日本語、韓国語、英語を巧みに操るトリリンガルラッパー&シンガー、ちゃんみな。2年ぶり2作目となるフルアルバム『Never Grow Up』は、最新のヒップホップ、R&Bをベースにしたトラックに乗せて、20歳になった彼女の具体的で切実なリリックが乗ったリアルでエッジのある作品となっている。
ボーナストラックにはバンドサウンドが印象的なロック楽曲「SAD SONG」も収録されており、これまで見ることのできなかった彼女の一面も垣間見ることができる。その見た目で誤解することなかれ。熱いハートを持ったちゃんみなの言葉が詰まったロングインタビューとなった。

ーちゃんみなさんの2ndアルバム『Never Grow Up』は、20歳でリリースするアルバムとして以前から決めていたタイトルで、ポジティブな意味で”大人にならない自分”であり続けたいという想いを込めているそうですね。

ちゃんみな:1stアルバムのタイトルを『未成年』に決めたのと同時に思いついたんです。私は将来から逆算してものごとを考えるタイプなので、30歳くらいまでのことは考えているというか。


ー30歳のちゃんみなさんは、どのようなことをやっていたいんでしょう?

ちゃんみな:そこは、あまり言いたくないんですよ(笑)。音楽をやっていることは言えるけど、具体的には言わないようにしていて。最終的なゴールがあるからこそ今に飽きないし、常に何かを頑張っていたいなと考えているんです。

ー昨年発売された配信シングル『PAIN IS BEAUTY』は、ちゃんみなさんの座右の銘でもあるんですよね。今作でも単に明るいものを表現するというより、つらさやマイナスな感情を反転した美しさが歌われている印象を受けました。

ちゃんみな:例えば、私は映画でも悪役に心が惹かれるんです。
なんでこの人は悪になってしまったんだろうと考えるのが好きで。高校が都心だったこともあって、いろいろな人間ドラマを見ることが多くて。人間は底知れない闇があるからこそ飛び上がれると思ったし、本来プラスにする力を持っているからこそ、どんな悲しい経験もプラスにもマイナスにも自分次第でできる。実際、今私がこうやって音楽をできて、こんな歌詞を書けているのも、昔の経験があったからこそだと思うし。あと、映画には心が踏みにじられるような結末があるじゃないですか? そういうシーンが多くの人の心を動かすように、サッドな表現も人々をハッピーにできるものだと思うんです。

ー世の中には悲しみをプラスにできない人もいると思うんですけど、どうしたらプラスに変換できるんでしょう?

ちゃんみな:その方法は、私も知らないんですよ(笑)。
その人自身がプラスにしようと思わないと難しいですよね。何かそういう薬があればいいんですけどね(笑)。

ー救いを求めている人にはどうしてあげたらいいんでしょうね。

ちゃんみな:そういう人って意外と幸せな人が多いんですよね。幸せがゆえに必要とされていることに気づいていない人がほとんどなんじゃないかなって。

ー本作のテーマは愛です。
それはちゃんみなさんが周りの人たちから愛されていたり、必要とされていることに気が付いたからこそなんでしょうか。

ちゃんみな:もちろん。人間にとってコミュニティってすごく大事だと思うんですよ。私もいろいろな人に支えられて、愛されて、嫌われたこともある。そういうものを素直に表現すれば、周りに愛が生まれるし、憎しみが生まれると思っていて。愛というテーマで大きくは言いましたけど、喜怒哀楽の全てが経験に繋がって感情になると思っているんです。
だから、愛ってすごいですよね。

ー若干20歳にして、喜怒哀楽という感情にフォーカスできるのはすごいことですよね。ここまで感情を激しく表現できるのってなんでなんでしょう。

ちゃんみな:たぶん、頭がおかしいからなんだと思います(笑)。自分の感情にフォーカスできるようになったのは音楽のおかげで。例えば歌詞を書くときに、自分の二面性に気づけるんですよ。
今しゃべっている自分と、本当の心の奥にいる自分と若干ズレがあって。表に出てしゃべっている自分にはプライドだったりモラルだったりいろいろなフィルターがかかっている。今、裸であぐらをかいてしゃべるわけにはいかないじゃないですか(笑)? でも音楽をやっているときだけ、本当に素っ裸な自分と対話ができる気持ちになれて。逆に言えば、音楽をやるまで、自分という人間が何なのかということも、喜怒哀楽もよく分かっていなかったと思いますね。

ちゃんみな、20歳のアルバムを語る「私たちの世代が時代を作っていく」


ーその二面性に気づいた具体的な例ってありますか?

