2025年11月26日、韓国・SBSは、韓国の高齢者が経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最も高い就業率を示している一方、その背景には「働かないと生活できない」という切迫した事情があると報じた。

記事は、韓国国民年金研究院が発表した「国民年金と高齢者の労働供給」に関する報告書を引用し、韓国が25年に高齢化率20.3%の「超高齢社会」に突入した現状を紹介。

韓国の65歳以上の就業率が37.3%(23年)とOECD平均(13.6%)の約3倍に達し、加盟国中1位となったことを伝えた。これは、すでに超高齢社会にある日本(25.3%)よりも高い。

記事は、報告書の「韓国国家データ処の調査によると、韓国の高齢者が『この年齢まで労働を続けたい』と希望する年齢は平均73.4歳。その理由は生活費のため(54.4%)が最多で、生活のために働かざるを得ないというのが圧倒的だった」との分析を引用し、韓国の高齢者の就業率が高い最大の要因として「極端に低い年金水準」を指摘。「25年の国民年金の平均受給額は66万ウォン(約7万円)で、これは同年の最低生活費(1人暮らし世帯)134万ウォン(約14万円)の半分ほどの水準で、年金だけでは基本的な生活さえ維持できない。そのため、多くの高齢者は年金受給後も労働を続けざるを得ず、欧州などのように『年金を受け取れるようになったから引退』という選択肢は現実的ではない」と伝えた。

さらに、「法的な定年年齢と実際の退職年齢の乖離から来る、いわゆる『所得空白期』問題も大きい」と言及し、「韓国の法律上の定年年齢は60歳だが、実際の主な雇用における平均退職年齢は52.9歳(25年基準)。年金受給開始年齢は63歳、65歳と次第に遅くなっていっている。つまり、退職から年金受給まで最低10年以上も無収入期間が続くことになる。年金受給開始年齢が引き上げられるほど、この空白期間は拡大し、高齢者を労働市場に押し戻す強い要因となっている」と伝えた。

このほか、年金に関する各種制度が与える影響にも触れ、「働いて一定額(2025年基準で月308万ウォン(約33万円))以上を稼ぐと年金が最大50%減らされる『所得活動に伴う年金減額制度』について、高齢者の労働意欲を削ぐとすると批判もあったが、年金受給額が少ないため、該当する高齢者も減額を承知で働き続けており、(前述の)報告書でも『全体の労働への影響は限定的』と分析されている。また、年金受給を先送りすると年7.2%ずつ増額される『年金の繰り下げ受給制度』があり、これは高齢者が就労を続ける動機として作用している」とした。

健康状態が良く、働く場がある高齢者の中には「今は働き、後から多くの年金を受け取る」という選択をする人も増えているという。

記事は「韓国の年金は金額が少なく、年金を受給している否かは退職の決定に影響を与えない。結局、韓国の高齢者は年金があっても働き、年金を受け取れるまで待つためにも働かざるを得ない状況にある」と結んだ。

これについて韓国のネットユーザーからは、「これじゃあ死ぬまで働けというのと同じだ」「これが未来かと思うと生きる希望がなくなる」「高齢者が働くのは良いことという人もいるが、働きたいのと働かざるを得ないのは違う」「70歳でどんな仕事をすればいいんだ」などの声が上がった。

また、「働ける人はまだいい方で、働けもしない高齢者は死ぬしかない」「OECD最下位レベルの福祉で、高齢者の就業率だけ1位。これは美談じゃなく悲劇」「親を見ているとつらい。年金で暮らせる制度にしないと超高齢社会は崩壊する」「定年60歳で年金は65歳から?この物価高騰の中でどうやって生きろというんだ」「年金減額制度はもう時代に合わない。見直すべきだ」「政府は社会福祉にもっと予算を使ってほしい」などの声も見られた。(翻訳・編集/樋口)

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