伝説の音楽フェスティバル「ウッドストック」の50周年記念として行われる予定だった「ウッドストック50」の中止が決定した。「このフェスティバルが、ウッドストックのブランド名に見合うイベントではないと判断した」というのが資金提供者たちの意見だ。


オリジナルのウッドストックに出演したバンドやミュージシャン以外にも、ジェイ・Z、マイリー・サイラス、デッド&カンパニー、ザ・ラカンターズなどが出演するオールスターのラインナップが3月初めに発表されたが、その時点でチケットの発売は保留されていた。そして4月のアースデイに発売予定となっていたが、その直前に許可申請の問題で発売延期が発表された。

しかし、4月29日に同フェスティバルの主要投資会社の一つである電通イージス・ネットワーク(電通の子会社)が、ウッドストックの共同創設者マイケル・ラングが計画していたウッドストック50は中止されると発表した。

電通イージス・ネットワークの声明は「企業にとって象徴的なブランドと手を組んで意義のあるムーヴメントに参加することは夢といえる。当社には、共通の興味や問題意識を持つ人々を集結させて、彼らに素晴らしい体験を提供してきたという輝かしい歴史がある。これこそが、ウッドストック50周年記念フェスティバルに関わることを決めた理由だった」で始まる。


同社の声明は続く。「しかし、これまで同フェスティバルに深く関与し、膨大な時間と労力を投じてきたが、我々はこのフェスティバルがウッドストックのブランド名に見合うイベントではなく、出演アーティストたち、パートナーたち、観客の健康と安全を確保できないと判断した。その結果として、慎重に熟考を重ねたのち、ウッドストック50のパートナーである電通イージス・ネットワークのアンプリファイ・ライヴは、このフェスティバルをキャンセルするに至った。非常に難しい決断であったが、全関係者が慎重を期して至った決断だと確信している」と。

イマジン・ドラゴンズ、ケイシー・マスグレイヴス、ラン・ザ・ジュエルズ、チャンス・ザ・ラッパー、ホールジー、ジョン・フォガティ、ロバート・プラントなど数多くのアーティストたちが、8月16~18日にニューヨーク州ワトキンスグレンで演奏するためにブッキングされていた。この日はオリジナルのウッドストックが開催されて50年目となる節目の日で、オリジナルのウッドストックが行われたニューヨーク州ベセルでは50周年を祝う他のフェスティバルが開催される予定だ。


3月に行われたウッドストック50開催の記者会見で、ラングはこのイベントを「あの当時を代表する偉大なアーティストたち、今を代表する偉大なアーティストたち、未来を担う偉大なアーティストたちが集まるものにするつもりだ」と明言した。そして「これらのアーティストの多くが社会変化に関与していて、それぞれが何らかの問題を支援している一方で、気候変動という地球規模の問題やブラック・ライブス・マター問題もサポートしている」とも述べていた。

ウッドストック50の開催が危ぶまれ始めたのは、予定通り4月22日にチケット発売が行わなかったことがきっかけだった。「現在ウッドストック50のチケット発売が保留されている。同フェスティバルはニューヨーク州保健局から開催予定地に大勢の人が集う集会の許可が降りていない」と報じられたのだ。そのとき、主催者側はフェスティバルの中止という憶測を否定した。


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そして「ウッドストックとは、あのときに掲げた指針に対して50年間も注目を集め続けられた現象であり、数々の噂も注目を集める要素の一部なのだ」と言って、ラングは開催中止の噂を否定した。しかし、チケット発売の情報を更新することなく1週間が過ぎ、4月29日に電通イージス・ネットワークがウッドストック50の中止を発表した。ビルボード誌によると、同フェスティバルの中止理由はフェスティバルの収容能力、集会許可問題、会場の準備不足ということだ。

ニューヨーク州ワトキンスグレンは、2018年も大型フェスティバルの開催地に決まっていたが、今回を含めると2年連続でフェスティバルが開催中止になった。2018年に開催予定だったフェスティバルはフィッシュのカーヴボールで、フェスティバル会場の水質問題で中止が決定された。