中国メディアの環球時報は4日、「高齢者のために中国当局が200万基のエレベーターを設置する計画を立てている」とする英紙フィナンシャル・タイムズの報道を紹介した。

フィナンシャル・タイムズの記事は、中国ではかつて旧ソ連風のコンクリート造りの住宅が数多く建てられたが、数十年が経ち、住民の高齢化が進む中で、階段の上り下りに苦労するという状況が出てきたと説明。

北京市の6階建て集合住宅に住む71歳の女性・李(リー)さんが「エレベーターは必要だが、私たち高齢者は(費用を)負担できない」と語ったことを紹介した。

記事によると、1980~2000年に建設した築二十数年以上の建物のすべてにエレベーターを設置するには、少なくとも200万基が必要だと言われている。中国では老朽化した団地を改修する大規模なプロジェクトが計画されているが、エレベーターの増設費用を誰が負担するかについてはケースバイケースで、結論が出ていない場所も少なくないという。

200万基のエレベーター増設が必要な中国、誰が金を出すかでもめる―英メディア

中国は2018年の政府活動報告で初めてエレベーターの増設に言及したが、それ以来、誰が費用を負担するかという問題に悩まされてきた。23年には中国の都市部の老朽化した団地にエレベーター3万6000基が増設された。中には40%を負担するという地方自治体もあったが、住民が負担を迫られるケースもある。住民同士でも意見の相違があり、低層階の住民がエレベーター設置にかかる費用負担に難色を示すことも多い。また、エレベーター設置のため駐車スペースが削られることが問題になるケースもあるようだ。

上海や北京では、修繕積立金などをエレベーターの増設費用に充てるという選択肢もあるが、進度は遅いという。業界関係者の推計では、上海にはエレベーターが設置されていない古い建物がおよそ26万棟あるが、23年に増設されたエレベーターは前年の2303基からやや増えたものの、3001基にとどまっている。

あるエレベーターメーカーは、増設にかかるコストを一旦自社で負担し、その後、住民から利用料を徴収するという方法を打ち出している。顔認証カメラで利用者を判別し、1回につき0.2~0.85元(4~17円)の利用料を支払ってもらう。

広東省深セン市にはすでにこうしたエレベーターが200基設置されており、15年以内にコストを回収できる見通しだという。

ただ、同社は確実なコスト回収や持続可能性を考慮し、補助金が支給される省から優先的にこうしたエレベーターを設置していく考えを示している。(翻訳・編集/北田)

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