米国内のティーンエイジャーの自殺率が過去10年で急増していることが米疫病管理予防センターの調査で明らかに。

疫病管理予防センターのとある調査結果が疫学者や精神科医たちを悩ませている。
その報告によると、米国内のティーンエイジャーの自殺率が2007年から2017年の間に約56%も上昇しているのだ。10歳から24歳の若者10万人のうち6.8人だった自殺者が約10.8人にまで跳ね上がってしまった。さらに、専門家達も増加の原因がわからず、有効な防止策を導き出せずにいる。

自殺率が上昇するのはある程度予期されていた。アメリカ精神医学会のデータによると、1999年から2017年にかけて全体で自殺率が33%増加している。しかし、ティーンエイジャーの自殺率は他と比べると増加ペースが圧倒的に速い。
今や事故死に続いて第2位の死因になってしまっている。

気がかりなことに、公衆衛生の専門家たちもなぜ青少年たちの自殺率がこんなに増えているのか見当がついていない。「明確な理由を知っていると言っている人は絶対にわかってなんていません」とワシントン大学の研究員ウルスラ・ホワイトサイド氏はワシントン・ポスト紙に語った。「簡単に答えの出せない、とても複雑な問題です」

この憂慮すべき現象の原因に、ソーシャルメディアの影響や増え続ける勉強量、Netflixの『13の理由』のような番組が自殺を美化しているなど、様々な理由が挙げられている。そしてこれらの説が、どれもある程度信憑性のあるものばかりだからこそ、この問題はさらに複雑なものになってしまっている。例えば、ソーシャルメディアの使い過ぎが鬱や自尊心の低下につながると今年初めに学術誌JAMA Pediatricsで発表された(しかしソーシャルメディアの使い過ぎが自傷や自殺につながるとは明記されていない)。
昨年春に発表された別の研究でも『13の理由』放送後からティーンエイジャーの自殺率が一時的に上昇したという結果が出ているが、驚くことにこれは男子のみに見られた傾向で、女子では観測されなかったという(自殺の描かれ方に対する多数の苦情を受けて、Netflixはティーンエイジャーの視聴者向けに注意書きと、悩んだときの相談先を追加した)。

「自殺」には複合的な要素が絡み合う

もちろん、関係しているからといって必ずしもそれが直接の原因ではないということを常に念頭に置いておかねばならない。精神科医たちも自殺について考えるとき、ひとつの「原因」や要素だけを取り上げないよう注意しなければならないと話す。精神疾患や薬物乱用など、ティーンエイジャーの自殺につながってしまう要素があると把握していても、自殺率の急上昇の理由を「断定できる科学的結論」に至れるほど研究が進めていない、と米国自殺学会の役員で心理学者のエイプリル・フォーマン博士は以前ローリングストーン誌に話していた。どんな外的要因があってもなくても、「社会では様々なことが複雑に絡み合っています。我々はまだ自殺を十分に理解できていないのです」と彼女は言った。


とはいえ、救急処置室や小児科での自殺スクリーニングなどの早期介入や、自殺願望を持っていた人が立ち直ることができたという前向きな話に触れることで、自殺を予防できると様々な研究結果が示している。だからこそ今回の疫病管理予防センターの調査結果に対してパニックを起こしたり過剰な憶測だと構えたりせず、より危険にさらされているティーンエイジャーたちへの啓発であると認識することが重要だ。