「香りが良く、かむと甘い味がする」。湖南ハイブリッド稲研究センターの食味検査室に入ると、アツアツの白米がちょうど炊きあがっていた。
ハイブリッド稲栽培は中国が初めて海外に譲渡した農業テクノロジーで、国連食糧農業機関(FAO)から発展途上国の食糧不足問題を解決するための最優先技術として挙げられている。1979年よりハイブリッド稲は五大陸の70カ国近くに広がり、海外での栽培面積が800万ヘクタール近くに上っている。
海外の稲のほとんどは東南アジア、南アジア、アフリカなどの「一帯一路」共同建設国で栽培されている。湖南ハイブリッド稲研究センターおよび袁隆平農業ハイテク(以下「隆平ハイテク」)党委員会副書記で副総裁の紀紹勤氏は、「稲は生態適応性が低く、中国の高収量品種を熱帯の多雨地帯で直接栽培すれば、深刻な病虫害に見舞われ収穫できない可能性が高い。そのためハイブリッド稲の真の海外進出は、研究開発を先に行い、現地化育種に注力するべきだ」と述べた。
隆平ハイテクは「ハイブリッド稲の父」と呼ばれる袁隆平院士が1999年に主要創設者となって設立したものだ。世界10大種子企業の一つとして、商業化育種システムやスマート育種プラットフォームなどを中核とする独自イノベーションシステムを持ち、ハイブリッド稲の市場シェアで世界1位になっている。
2004年、隆平ハイテクは海南熱帯ハイブリッド稲研究センターを設立。07年よりフィリピン、パキスタン、インド、ベトナムで相次いで研究開発センターを設立し、各国の優良遺伝資源との交配により世界的な「シャトル育種」を実現。
「中国種業10人の傑出した人物」に選ばれた隆平ハイテクの楊遠柱首席専門家は、「パキスタンは今夏、まれに見る高温に見舞われた。現地の多くの輸入ハイブリッド稲の結実率は5~10%にとどまったが、われわれが現地で選び育てた高温に強い品種の結実率は50~60%に達した」と述べた。
1984年、袁隆平院士は湖南ハイブリッド稲研究センターを創立し、初代センター長に就任した。同センターは現在まで30期以上のハイブリッド稲技術研修コースを実施。80以上の国・地域の2000人以上の専門家・学者・政府関係者が訪れ、交流し、研修や学習を行っている。
湖南省農業科学院副院長で、湖南ハイブリッド稲研究センター党委員会書記の許靖波氏は、「センターは近年、マダガスカルと共同で四つの新品種を開発し、2.5~3倍の増産を実現した。現地の額面が最大の紙幣にはハイブリッド稲の模様が印刷されている」と述べた。
中国・マダガスカルハイブリッド稲「一帯一路」共同実験室の設立が今年10月に承認され、建設が始まった。袁隆平院士の教え子で、湖南ハイブリッド稲研究センター副センター長の李莉氏は、「年末には技術チームがマダガスカルに行き、現地の大学と作業を実施する。これはアフリカ向けのハイブリッド稲技術イノベーションセンター、そして一帯一路共同建設国間の国際科学研究協力モデルになるだろう」と述べた。
袁隆平院士は生前、しばしば「高く成長したイネの下で涼む」と「ハイブリッド稲を全世界に普及させる」という二つの夢を持っていた。