アダム・ドライバーの苦悩と陰鬱な激しさゆえ、世界は『スター・ウォーズ』最強の悪役に恋をしたーー。米ローリングストーン誌の最新号の表紙を飾ったアダム・ドライバー、そのカバーストーリー完全翻訳をお届けする。


彼がやってきた。のちにマーティン・スコセッシが「同世代の中で一番とはいかないまでも、最高の部類に属する役者」と評することになる俳優は、銀河系のはみ出し者のようないでたちで、これまで見た中でもっとも巨大だと思われる撮影セットへと歩みを進めた――ヘルメットの隙間から見えていればの話だが。

インディアナ州の小さな町を出て、子どもの頃レンタルビデオで見た映画の監督たちと一緒に仕事をするという特権をようやく手にしたアダム・ドライバーにとって、「目の前のことに持てる力のすべてを注ぐ」という義務は当たり前のことだった。考えられるあらゆる選択肢を試すことを厭わず、役に命を吹き込むためには手段を選ばない。だが2014年半ばのこの日、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の最初の撮影で、ドライバーは少々トーンダウンしなくてはならなかった。

場所はロンドンのパインウッド・スタジオ。
ストームトルーパーの衣装に身を包んだエキストラ軍団や実物大のXウィング・ファイターに周りを囲まれ、試作段階のカイロ・レンのマスクで視界をほとんど遮られたドライバーには、現実的なことにしか集中する他なかった。すなわち、85歳のハリウッドのレジェンドに重傷を負わせないこと。「僕の最初の撮影は、マックス・フォン・シドーを殺すシーンだった」とドライバー。『エクソシスト』の名優に、ライトセーバーを思い切り振り下ろすことになっていた。「僕が持っていたライトセーバーはこんなに長くて、どこに飛んでいくかもわからない。初日だったし、マックスに絶対当てるまいと思ったよ。
もし当たったら、そこでクビになるかもしれない。うまく外すことができたけど――あれは完全に運のおかげだね。僕はとにかく、ライトセーバーを無我夢中で振り回していたから」

こうして、ドライバーにとって正真正銘の映画スターの初日が幕を開けた。それ以降、ハイパードライブのごとく人気はうなぎのぼり。だが当の本人は、トレーニングと徹底した準備にも関わらず、いまもライトセーバーを無我夢中に振り回している気分だと言う。「役者の醍醐味は」と本人。
「自分でも先が読めないというところだね……僕は35歳だけど、いまだに何が何だかわからない」

2019年、これほどブレイクした俳優を他に挙げるのは確かに難しい。春から夏にかけては、ブロードウェイで1980年代の戯曲『Burn This(原題)』のリバイバル公演に出演し、毎晩ケリ・ラッセルとともにステージ上で笑いと涙を提供した。そして、1年の締めくくりに映画が立て続けに3本。ひとつは、公開からじわじわ話題を集めている『ザ・レポート』(ドライバーは、テロ容疑者に対するアメリカ軍の拷問の全容解明を捜査するダニエル・J・ジョーンズ役)、それからノア・バームバック監督の『マリッジ・ストーリー』(ドライバーが演じる舞台演劇監督は、スカーレット・ヨハンソン演じる妻と西海岸と東海岸に分かれて、離婚調停と親権争いを繰り広げる)、そして『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』だ(映画史上もっとも待ち望まれた作品で、ドライバーはカイロ・レンとして3部作に幕を閉じる。そして皇帝は復活し、予告編を見る限りでは、C-3POも死ぬらしい)。

こうした栄光の日々をドライバーはなかなか受け止めきれずにいる。
というよりは、あえて考えようにしているのかもしれない。「時々、誰かが脇に潜んでいるんじゃないかって思うんだ」と本人。「ほら、大きなハエ叩きなんかを持ってさ。いつか現実に叩きのめされるんじゃないかと警戒している」

アダム・ドライバーが語る、世界が恋をした最強の悪役

米ローリングストーン誌の表紙を飾るアダム・ドライバー(Photo by Carlos Serrao for Rolling Stone)

彼は偏執的ともいうべき集中力で役作りに取り組む。つねに困難な道を選ぶのは、一度諦めた海兵隊生活の「危険に満ちた環境」が恋しいせいかもしれない。『ザ・レポート』では、タイトルにもなっている問題の”レポート”の一般公開されている500ページを「むさぼるように読んでいた」と、スコット・Z・バーンズ監督は言う。
「彼は、自分がちゃんと理解できないうちは一言たりともセリフを口にしようとしなかったよ」

ドライバーとは何度も仕事した経験のあるバームバック監督も、ドライバーは自分のセリフに「風格を与える」と言い、まるで「70年代の性格俳優――パチーノやホフマン、デ・ニーロといった往年の名優を彷彿とさせるね。彼にはそういう俳優と相通じるものを感じるよ」

