香港メディアの香港01は11日付で、2024年のノーベル平和賞が日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に与えられることに決まったことについて「衝突が絶えない世界への警告か」と論じる記事を発表した。以下は同記事の主要部分を再構成したものだ。
日本の個人または団体がノーベル平和賞を受賞するのは1974年の佐藤栄作元首相以来、半世紀ぶりだ。核兵器廃絶を訴える被団協は、ロシア・ウクライナ戦争、中東での衝突、スーダン内戦など破壊的な争いが横行する世界において、まさに「人々の目を覚まさせる警鐘」を鳴らし続けている。皮肉なことに、被団協のノーベル平和賞受賞のニュースが流れて間もなく、イランが核拡散防止条約からの脱退を検討しているとの報道があり、今の世界が直面する核戦争への懸念が決して杞憂ではないことが示された。
ノーベル平和賞の授与を決めるノルウェーのノーベル委員会は、被団協は広島と長崎の原爆生存者により設立された草の根活動団体であると指摘し、被団協は目撃者の証言を通じて、核兵器は2度と使用されるべきではないと強調し、核兵器のない世界の実現を目指していると紹介した。
しかし、われわれ置かれている現状は、この美しい目標からますます遠ざかっている。まず、ロシアの侵攻によって引き起こされたウクライナ戦争は3度目の冬に入る。双方の死傷者は数十万人と推定されるなど、すでに驚くべき数の犠牲が発生している。
中東でも、2023年10月7日に武装勢力のハマスがイスラエルに対する血なまぐさい攻撃を実施して、ほとんどが民間人の約1200人が死亡した。暴力はエスカレートし、数千人の子供や女性を含む数万人が犠牲になった。そして戦争はより広い地域に広がった。ガザ保健当局によると、ガザでの戦争では4万2000人以上が死亡し、その半数以上が女性と子供だ。イスラエル軍がヒズボラに対する攻勢を大幅に拡大した2024年9月中旬以降、レバノンでは1400人以上が死亡し、数千人が負傷し、約100万人が難民になった。
アフリカでは、スーダンで内戦が17カ月にわたって続いており、これまでに2万人以上が死亡し、800万人以上が家を離れさることを余儀なくさせられた。同国では、この内乱が始まる前に、約200万人が難民化していた。
10月1日にはイランがイスラエルに180発以上の弾道ミサイルを発射し、ヒズボラの指導者だったハッサン・ナスララ師の殺害に報復した。イスラエル側の猛烈な反撃をするかどうかを、中東の多くの国が注視している。さらにイスラエルの右翼勢力からは、ネタニヤフ政権はイランの核施設を狙うべきとの声も出ている。イスラエルのイラクの核施設攻撃は、これまでも、戦略上の最も深刻な脅威と見なされてきた。
イスラエルのヨアブ・ガラント国防相は先日、イスラエルの対応は「致命的で、正確で、そして何よりも驚くべきものになる」と述べた。
イランメディアは先日、イランの国防理論は核兵器の制造を禁止しているが、39人の議員がイスラエルの攻撃を考慮して、イラン最高国家安全保障委員会に手紙を送り、核兵器の開発を迅速に推進するよう求めたと報じた。イラン最高指導者ハメネイ師の上級顧問であるラソウル・サナーイー・ラード氏は最近になり、イスラエルがイランの核施設を標的にするならば、テヘランは核政策を変えるかもしれないと警告した。
米国はイスラエルのネタニヤフ大統領に、イランの核施設や石油関連インフラを標的にしないよう求めている。一方で、ある専門家はイランの主要な核施設は地下深くに建設されるなどで厳重に防御されているために、イスラエルがイランの核施設を攻撃しても、米国の支援がなければ成功する可能性は低いと指摘した。
2018年にドナルド・トランプ元米大統領がイランと世界の大国からなる六カ国合意から一方的に脱退してイラン制裁を始めて以来、イラン当局は先進的な遠心分離機の設置などの核関連作業を積極的に強化しており、過去数年にわたり兵器用に近い純度60%のウランの製造を続けてきた。
国際原子力機関(IAEA)と米国の関係者は最近なり、イランが兵器を開発している証拠はないと述べたが、イランに検査官を置くIAEAは、イランが核兵器の製造を決めれば、核爆弾3発分に十分な量の核物質を数週間以内に保有できると推定している。
いずれにしても、世界情勢は「差し迫った危機」に直面する状態だ。中国政府・外交部の毛寧報道官は先日、「中国は中東情勢の動揺を深く憂慮し、対立の激化と衝突の拡大に反対する。各方面には地域の平和と安定を守ることを出発点とするよう呼びかける」「国際社会、特に影響力のある大国は、建設的な役割を確実に果たし、情勢がさらに激化することを防ぐべきだ。冷静で理性的、かつ責任ある態度で当面の情勢を処理せねばない」と呼び掛けた。(翻訳・編集/如月隼人)