中国・上海市の地下鉄で、持ち込んだ小型の折り畳み椅子を広げて座る「板凳族(ベンチ族)」が問題になっている。中国メディアの新民晩報が29日付で伝えた。

記事によると、このほど「上海地下鉄11号線のベンチ族」がSNSで再びホットワードになった。SNS上には、地下鉄に乗り込み小型の折り畳み椅子を広げて座る乗客の姿を撮影した写真や動画が相次いで投稿されている。中には車内の手すりを背もたれ代わりにする客や、果てはプールなどで見られる大型のビーチチェアを持ち込んで優雅に横たわるツワモノまで現れた。

こうした状況に「通勤距離が短くて疲れないなら、誰がこんなふうにしたいと思うか。朝早く起きて、朝食を食べる時間もなく電車に乗り込み、長時間立っているなんてつらすぎる。体調が悪いときなんてなおさらだ」と理解を示す声や、「(車内で)立っていて崩れ落ちそうになる。11号線は常に大混雑で基本的に座席には座れない。みんな基本的に降りる駅は同じ(だから途中で席が空くこともない)」「重罰を科したり、他の交通機関が改善されたりしない限り、こうした状態はずっと続く」との声が上がった。

地下鉄の「ベンチ族」が物議、運行会社がやめてと呼び掛けもガン無視―上海市
上海地下鉄のベンチ族

一方で、「(駅で)ドアが開いてもすでに満員。椅子を持ち込んで座るやつ、床にそのまま座るやつ、何でもあり。(列の)後ろの人が乗れない」「立って乗ろうにも乗れないほど混んでいるのに自分たちだけが座っている。(倒れて踏みつけられる)事故に遭っても自己責任でよろしく」「疲れていることを理由にするな。

みんな疲れている。椅子を持ち込まれることで列車に乗れない人もいるんだ。そんなに疲れているならタクシーに乗れ。それに、座っていると車外から見えず、まだスペースがあると思ってどんどん乗り込もうとするから危険」といった否定的な声も出るなど賛否が割れている。

地下鉄運行会社は「万一、急ブレーキがかかった時などには(持ち込んだ椅子に座っている人は)転倒したり、他の乗客に踏まれたりしてけがをする恐れがある」として、一貫して椅子を持ち込まないよう呼び掛けており、車内にはピクトグラムを添えた注意書きも掲示されている。しかし、「ベンチ族」の目には入らないようで、注意書きの真下で折り畳み椅子を取り出して座るという状況が当たり前になっているという。

地下鉄の「ベンチ族」が物議、運行会社がやめてと呼び掛けもガン無視―上海市
上海地下鉄のベンチ族

市民からは、上海地下鉄11号線は路線が長く、他の路線が乗り入れている駅も少ないため「ベンチ族」が発生しやすいとし、混雑緩和のためラッシュの時間帯に「特別急行」や「通勤快速」など主要駅だけを結ぶ列車を増便することや、発車間隔を短縮することなどを求める声が出ているというが、上海市交通委員会は線路など設備的な問題や、通過列車の待合でホームに乗客が滞留して輸送効率が低下する問題、乗客過多によるセキュリティー上の問題などで難しいとの見方を示している。

地下鉄の「ベンチ族」が物議、運行会社がやめてと呼び掛けもガン無視―上海市
上海地下鉄のベンチ族

ネットユーザーからは「この問題は長年、言われ続けている」「椅子を持ち込むのはわがままだと思う」「人口が多すぎるから解決しないだろうな」「サラリーマンは大変。毎日地下鉄で長距離通勤。終わらない残業。椅子を持ち込みたくなる気持ちも分かる」「小型の折り畳み椅子なら分かるけどビーチチェアとかはやりすぎ」「乗客が少ないならいいと思う。混んでいる時には危険だし不道徳」「結局のところ素養の問題。

広州地下鉄3号線だって3本見送ってようやく乗れるほど混んでいるけど、椅子を持ち込んで座る人なんていない。はっきり言って(上海の人々は)素養が低すぎる」などのコメントが寄せられている。(翻訳・編集/北田)

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