雲南省・騰衝市にあるホテルの従業員が日本人の宿泊を拒否した件で、従業員本人が現地にある日本軍との戦いで戦死した将兵を顕彰する施設を訪れて献花する動画が投稿された。また、地元当局も、現地の複数の「愛国施設」を紹介するネット投稿をした。
ことの発端は6日だった。情報サイトの網易が掲載した記事よると、ホテル従業員は最初、「非常に礼儀正しく」宿泊を拒否した。さらに同ホテルのサービスが基準に達していないことも一因と説明した。すると宿泊を求めた中国人女性は興奮し、大声で批判しはじめた。そのため、ホテル従業員は警報を鳴らし、警察に通報した。中国人女性と日本人は宿泊できずに夜を過ごし、騰衝市を離れたという。
中国には、宿泊施設が外国人客の受け入れを望む場合、当局に申請して許可を取らねばならない制度がある。当局は、サービスが一定基準に達していると判断できれば許可を出す。同ホテルは許可を取得していなかったとされる。
中国では同件が大きな話題になり、インターネットではさまざまな「意見表明」が飛び交った。「ホテル側は規則に従って処理したのであり、問題はない」とする意見も多い。しかし、ホテル従業員が開口一番に、騰衝市全体が日本人を拒絶すると言ったことは、日本人に特化して拒絶したことになる。
なお中国では、公開されている同ホテルのサービス内容の1項目に「本ホテルは日本人旅行者を受け入れることができません」とする一文があったとする「証拠画像」がネット投稿された。しかし、旅行関連プラットフォームで中国最大手の携程集団(トリップドットコムグループ)による同ホテル紹介ページでは、「証拠画像」と同じレイアウトであるにもかかわらず、日本人を拒絶する一文は存在しない(日本時間11月10日午後3時20分現在)。
現地の騰衝市は、第二次世界大戦中の「拉孟・騰越(らもう・とうえつのたたかい)の戦い」の舞台として知られる。この戦いでは日本軍約5000人が玉砕(全員戦死)した。しかし中国側は、日本軍をはるかに上回る約1万3000人が戦死し、約1万4000人が負傷したとされる。雲南省ではそれ以外にも、日本軍と中国軍の激戦が数多く発生した。
その影響もあってか、中国のネットでは「愛国感情」に基づいて同ホテルおよび対応した従業員を称賛する投稿が相次いだ。中には「南京も見習うべき」などと、中国にとって日本軍の残虐行為のシンボルである「侵華日軍南京大屠殺遭難同胞紀念館」がある南京市を引き合いに出す投稿もある。
同件ではさらに、日本人の宿泊を拒絶したホテル従業員が、現地にある日本軍との戦いで戦死した将兵を顕彰する施設で献花する動画が投稿された。献花したのは若い女性で、記念碑に献花して深く頭を下げる様子がやや離れた場所から撮影されており、歩く姿を追う場面もあるので、別に撮影スタッフがいたことは間違いない。
動画が投稿されると「外面はたおやかで内面はしっかり。中国のよき娘」「ありがとう。普通の中国人に手本を示してくれた」「私は南京人だ。一瞬で私の目から熱い涙があふれた」といったコメントが相次いだ。
また、現地で観光行政を担当する騰衝市文化和旅遊局は8日になり、地元の複数の「愛国施設」を紹介するネット投稿をした。動画を使って施設数カ所の静止画像を次々に紹介し、「懐古する、よりよく前進するために!」の短文を添えた。
中国では同ホテル従業員を称賛する声が続いているが、疑問を示す投稿も多い。「妥当性をやや欠く。人は国籍によってではなく、その人の品性によって(対応に)違いを設けるべきだ」「訪れたのは客だ。深夜になって宿泊を拒絶するのは、明らかに妥当ではない」といった書き込みがある。
また、海外で中国当局に反対する立場のメディアは、日本人拒否を皮肉った投稿も多いとして、「騰衝は日本のアニメ、日本ブランドの服、日本の飲食物などを全てボイコットしろ」「このホテルが正しいかどうかは議論しないが、入国した外国人のホテル探しをそんなに面倒にするなら、対外ビザ免除の意味はどこにあるのか」「日本の技術を使って手に入れた人民元もある。現地の人は(その人民元を)すべて捨てる勇気があるのかどうか」「騰衝の人が普段現金で支払うのか、スキャンするのか知らないが、QRコードは日本人が発明したものだ」など多くの意見を紹介した。(翻訳・編集/如月隼人)
— 中国動画 (@RC00547555) November 10, 2024
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