ちゃんみな:例えば、好きだった彼について言えば、プライドやモラルを守っている表の自分は好きじゃないと思っていたけど、曲を書いているときに彼のことを好きだったんだと気づくこともある。逆に、彼の顔が好きだったんだとか、別にそんなに好きなところはないのに好きって思い込んでいたんだなとか。曲を書いていると分かるんですよ。感情にはいろいろな色があるんだなって気がついて。そこから、本当の自分と対話をしたいと思うようになった。結構大きかった二面性のズレも最近はなくなってきました。

ーちゃんみなさんの表と裏が一致してきたということ?

ちゃんみな:一致してきたというか、すぐ自分と話せるようになった感じですね。前までは時間がかかっていたんですよ。1stアルバム、2ndアルバムのときは、わりと表の自分が書いていたんですけど、曲を書くにつれて歳を重ねて自分をもっと知れたので、今では曲を書いているときに下世話な言葉が出てきたりして。自分で書いていて、「うわ! 性格悪っ!」ってなるときもあります。例えば「Call」の〈付き合っちゃいなよ〉、〈浮気されろ〉とかって歌詞は表の自分だと出てこなかった言葉だと思うし。より深い自分が出て来ているのかなと思っています。

ー歌詞はどのようなシチュエーションで書かれるんですか?

ちゃんみな:本当にバラバラなんですけど、「Call」は嫌な出来事があった日の帰りに、このまま家に帰ったら落ち込んじゃう気がして、家の近くのバス停でぼーっと座って歌詞を書きました。「Never Grow Up」は、『未成年』収録の「LADY」と「OVER」と、「COHOCOLATE」で書いたのと同じ人に向けて書いたんですよ。その彼とは、くっついたり別れたりしていた関係だったので、今回のアルバムで彼に曲を書くのは最後にしたいと思って。もう二度とくっついたり、別れたりしたくないという気持ちで書きました。彼と過ごした場所を夜に歩きながら涙を流しながらこういうことあったなとか思い出したりして。周りから見たら変な人ですよね(笑)。

ーちゃんみなさんはトラックもご自身で制作することができますけど、今作では楽曲制作を任せていますよね。

ちゃんみな:1stアルバム前までは自分で作っていたんですけど、Ryosuke ”Dr.R” Sakai,さんとJIGGさんに出会って、これは敵わないなと思って。凄腕プロデューサーというのももちろんあるんですけど、何より心がすごく通じ合うんですよ。「最近こういうことがあってさ」とか話すと、私が作るよりも正確な感情を吸い上げてトラックを作ってくれて。逆に向こうからも「最近こういうのあったでしょ? こういうのやろうよ」って言ってくれたり。みんなでちゃんみなを作っている感じがしますね。

ーちゃんみなさんの持っているイメージや気持ちを共有した上で、トラックを制作しているわけですね。

ちゃんみな:私も音にこだわるオタクなんですけど、2人は私の1000倍くらいオタクなんですよ(笑)。だから間違いないですよね。最先端な機材も持っているし、私よりも最先端な音に敏感なんです。「今このキックは3ヶ月遅い」とか。そこまで熱意を持ってやってくれるので、逆に自分では作れないですね。

ーちゃんみなのトラックにおいて、最先端ということは重要ですか?

