20周年を迎える「SUMMER SONIC 2019」で、現在来日中のベテラン オルタナティブロックバンドのウィーザー。先日の豊洲PITの単独公演での盛り上がりも記憶に新しい。
昨年の11月、ローリングストーン誌にリヴァース・クオモが、新作『Black Album』への意欲とともに「Buddy Holly」や「Africa」、さらにはそれ以降の楽曲について彼らの「ライブ哲学」について語ったインタビューを掲載する。

※本記事は、2018年11月に米ローリングストーン誌に掲載されたものです。

ある日の午後、電話に出たリヴァース・クオモは南カリフォルニアの自宅兼スタジオにいた。「ここが僕の居場所なんだ。毎日、ずっとここにいる」と48歳のウィーザーのフロントマン、リヴァース・クオモは言った。「いつも作曲してる。最近はコンピュータープログラミングもしてるんだ」。

クオモが取り組んでいるのは、ファンのあいだで『Black Album』と呼ばれている、バンドと同名のアルバムの曲作りだ。2019年3月1日のリリースまであと数カ月を控え、バンドはプロデューサーでTV on the Radioのバンドメンバーでもあるデイヴ・シーテックとのセッションに集中していた。「すごくクールだ」とクオモは言う。「デイヴ(・シーテック)と僕たちは歳も近いけど、彼は90年代のまったく別のオルタナティブロックを聴いてきたんだ。彼はどちらかというとベックやビースティ・ボーイズを基準にしている。
ニルヴァーナやスマッシング・パンプキンズを聴いてきた僕とは違う。すごくワクワクするよ」。

コンピュータープログラミングは? これは、クオモが生涯を通じて探求している空想的な知的趣味のなかでももっとも新しいものだ。この3年間、クオモは母校であるハーバード大学を介して「コンピュータサイエンス入門」というオンラインコースを受講している。「やっと修了できそうなんだ。たくさんのことを勉強したよ」とクオモは言う。「人生のほとんどを捧げた感じさ。クリエイティビティを発揮させてくれるような、ありとあらゆるプログラムをつくったし、次のツアーのバスルートも改良した。もちろん、僕が聖杯のごとく探しつづけているプログラムは、セットリスト ジェネレーターだ」。

セットリストジェネレーターが完成するまで、クオモは昔ながらの方法でウィーザーのセットリストをつくり続けるだろう。ここでは、どうやってクオモが2018年8月17日に行われた米ウィスコンシン州ミルウォーキーのイーグルズ・ボールルームでのライブのセットリストを組み立てたかを紹介しよう。

「Buddy Holly」(1994年)

バンドにとってもっともアイコニックなこの曲をライブのラストまで温存するのがこれまでのウィーザーにとってのお約束だったが、最近ではこうした楽曲がオープニングでも効果的である、と気づいたそうだ。
「みんなが知ってるエネルギッシュで楽しいポップソングだ」とクオモは言う。「自分たちが何者で、どこから来て、どれだけウィーザーを愛しているかを思い出させてくれる」。

「Beverly Hills」(2005年)

次は、もうひとつの大ヒット曲でテンションをさらに上げよう。「この数年にわたってオーディエンスの進化を見るのは興味深かったよ」とクオモは考えながら言う。「おおまかな印象としては、いまの子たちのほうがダンスが上手いね。「Beverly Hills」がはじまったとたん、みんなが思い思いの動きをしだすのを見るのが楽しいんだ。それまでにどんなことがあったとしても、それだけで気分が上がる」。

「Pork and Beans」(2008年)

ウィーザーの『Red Album』に収録されている反抗的なアンセムでオープニングは続く。「2008年頃の曲は、オーディエンスをあっと言わせるほどのヴィンテージ感がないんじゃないかって時々悲しいことを思うんだ」とクオモは言う。「でも、『Pork and Beans』は、いまの子たちの心にもほんとうに響く」。

クオモは、ここ最近「Pork and Beans」を楽しむ彼だけの理由があることを言い足した。「最近になって汚い言葉を使いはじめたんだ。
だから、この曲の最後で「I dont give a hoot about what you think(あんたの気持ちなんてどうでもいいんだ)」って歌う代わりに、「I dont give a fuck about what you think(あんたの気持ちなんてクソくらえだ)」って言って中指を突き立てる。ある晩のライブでやってみたら、最高におかしくて。だからいまも続けてる」。

「Perfect Situation」(2005年)

