中国では最近になり、山東省済南市内にある四門塔と呼ばれる古建築内に安置された仏像の顔に刻み傷があることが話題になった。発端は、訪れた人がネット投稿したことで、「山東省測絵局(測量局)十五人」の文字が読み取れることから、文化財を破壊する「落書き」行為だったことは明らかだ。
四門塔は高さが15.04メートルの石造建築で、東西南北の4面の壁に入口があり、それぞれの内部に仏像が安置されていることから、この名がついた。建造期については文献がなく、かつては諸説があったが、建物に隋代の大業7年(611年)との建築年を示す刻字が発見されたことから、建築時期についての議論に決着がついた。
仏像については、隋が中国を統治するよりも前の北朝の一つである東魏の武定2年(544年)に建造したとの文字が台座にあることから、建物よりもさらに古いものとみられている。
四門塔および内部の仏像が極めて古いものであることは早くから知られており、1930年代に建築史家の梁思成と林徽因が中国各地の古建築を「救済目的」で調査した際にも、重点対象にされた。四門塔はまた、最近になり人気ゲームの「黒神話:悟空」の舞台に選ばれたことでも、知名度が高まった。
最近になり、四門塔を訪れた人が撮影したところ、仏像の顔の部分に刻み傷があり、「山東省測絵局(測量局)十五人」の文字が読み取れたとしてネット投稿したことで注目を集めた。紅星新聞が現地の管理部門に問い合わせたところ、職員は、仏像頭部に字が刻まれているネット投稿は知っていると答えた。ただし、破壊行為があったのは最近のことでなく、1970年代とみられ、当時は文化財保護の措置が取られていなかったという。
職員はさらに、現在では敷地を囲って内部に入るためには通らねばならない門を設け、監視カメラも設置し、さらに人による監視も行って、文化財は厳重に保護されていると説明した。なお、刻まれた文字にあった「山東省測絵局」は、その後の組織統合によりすでに存在しない。
仏像の修復については、専門家に相談したところ、修復作業をしたことでかえって二次的な被害を引き起こす可能性があるとの意見だったため、修復は見合わせたという。刻まれた線があるのは主に仏像の頬の部分で、文字は大きく刻まれた線は極めて細いので、修理の難度がかなり高いからだ。
四門塔は1961年に発表された第1期の全国重点文物保護単位(文化財保護施設)にも選ばれている。(翻訳・編集/如月隼人)