地球最深のマリアナ海溝の1万メートルの深淵における水圧は、1枚の爪に1トンのサイが乗るのに相当し、水温は氷点に近い。これまで、ここに到達できるものの多くは、重さが数トンに及ぶ硬式の大型潜水機だった。
この1万メートルの深海でマルチモーダル運動を実現できる小型深海変形ロボットは、北京航空航天大学機械工学・自動化学院の研究チームが中国科学院深海科学・工学研究所、浙江大学と6年の歳月をかけて共同開発したものだ。研究チームはアカグツ科の運動モデルから着想を得て、遊泳、滑空、歩行が可能なマルチモーダルロボットを設計した。

「1万メートルの深海の水圧は小型ロボットにとって小さな氷山がのしかかるほどのものだ」。研究チームの責任者の文力(ウェン・リー)教授によると、深海の高圧において、柔軟性駆動材の弾性率の上昇は、駆動の振幅と速度の低下を招き、ロボットの動作性能を下げる。研究チームはこの課題を克服するため新しい深海駆動装置を開発した。双安定性状態を持つキラル超材料構造を利用し、二つの安定状態間の急速なスナップ動作により、効率的な駆動を実現した。さらに、この装置は深海高圧の柔軟性材料への悪影響を巧みにロボットの駆動性能の向上に変換。従来の柔軟性材料駆動装置の深海環境における性能低下の課題を克服した。
同チームは現在すでに「深海柔軟性ロボット+AI(人工知能)」の方向性に向けてさらに研究を進めているとともに、深海小型ロボットの航続能力と動作効率の引き上げに焦点を当て、より広範囲の深海探査・モニタリングを実現する。