
人間の五感を超えるもの、いわゆる第六感(シックス・センス)と呼ばれる超感覚的知覚(ESP)や予知能力などは、その神秘性ゆえに、人々があこがれる能力の1つだ。映画や物語にも、事前に危機を察知できるヒーローや、物事を透視する能力を持つ主人公がしばしば登場する。
「そんな話は所詮科学で説明できないファンタジーだ」と思う人も多いと思うが、実のところ、人には先天的にこの第六感が備わっていることが、米・マサチューセッツ州医科大の神経生物学者、スティーブンレパート氏によって証明されたのだ。
ちなみにここで言う第六感とは、太陽放射やオーロラなどの要因で絶え間なく変化する地球の地磁気を感知する能力を指している。ある種の動物にこういった第六感があることはすでに立証済みだ。例えば、目的地に向かって迷わず空を飛ぶ渡り鳥や、地震の直前に騒ぎ立てる動物たちは、地磁気の異常や電磁波を体の特殊な受容体で感知すると言われている。
「鳥類は網膜で捉える磁気感覚に頼って移動する」という説は、1970年代後半、すでに物理学者のクラウス・シュルテン氏により報告されていた。
この磁気感覚は、人間の網膜にもある、「クリプトクロム」という特殊なタンパク質の働きを利用して得られるそうだ。光感受タンパク質であるクリプトクロムが何らかの形で磁場に応答し、そのために鳥類は磁場を視覚としてとらえているとも指摘されている。
そこで今回、同研究チームは人間のクリプトクロムを採取してショウジョウバエの網膜に注入。さらに羽に巻いたコイルに電気を流して地球と同じような磁気を発生させた。すると、ハエは人間のタンパク質を持ってしても、通常通りに地磁気を感知。たとえば危険な磁場を避けたり、餌がある磁場に近づくなどのように飛行経路を調整しながら飛ぶことができたそうだ。