2024年10月25日、中国メディアの環球時報は「日本の紙幣印刷工場に隠された秘密」と題した記事を掲載した。

記事は、日本円の紙幣を印刷している国立印刷局はもともと見学の予約が取りづらく、新紙幣が発行されてからは連日、見学予約開始1時間で定員に達するほどの人気になっていると紹介。

数日前、たまたま印刷局東京工場の見学ツアーに臨時のキャンセルが出ていることに気づき、急いで応募して晴れて見学の機会を得ることができたと伝えた。

そして、紙幣という特殊な性質上、工場見学はセキュリティーが厳しくなっており、予約の段階で個人情報を記入し、見学当日は身分証明書を持参して入口でチェックを受ける必要があるとしたほか、入場後はハンカチと飲料水以外の私物はすべてロッカーに預けなければならず、写真撮影も展示ホールの一角でしかできないことになっていると紹介した。

その上で、セキュリティーチェックを済ませ工場内部に入るとかすかに特殊インクの生臭いにおいが漂ってきたとし、案内係の話では「このにおいに耐えかねて2週間で退職した若い人もいる」と紹介した。また、印刷作業の様子を見学する場所は通常すりガラスになって作業場の中が見えないようになっており、案内係がボタンを押すことでガラスが透明になり中が見えるようになると説明。作業場では紙幣のシートを裁断したり、偽造防止のラベルを貼ったり、番号を印刷したりする工程や、各工程を終えた紙幣を点検するようすが見えたと伝えている。

さらに、印刷した紙幣の枚数チェックは特に厳しく行われており、かつては作業員が始業時と就業時に裸になって検査を受けていたものの、1950年代以降は女性作業員の雇用をきっかけにこのような検査方法は廃止されたというエピソードを紹介。現在では、各工程における紙幣の枚数をすべてチェックし、各工程で数量が一致しなければ作業員が帰れないようになっているとした。また「機械の故障などの緊急事態ではどうするのか」という質問に対して案内係が「確かに印刷機の中で紙詰まりが起きて枚数が合わなくなったことがある。その時は詰まった紙を全部見つけるまで、全員が待機していなければならなかった」と説明したことを伝えた。

記事は、工場を見学した印象として日本の紙幣印刷技術がよく発達していることにも言及し、特殊な加工を施した紙に加えて、触覚、透かし、傾き、鑑別ツールといったさまざまな手法による偽造防止策が施されていると紹介。触覚による偽造防止技術では深い凹版印刷が採用され、透かしでは精度の高い透かし絵と「すき入れ」が用いられているとした。また、インクは紫外線を当てると発光するという特性のほか、傾けると光沢が見えるパールインクが採用されていると説明し、特に興味深かった技術として角度によって肖像画の向きが変わる3Dホログラムを挙げた。

さらに、目の不自由な人がすぐに識別しやすいように、各紙幣の縁のそれぞれ異なる位置に11本の斜線からなる識別マークが付されているとも紹介している。(編集・翻訳/川尻)

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