が平行線のままなのは、工業製品をより多く開放させたい韓国と、農畜産物輸出と検疫市場の隙間を広げたい相手国という立場の違いのせいだと、記事は説明している。
多くの国が厳格な検疫を実施しているのは、一度、病害虫が流入すると防除が困難になるからという点も大きい。韓国は検疫手順が特に厳しく長期間かかる国に分類されるという。
韓国の交渉相手国は、「韓国が検疫の基本原則である『同等性』の原則を守らない」「韓国は検疫を事実上、非関税障壁として悪用している」と指摘している。「同等性」の原則とは、新しい方法で従来と同じ防除効果が得られることが立証された場合、同一の検疫方法として認めるというもの。韓国は大部分の植物について、薫蒸(40度以上のガスで蒸すようにして病害虫を除去する方法)を要求しているが、薫蒸は冷凍、冷蔵の状態で流通される果物の商品性にとって致命的なものだという。それでも韓国は、薬品処理や低温保管など他の方法をなかなか認めない。
その他、厳格な検疫を維持する背景には、約5万世帯にのぼるリンゴ、ナシ農家の保護問題もある。これに関して専門家は、開放を発展の機会として生かしたケースも多いとして「日本も輸入リンゴを警戒していたが、開放から31年が過ぎた現在、消費者は品質の優れた国産リンゴを選択しており、輸入リンゴの比率はわずか5%にとどまっている」と紹介している。
この記事に、韓国のネットユーザーからは「韓国の果物の値段が世界一高い理由はこれだったのか」「そういえばリンゴ農家の人ってみんな金持ちだな」「輸入リンゴとナシが入ってきたら、果樹農家が光化門広場に集まりそう」「農家を保護し過ぎると競争力が失われる」「いまだに近代化できていない『大韓朝鮮』の鎖国政策」といった声が寄せられている。
一方で、「検疫は厳格で当り前。それを問題視するのはおかしい」「当たり前のことをしてるだけ。適当な検疫で持ち込んだ物に問題が発生したら誰が責任を取るんだ?」「輸入品の検疫はどんなに徹底しても足りないくらいだと思う」「検疫の目的は経済ではなく、韓国の生態系の保護と、韓国人の感染症予防だ」など、厳格な検疫に賛成するコメントも多く見られた。(翻訳・編集/麻江)