アメリカ時間17日、ノース・カロライナ州グリーンヴィルで行われたトランプ支援集会に現れた赤ちゃんが話題を集めた。

母親に肩車された赤ん坊がトランプ大統領の目に留まった。
赤ん坊は前面には「トランプ」、背中には「Q」と書かれたロンパースを着ていた。

「ごらんなさい、あのかわいい赤ちゃんを。あの赤ちゃんを見てください」と言ってトランプ大統領が赤ん坊を指差すと、会場から歓声が沸いた。「ワォ、なんという赤ちゃんだ。いやはや! これぞ赤ちゃんの鏡です! まるで広告から飛び出してきたみたいに完璧だ! あの幸せそうな顔をみてください! 本当に可愛い、ありがとう、お母さん。本当に素晴らしい」

赤ん坊のロンパースに書かれていた「Q」とは、全米各地に広がる陰謀論ムーブメント「Qアノン」のこと。
ヒラリー・クリントン氏やバラク・オバマ前大統領、ジョン・ポデスタ氏、(そしてなぜか)トム・ハンクスなど、民主党を代表する面々が実は児童売春組織の一味で、トランプ大統領を狙った「ディープステート」なる大規模な陰謀計画を企てている、というものだ。

もともとは「Q」と名乗る投稿者が4chanで、自分はディープステートの陰謀の詳細をよく知る政府高官だ、と主張したのが始まり。Qの存在を信じる人々は、トランプ大統領がいつか売春組織の関係者を全員逮捕し、グアンタナモ収容所送りにしてくれるだろうと信じて疑わず、その日を「嵐」と呼んでいる。

ローリングストーン誌は赤ん坊の両親である下請会社の社員ローマン・ライゼルヴァト氏(24歳)と、専業主婦で熱心な動画ブロガーのキャシディ・ベイルズ氏(21歳)に電話インタビューを行った。2人はローリングストーン誌に対し、Qアノンを意識するようになったのはトランプ氏が大統領に当選したのがきっかけだったと語った。「Qムーブメントから力を与えられた気がします。
だって、多くのメディアが我々の大統領を攻撃している時に、大勢の愛国者がトランプ氏を支持しているんですから。自分たちのために戦う人がいて、社会の闇を暴こうとしているなんて、最高の気分です」と、ライゼルヴァト氏はQについて語った(電話ではベイルズ氏はほとんど発言せず、背後で娘をあやす声が聞こえた)。2人は娘にQのロンパースを着せて集会に連れて行くことにした。日付にもこだわって、7月17日をQデイ、すなわち決行の日とした(Qはアルファベットで17番目の文字だから、とライゼルヴァト氏は説明してくれた)。

またQアノンの信奉者は、トランプ氏が嵐の到来が近いことを支援者にほのめかしていると信じている。こうした行為を、彼らは「パンくずを落とす」と呼ぶ。
そういった理由から、ベイルズ&ライゼルヴァト夫妻の娘にトランプ氏が大絶賛したのをQ信者は最大のパンくずとみなし、トランプ氏がQベイビーに言及したのはQムーブメントを擁護している証だ、いよいよ新時代の到来だ、というツイートを連投。「QBaby」というハッシュタグは3万8000件以上の投稿で使われた。

またQアノンは、ジェフリー・エプスタイン氏の逮捕でも勢いを増した。著名なヘッジファンド経営者である同氏は、今月初めに性的人身売買および共謀罪で起訴され、一番下は14歳の「数十人の」10代の少女をレイプした疑いがもたれている。エプスタイン氏はビル・クリントン元大統領をはじめとする権力者らとの関係があり、このことが極右の陰謀論者の火に油を注ぐ形となった。だがかく言う彼らも、エプスタイン氏とトランプ大統領の関りについてはとことん甘い。


今回の流れには、より暴力的な極右過激派の言動に通じるものがある。たとえば今年初め、22歳の男性がQアノンのYouTube動画を再投稿し、ピザゲート陰謀で取り沙汰されたピザ店を焼き払おうとした。またRedditは、公の場で暴動を起こすと予告する投稿が何か月も続いたため、去年からQアノン関連のサブレディットを禁止した。

念のために言っておくと、ベイルズ氏とライゼルヴァト氏はQベイビーブームに相当熱を入れているようだが、娘を利用してネットの人気者になろうという気は「さらさらない」とベイルズ氏は言う。だが今朝ベイルズ氏は、トランプ大統領とのやりとりを動画で投稿したうえ、例のハッシュタグをTwitterとInstagramで使っていた(ちなみに、ベイルズ氏は最近「アンチエイジング用ヘアケア」ビジネスを立ちあげ、Instagramで宣伝している。もっとも本人はビジネスの詳細については語りたがらず、そちらの宣伝にQベイビーは使っていないと主張した)。


また夫妻は、2人が子供をダシに自らの陰謀を吹聴しているという意見にも反論した。「私たちは必ずしも娘を[原文ママ]プロパガンダ化しているわけじゃありません。むしろ、私たちが大義を支持していること、そしてトランプ大統領が乳児の味方だということを世に広めているんです」とライゼルヴァト氏は言ったが、娘が「保守派運動に光を当ててくれるようになれば」嬉しい、と続けた。