中国では、外国人などを対象にする医療ツーリズムを活性化しようとする動きが続いている。その場合、他国とは異なる「空き席」を見出すことが、成功の鍵になる可能性が高いという。

中国メディアの環球時報が、香港メディアのサウスチャイナ・モーニング・ポストを引用するなどで紹介した。

2020年の世界の医療ツーリズム市場の規模は約115億6000万ドル(約1兆6500億円)であり、28年までに535億1000万ドル(約7兆6200万円)に増加すると予測されている。中国で医療ツーリズムが注目されている背景には、14億人以上の自国民のニーズに応えるため、医療分野で急速なイノベーションと技術開発が進められてきたことがある。ただし業界関係者は、この分野における近隣地域の確固たる地位を考えると、中国はまだ長い道のりを歩まねばならないかもしれないと見ている。

上海市では23年に、レベルが高い公立病院による国際医療ツーリズム対応を試験導入し、病院13カ所が計26万9000人に医療サービスを提供した。広東省深セン市でも同年には海外からの77万人に対して医療サービスを提供した。深セン市の場合、患者の多くは香港とマカオからであり、その他は米国、カナダ、日本からだ。深セン市は今年になり市内の10の病院を国際医療ツーリズムの試験病院にすると発表した。海南省のボアオも楽城国際医療ツーリズム先行区を設けて数十の機関を誘致して、同先行区だけで認められた医療行為や健康管理、リハビリテーション、医療美容、アンチエイジングなどの施術を行っている。医療を受けるために23年にボアオを訪問した人は前年比で約60%増の30万人近くに達した。

医療ツーリズムの世界的な特徴としては、特定の国が特定分野について、専門技術や価格競争力などにより「ブランド力」を獲得する現象がある。例えば米国の先端的ながん治療、韓国の美容整形手術、日本の総合的な健康診断、トルコの大規模植毛などだ。

中国の場合に、これらの特定分野についてのブランド力は形成されていない。

この状況を打破しようとしている一例が、上海交通大学医学院附属仁済病院だ。同病院は小児肝移植の分野で、高度に複雑で技術的に非常に挑戦的な手術を行う世界最大の医療センターとして知られており、14年以降に外国人児童患者数十人の肝移植手術を成功させた。同病院の責任者は、国際医療ツーリズムの促進が同病院の重要課題の一つであり、より多くの海外の患者が同院が得意とする医療サービスを受けることを望むと述べた。(翻訳・編集/如月隼人)

仁済医院
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