ちゃんみな:今を生きたいという想いが根本的にあるんですよ。だから、そこはこだわっていて。ただ今でもたまにトラックは作っているので、いつかは自分が作ったトラックをブラッシュアップしてもらって曲を作りたいなとも思っています。

ー初回限定盤のボーナストラックには、最先端とは少し離れたロック楽曲「SAD SONG」が収録されています。ちゃんみなさんにとって、かなり色の違う楽曲ですけど、どうしてこの曲を収録しようと考えたんでしょう。

ちゃんみな:単純に、ロックをずっとやってみたかったんですよ。バウンドサウンドをやりたくて。これまでは、ちゃんみなとしてまだ早いと思ってたんですけど、今だったらできるんじゃないかと思って。『Never Grow Up』というアルバムを通して、私の大事な人たちに向けてというテーマで書きました。私の今1番大事なスタッフだったり、ダンサーのみんな、バンドメンバーだったり、ちゃんみなを支えてくれている人たちへの感謝の歌を、今なら書けるんじゃないかなと思って作りました。

ーもともとアヴリル・ラヴィーンが好きと公言もされていますもんね。

ちゃんみな:小さい頃から彼女のファンで、ずっと憧れがある。私の本当のルーツなんですよ。楽曲を聴いていると、彼女は年齢を重ねても、良い意味で気持ちが本当に変わっていないんです。彼女も「ロックじゃない」とかいろいろ言われてきたと思うんですけど、それでもあのスタイルを曲げずにずっとやっていて。例えば、セレブのパーティーとかでも、彼女だけ他のセレブと写真を撮らないんですよ。その分、自分の仲間を大事にしている感じがすごく魅力的だなと思っていて。

ーちゃんみなさんは日本語と韓国語と英語を話せるトリリンガルです。日本語、韓国語、英語で曲を聴くのだと、やはり感覚は違いますか?

ちゃんみな:違いますね。エモさで言ったら韓国語が1番エモいかもしれない。韓国の曲は喜怒哀楽が入り混じっているものがすごく多いんですよ。1つの悲しい歌でも、怒ったり、悲しかったり、諦めたり、いろいろな感情が混ざって感情的に聴こえる。それこそ私の歌詞の書き方はK-POPにすごく影響されていると思います。

ー「Im a Pop」では、1曲の中に日本語、英語、韓国語が混在しています。そのアイデアはどういう意図から生まれたんでしょう?

ちゃんみな:「Im a Pop」は多様性がテーマで。最初は〈私が韓国語喋れるってそんなに悪いこと?〉って日本語で歌詞を入れようと思ったんですけど、韓国語で言った方がいいなと思って。リリース予定はなかったし、別の曲のレコーディングを進めようとしていたんですけど、「Im a Pop」を録ってそのまま完成したんです。

ーダイバーシティが注目される世の中ですけど、「多様性は良いことだ」ということをゴールにしちゃうと目的が変わっちゃうというか。世の中は多様性に溢れているということを理解することがまずは大切なのかなと思います。

ちゃんみな:私の楽曲は何かを訴えてはいるけど、どうしたいんだよねとかは言っていなくて。これってこうだよねって言い捨てているというか。最終的に「ニキニキ」とかという、どこの国の言葉でもない言葉を入れたりしていて。感情のままにというのは今の時代、必要不可欠なのかなと思います。

ーありのままであることが結構難しい世の中でもありますからね。

ちゃんみな:世界的にそれはテーマになっていますよね。ちょっと前にまたアメリカでヒップホップが流行ったじゃないですか。それってたぶん、リアルなラッパーが増えたからなのかなと思っていて。ヒップホップって他のジャンルと比べて、リアルなところが多いじゃないですか? はっきり言ったりするし、汚い言葉もあるんですけど、そういうものを今世界は求めているのかなという感じがしますね。日本でも、あいみょんちゃんが今の世の中に受け入れられているのって、リアルなイメージを、みんな求めているんじゃないかなと思いますね。

ー先日、Twitterで「同世代の本気はやっぱり怖いくらい刺激されるものがある」と書かれていましたよね? 具体的に何か出来事があったんでしょうか?

