2024年9月8日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは「水素はクリーンなエネルギーなのか」と題した記事を掲載した。
記事は、アフリカの政財界リーダーがナミビアに集まって大型サミット会議が開かれ、水素エネルギーがアフリカ大陸での「グリーン産業革命」を推進することに期待を寄せたと紹介。
その上で、水素自体は直接的に温室効果ガスを発生させないものの、入手するには主に水を電気分解する必要があり、そのための電力利用によって温室効果ガスが発生すると指摘。その割合は、世界の温室効果ガス排出量の約2.2%を占めると伝えた。
また、水素自体は無色ガスであるものの、業界ではその入手方法についてカラーを用いて呼び分けているとし、現在最も生産割合が大きい「灰色水素」は天然ガスやメタノールを燃料としており、灰色水素1トンを生産するごとに約10トンの二酸化炭素が大気中に放出されると紹介。石炭から製造される黒色水素や褐色水素はさらに有害であり、地球温暖化につながる二酸化炭素に加え、大気を汚染する一酸化炭素も排出されるとした。
さらに、水蒸気改質プロセスで捕捉した二酸化炭素を地下に貯蔵する「青色水素」は、比較的クリーンであるものの排出される炭素の10~20%を捕捉できないなど見通しは限られているとしたほか、原子力発電を用いる「ピンク色水素」も炭素を排出しない一方で放射性廃棄物が出るという別の問題が生じると指摘した。
記事は、再生可能エネルギーから生まれた電気を利用して水分子を酸素と水素に分解する「緑色水素」こそ唯一の完全なクリーンエネルギーだとするも、現状では世界の水素生産量に占める「緑色水素」の割合は1%にも満たないと指摘。その背景には「灰色水素」の2倍以上という生産コストの高さがあり、国際シンクタンクのエネルギー転換委員会によると、水素を世界のエネルギー需要の15~20%を供給できるレベルまで開発するには、2050年までに15兆ドル(約2100兆円)の追加投資が必要だと伝えた。
このほか、水素は大量輸送も難しく、特別な高圧容器に貯蔵するか、液化(摂氏マイナス253度)してパイプライン、タンカー、船舶で輸送する必要があるとしたほか、各地でのインフラ整備も進めなければならないと紹介。ドイツをはじめとする各国が今後10年間で水素エネルギー分野に大規模な投資を行い、水素を化石燃料の代替となる現実的なエネルギー源にするという目標を掲げて取り組んでいるとした。(編集・翻訳/川尻)