ここで衣装替えだ! ここまでウィーザーは「Buddy Holly」のミュージック・ビデオに登場するような70年代のアメリカの人気テレビ番組「Happy Days」のレプリカ的セットで演奏していた。『Make Believe』のシングル曲「Perfect Situation」の最後のクオモのギターソロ(クオモはこれを「最大のロックスター的瞬間」と呼ぶ)のあと、長年にわたってバンドのサポートメンバーを務めてきたカール・コークがステージの上をダッシュし、フロントマンのカーディガンとネクタイを破り、そこに置かれた洗濯機に投げ込む。「Buddy Holly」の衣装の下に「Undone – The Sweater Song」のミュージック・ビデオの衣装を着てるんだ」とクオモは解説した。「メキシコのベラクルスのサッカーチームのユニフォームさ。オーディエンスがそれに気づくと、大騒ぎになる」。

「El Scorcho」(1996年)

セットチェンジも終わったところで——今回は、壁にKISSのポスターを貼ったガレージのようなセットだ——、バンドは1996年の『Pinkerton』のなかでもファン人気が高い「El Scorcho」を披露する。「何年もこのアルバムの曲をライブで演奏しなかった。だから、いい加減、一部のファンが不安になるんじゃないかって思ったんだ」とクオモは言う。「オーディエンスがのめり込んでくれるのを実感できるのは最高に嬉しい。
このアルバムを掲げてツアーをしていた最初の年、オーディエンスはしーんとしていたから。かなりへこんだよ。いまでは、みんながギターソロでブライアン(・ベル)と合唱してくれる」。

「Happy Together」(タートルズのカバー)

オーディエンスがすっかり虜になったところで、タートルズの明るい人気ポップソングのカバーといった変化球を投げてもいい頃だ。今回は、グリーン・デイの「Longview」の一部もミックスされている。クオモが2曲を合わせて演奏しはじめたのは、先日サンフランシスコで行われたソロアコースティックライブでのことだ。それ以来、定番となっている。「60年代と90年代という大好きな2つの時代のなかでもお気に入りの曲なんだ。まさにいまにぴったりだ」と言う。

「Burndt Jamb」(2002年)

オーディエンスの真ん中に組まれた小さなステージへの移動が完了すると、クオモは「Island in the Sun」とA-haの「Take on Me」のアコースティックバージョンを演奏し、ふたたびメインステージに戻る。そのあいだ、バンドメンバーは『Maladroit』に収録されている「Burndt Jamb」の演奏でその場をつなぐ。「ほかのメンバーがはじめたんだ。
理由はわからないよ」とクオモは語る。

「Feels Like Summer」(2017年)

「演奏していて、いちばん楽しいと思える曲」とクオモは語る。「ものすごいグルーヴがあって、ここからエンジン全開って感じ。爆発ごとに周りの温度が30度高くなる気分だ」。
ウィーザーのリヴァース・クオモが語る、科学的に作るセットリスト

2018年8月17日、米ウィスコンシン州ミルウォーキーのイーグルズ・ボールルームでのライブのセットリストの写真(撮影:サーシャ・レッカ)

「Africa」(2018年)

本編ラストを飾るのは、意外にもTOTOのカバーだ。「『Africa』について言えること?」とクオモは問いかける。「ウィーザーバージョンを除いても、これは莫大なインパクトを与えた曲だ。聴いた人の数を考えると、20世紀でもっともビッグな曲と言ってもいい! ビートルズマイケル・ジャクソンも、みんなTOTOの『Africa』と比べるとかすんでしまう」(Spotifyの数値を急いでチェックしたら、これが本当であることがわかった)。

だからといって、クオモは「Africa」のカバーが10年間におけるウィーザー最大のヒットとなり、2018年の夏にオルタナティブラジオのオンエアチャートで最終的に1位を獲得するなんて思ってもいなかった。「1分くらいはけっこうアクセスが集中すると思ってたけど、24時間も経たないうちにこうしたラジオ局がオンエアしはじめた。シングルとしてどのラジオ局にも提供しなかった。ただ、自然と爆発的にヒットしたんだ。
この曲が成功を収めるあいだも、他人事のようにはたから見ていたよ」。

「この曲が大好きで、演奏できてほんとうに嬉しい。でも、不思議と意見が分かれるみたいだ。理由はよくわからないけど、この曲が大好きだと言ってくれる若い人がいる一方、もっと年齢が上のウィーザーファンからは『オッケー、でもなんか変』って思われてるみたい」。

「Pink Triangle」(1996年)

「『Pink Triangle』はワイルドカードだ」とウィーザーのミルウォーキー公演のアンコールの1曲目についてクオモは言う。「わりと小さな会場でまたライブをするのは楽しかった。みんなが汗と熱気でぎゅうぎゅう詰めのなか、『Pinkerton』でロックする。これ以上最高なものはないだろ?」

「Say It Aint So」(1994年)

「もう1曲プレイするなら『Say It Aint So』がぴったりだ」とクオモは言い足す。「ライブを通じてあまりにたくさんのエモーションを感じてきた。それを一層ヘビーに仕上げてくれる唯一の曲がこれさ」。
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