【闇の大人たち】第53回:上海発・横丁市場のグラディエーター

【闇の大人たち】第53回:上海発・横丁市場のグラディエーター

上海市、地下鉄「老西門」駅から少し歩いたところに「上海万商花鳥魚虫交易市場」という煤けたマーケットがある。その名の通り草花や生き物全般を扱う市場だが、重要なのはこれらが食うためでなく、愛玩用であるということ。

人混みをかき分け、獣臭い市場に足を踏み入れる。うっすら予想した通り、通路は正体不明の分泌液でうっすら湿っている。ここで転んだら、来世まで後悔すること請け合い。足元には充分ご注意を。

市場内には犬だの猫だのウサギだのウグイスだの天然記念物だの、あらゆる生き物たちが雑然と陳列され、放し飼いになっているものもあり、まさに混沌という言葉がぴったりのありさま。

地理感もないまま通路を彷徨っていたそのとき、突如「ギィギィギィギィ……ギギギギギ」という、これまで耳にしたことのない、不気味な大音響が私の身体を包み込んだ。な、なんだッ?

私はコオロギゾーンのど真ん中にいた。長屋みたいな極小のケースに収まり、叩き売られる超大量のコオロギ。たかが虫けらとバカにするなかれ。ラストエンペラー・溥儀もお飼い遊ばされた由緒正しきペット。カゴに入れ、風情のある鳴き声を楽しむのが本来の飼い方だそうだが、万単位のコオロギが一斉に鳴く様は、風情というより兵器に近い。

中国では遙か数千年の昔から、オスコオロギを闘わせる「闘蟋」という遊びが盛んだ。今もなお、大勢の闘蟋マニアがコオロギ界のマキシマス・デシマス・メレディウス将軍を発見すべくここに通いつめ、尋常じゃない目付きで筋肉質のコオロギに見入っている。何を隠そう、この市場で最も盛り上がっているエリアこそ、いま私が立っているコオロギゾーンなのであった。

私も60過ぎたら再びここを訪れ、最強の戦士を見つけ出そう……。返す刀で日本のシルバー業界に闘蟋ブームを仕掛け、理事長に納まって老後の収入源にしよう……で、来世はコオロギに生まれ変わったりして……。遠い未来に思いを馳せつつ、鼻をかんだ。
(取材・文=クーロン黒沢

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