2025年7月2日、中国の映画専門のポータルサイト・1905電影網に「劇場版「名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)」が中国で興行収入約40億円を最速突破した理由」と題した記事が掲載された。
記事はまず、「劇場版シリーズ最新作『名探偵コナン 隻眼の残像』が、中国公開からわずか数日で興行収入2億元を突破するシリーズ最速記録を打ち立てた。
記事は、小楊氏が「私にとって、この問いはほとんど考えるまでもない。『名探偵コナン』を追いかけることは、もはや本能のようなものだ。小学生の頃、小遣いを貯めては次々と漫画を買っていた記憶が鮮明に残っている。ページを開くと印刷のインクの匂いが立ちのぼり、巧妙に仕組まれた事件の数々に毎回驚かされていた。あの頃の『山荘包帯男殺人事件』や『ピアノソナタ 月光殺人事件』は、まさに子ども時代のトラウマだったが、それでも何度も繰り返し読んでしまうほど魅力があった。今では、毎年劇場版を映画館で見ることが、一種の『儀式』のようになっている。
また、小寧氏も「作中の時間が止まっているが、現実世界では、子ども時代に作品に親しんだ人が今は親となり、子どもを連れて見に行っている。このサイクルが作品に持続的な生命を与えているのだ」と語ったとし、李墨氏も「現代は情報が爆発的に増え、次々と新しいものが生まれては消えていく時代。そんな中で『名探偵コナン』は毎年春に必ず新作が公開され、主要キャラクターの関係性も簡単には変わらず、そして最終的には正義が必ず勝つと決まっている。この『確実性』こそが、非常に強い魅力となっているのである。これは典型的な『感情消費』で、観客は映画館に足を運ぶ際、単にチケットを買っているのではなく『なじみ』と『安心感』を買っているのだ。長年にわたって築かれたこの信頼関係は、新しい作品では到底届かないものである。これが、たとえ作品ごとの評価が分かれたとしても、劇場版シリーズが常に高い興行を維持できる理由なのである」と、マーケットと観客心理の観点から補足したとした。
一方で、近年の劇場版には『推理が減った』という声も多い。初期の本格推理に魅力を感じていたファンにとって、現在の派手なアクション展開には違和感があるかもしれない。李墨氏はこの傾向を『興行収入と評価の乖離(かいり)』だと分析。
続けて、小楊氏は「李墨氏の言葉には深く共感する。我たち古参ファンにとっては、一つの巧妙なトリックで一本の映画が成り立っていたあの時代が本当に懐かしい。しかし、一つの作品が30年存続するための避けられない変化であったことは理解している。もし劇場版がいまだに密室殺人ばかりを描いていたら、とっくに市場から淘汰されていただろう。だからこそ、我々は『和解』を覚えた。商業化された側面を受け入れ、その中で新しい楽しみ方を見いだしている。たとえば人気キャラクターの見せ場を楽しむことだ。
その上で、小寧氏が「初期作品の魅力は事件そのものにあったが、数千件におよぶ事件が描かれるると、行き詰まりを見せ始めた。そのような状況下で、制作側は非常に巧みに、魅力的で巨大なキャラクターたちを構築したのだ。キャラクター同士の関係性や成長、過去の物語を新たなストーリー展開の原動力となり、主人公、少年探偵団、FBI、黒の組織、各警察組織に至るまで、今ではそれぞれのキャラクターが独自の背景とファン層を持っている」と論じ、李墨氏も「『名探偵コナンの人気が長く続いている理由は、単に『面白い作品だから』ではなく、日本のアニメ産業が築いてきた、強力で多角的なビジネスの仕組みに支えられているからだ。映画、アニメ、漫画、グッズ、イベント、聖地巡礼などが連動する大きなビジネス展開によって、ファンは物語だけでなく『ファンであること』そのものを楽しみ、消費している。この仕組みによって、『名探偵コナン』は安定して資金を得られ、長く新しい作品を作り続けられる。結果的に、作品としてもビジネスとしても、強い生命力を持ち続けている」と加えたとした。(翻訳・編集/岩田)