ローリング・ストーンズの最新ベストアルバム『Honk』の魅力に迫る

ジャガーの健康状態の悪化によって全公演が延期になった今、『Honk』の意義は芯を残したまま時代と共に変化していくバンドの軌跡を描くことだと言っていい。

本作は「スタート・ミー・アップ」や「ブラウン・シュガー」といった問答無用のクラシックも収録しているが、注目すべき点はより近作を対象とした選曲だ。70年代の楽曲はほぼもれなくクラシックロックを流すラジオ局の定番となっているためか、「イッツ・オンリー・ロックンロール」から軽快なギターが印象的な『スティール・ホイールズ』収録曲「ロック・アンド・ア・ハード・プレイス」への流れや、「we maaade sweet love」というフレーズが耳に残る『ア・ビガー・バン』に収録されたファンキーな「レイン・フォール・ダウン」から「ダンシング・ウィズ・ミスターD」へのスムーズなトランジションは驚くほど新鮮だ(「ミスター・D」から1983年発表の煌めくような「アンダーカヴァー・オブ・ザ・ナイト」の流れには、異次元にトリップしたかのような違和感は否定できないが)。『Honk』はストーンズの過去30年間の軌跡を包括する決定盤であり、より「プロフェッショナル」となったバンドの姿を見事に捉えている。

しかしスタジオでのスキルにどれほど磨きがかかろうとも、「世界最高のバンド」たる彼らの真価が発揮されるのはステージ上だ。本作にボーナストラックとして収録されたバイタリティ溢れるライブ音源の数々は、そのことを雄弁に物語っている。洗剤の押し売りを門前払いする「一人ぼっちの世界」では、ミックはチャートのトップを飾るラッパーたち顔負けのフロウを聞かせ、「夜をぶっとばせ」では身震いしながら「君のすべての願いを叶えてみせる」と叫んでみせる。キーフとウッディは「ダンシング・ウィズ・ミスターD」でセクシーなギターを響かせ、弾けるような「シャイン・ア・ライト」では唯一無二のグルーヴを生み出している。またエド・シーランがミックのセクシーさを際立たせている「ビースト・オブ・バーデン」、デイヴ・グロールのシャウトが冴え渡る豪快にアレンジされた「ビッチ」、ブラッド・ペイズリーがミックと一緒にヘロインについて歌うことでクリーンなイメージを覆した「デッド・フラワーズ」等も聴きどころだ。しかし3枚組の本作における最大のハイライトは、やはりゲストに迎えたフローレンス・ウェルチの声がジャガーのヴォーカルと優雅に絡み合う「ワイルド・ホース」だろう。出口もプライバシーも持たない男の思いを歌ったこのマスターピースは、いまだ衰えを知らないストーンズのパワーを体現している。

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