ちゃんみな:あの日は、亀田興毅さんと那須川天心くんの試合だったんですよ。天心くんは私と同い年なんですけど、この業界ではあまり同い年と知り合わないんですよ。こんなこと言ったらあれですけど、知り合ったとしても、中途半端に物事を考えていて、なんとかなるよという感じで考えている人たちが結構いる印象で、同い年に若干失望していたんですね。私、こういう見た目だから誤解されやすいんですけど、めちゃめちゃ熱い人間で。冷めている人とか、諦めている人とかを見ると、がっかりしちゃうんですよ。若干失望しているときに、天心くんが亀田さんと試合するってなって。Twitterでは、亀田さんが勝つだろうって言われていたんですけど、気になってAbema TVで観ていたら、一切目をそらさずに立ち向かっていて、本当にかっこよかったんですよ。周りからの声を何も気にせず、俺は俺だけの試合をするって。いろいろなものを背負ってプレッシャーもあったと思うのに、真っ直ぐな目で何も怖くねえという顔をしている同い年の姿に感動しちゃって。しかも試合にも勝って。私も頑張らないとなって刺激を受けました。ジャンルは違えど、同い年がこんなに活躍する年にもなったんだなと思いますし。

ーちゃんみなさんも、それくらい真っ直ぐな気持ちで音楽に取り組んでいるわけですね。その原動力は何なんでしょう?

ちゃんみな:私はできないことなんてないと思うんですよ。私たちの世代が時代を作っていくし、今おかしいと思っていることだって変えられる力があると思っている。若い世代がどれだけパワーがあるのかに気づいてほしいとずっと思っているんです。

ー正直、こうやってお話するまで、こんなに熱い方だとは思っていませんでした。

ちゃんみな:ちゃらんぽらんだと思われているんですよね。ちゃんみなって名前だし、こんな見た目だし(笑)。

ーちゃんみなさんの熱い思いが、若い同世代の人や、さらに年下の人たちに伝わって、自分たちの可能性に気がついて行動をするきっかけになるといいですね。

ちゃんみな:そこはライブでもすごく伝えるようにしています。みんなにはすごい力があるんだから今から動けば大丈夫だよとか、今からでも遅くないよって。その流れで、ライブの関係者席に座っている人たちに向けて「じじいもだからな!」って言ったんですよ(笑)。みんな、Twitterとかに愚痴を書くじゃないですか。今の日本はこうこうこうだって。それを書くだけじゃなくて、行動に移せば日本は変わると思うし、それで世界が動くかもしれない力があることに気づいてほしい。前回のライブで、「次のワンマンライブまでに、みんな夢に一歩でも近づけるように私と約束してください」って言ったんですよ。そのライブから4ヶ月くらい経って、私のDMに「ちゃんみなと約束をしたから諦めていた夢をもう1回続けようと思って、オーディションをもう1回受けてみたら受かりました」とか、そういう報告がたくさん来て。そういう報告を受けると、すごく嬉しいですね。そうやって、ちょっとでもいろんな人に響いてくれたらいいなと思います。

<ライブ情報>

ちゃんみな「PRINCESS PROJECT 4」
2019年11月14日(木)大阪府 NHK大阪ホール
2019年11月22日(金)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

<リリース情報>

ちゃんみな
2nd Album『Never Grow Up』

発売日:2019年8月7日(水)
定価:初回限定盤4200円(税抜)
   通常盤3000円(税抜)

ちゃんみな、20歳のアルバムを語る「私たちの世代が時代を作っていく」


・初回限定盤(CD+DVD)
=CD収録曲=
1. Call
2. Im a Pop
3. PAIN IS BEAUTY
4. Never Grow Up
5. Yesterday
6. 君が勝った
7. My Own Lane
8. GIRLS
9. Can U Love Me
10. Like This
11. Doctor
12. CAFE
13. アーカイブに保存した曲
14. SAD SONG ※Bonus track

=DVD収録曲=
「THE PRINCESS PROJECT 3 @ Zepp Tokyo 2019.03.29」
1. Im a Pop
2. MY NAME
3. CHOCOLATE
4. Doctor
5. Never
6. WHO ARE YOU
7. Sober
8. OVER

ちゃんみな、20歳のアルバムを語る「私たちの世代が時代を作っていく」


・通常盤(CDのみ)
=CD収録曲=
1. Call
2. Im a Pop
3. PAIN IS BEAUTY
4. Never Grow Up
5. Yesterday
6. 君が勝った
7. My Own Lane
8. GIRLS
9. Can U Love Me
10. Like This
11. Doctor
12. CAFE
13. アーカイブに保存した曲

ちゃんみな オフィシャルサイト:http://chanmina.com/