そうした名優の中で、SFものをやった俳優は誰もいない。だがドライバーはハン・ソロとレイア・オーガナの息子役として、溶けたダース・ベイダーのヘルメットに向かって独白しつつ、完全に自分らしさを放っていた。『フォースの覚醒』と『スカイウォーカーの夜明け』のJ・J・エイブラムス監督もドライバーの大ファンで、撮影合間の彼のたたずまいについてこう語る。「時々近寄りがたいところがある……どっぷり物思いにふけっているから、声をかけるのもためらわれるほどだよ。それもひとえに集中しているからなんだ。
『むしゃくしゃしてる』っていうわけじゃない。役と格闘しているんだよ」 伝え聞くところによれば、『スター・ウォーズ』オリジナル三部作の撮影中マーク・ハミルは、レイアとハン、ルークがデス・スターのごみ処理施設から脱出した後のシーンで3人の髪は濡れそぼっているべきだ、と力説したという。その時ハリソン・フォードはにやりと笑ってこう返した。「これはその手の映画じゃないのさ、坊や」

ドライバーにとっては、あらゆる映画が”その手の”映画なのだ。

アダム・ドライバーが語る、世界が恋をした最強の悪役

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』でカイロ・レンを演じるアダム・ドライバー(Photo: Jonathan Olley /Lucasfilm Ltd.)

レイバー・デイ(9月の第1月曜日の祝日)の翌火曜日、ドライバーは自宅のあるブルックリンハイツに戻っていた。その前の週末にテルライド映画祭で、スコセッシ監督から直々に偉大な俳優ランキングの2等賞を頂戴したばかりだった。川岸ちかくで待ち合わせすると、ドライバーは茶色の犬を散歩させながら現れた。「こちらはムース」と、かしこまって紹介した。ムースはロットワイラーの雑種で、闘犬の血も少々入っている。飼い主が熱心な闘犬擁護派なのだ。「闘犬はみんないい犬なんだよ」と彼は言う。「オーナーがくそったれだから、犬も性質が悪くなるんだ」

ドライバーの容姿を描写しようとすると、それだけで丸々ひとつの文学ジャンルができそうだ。良く言えば、『GIRLS/ガールズ』の登場人物も言っていたように、「昔懐かしの犯罪者」。悪く言えば、決して正しくはないが、あどけなさの残る顔つきは「ネズミそっくり」(ドライバー本人談)。『GIRLS/ガールズ』の中で終始上半身裸だった時の印象は、いまも残っている。完璧に磨き上げられた肉体と、それとは対照的な完成されていない顔。変形自在で、いわば顔のスケッチ。彼が役に入って初めて形が定まる。

ドライバーとはここ何年か言葉を交わす機会があった。ごく最近では7月、『Burn This』の楽屋でだった。あの日の彼は、好評を博したブロードウェイ公演の千秋楽を間近に控え、少々高揚していた。今日は、映画祭めぐりとブリュッセルでの映画の撮影の合間ということもあり、彼もムースも大人しかった。ドライバーはベンチに、ムースは注意深く地面に腰を下ろし(彼が毛嫌いする白い犬がいないか、目を光らせているらしい)、イーストリバーとロウワーマンハタンの眺望を眺めていた。ドライバーはサングラスをかけ、ポケットのついた洗いざらしの白いTシャツにDickiesの膝丈の短パン、足元にはローカットのアディダスを身に付けていた。次の役作りのための準備だろう、明らかに7月よりもほっそりしていた。

多忙なスケジュールも影響していた。息子が成長するにつれ、息子と6年連れ添った妻ジョアン・タッカーを置いて仕事に行くのがますます辛くなる。「あまり仕事を入れ過ぎないようにしているんだ」と彼は言う。「今は基準が変わったよ。やりがいのある仕事だけにしている。家をしょっちゅう空けなきゃいけないわけだからね」 ドライバーいわく、「マルチタスクが苦手でね――ひとつのことが目に入ると、それが片付くまでかかり切りになってしまう」 父親になるまではそれで良かった。だが父親になったことで、前よりも「人間らしい」時間をもつことを考えるようになったという。

「僕も『スター・ウォーズ』のファンだから、何があっても台無しにはしたくない」ーーアダム・ドライバー

自分の集中力について「役に立つ場合もある」と本人。「回し車のハムスターのように、エネルギーの無駄遣いでもあるけどね」 テルライドでの表彰と、スコセッシからのお褒めの言葉は「嬉しく」感じてはいるものの、そのことを語る彼の口調には、気落ちした色がにじんでいた。「実はあの時こう思ったんだ、『ああ、そうか、まだまだ上がいるのか』って」

『ザ・レポート』も『マリッジ・ストーリー』も、ドライバーには個人的に共鳴する部分がある。彼が7歳の時に両親が離婚。母親が再婚した相手はバプティスト教会の聖職者だった。本人がはっきり口にしたわけではないが、複雑な思いや父親との葛藤があったことが伺える。一方『ザ・レポート』は、ドライバーの人生と驚くべき縁でつながっている。彼は911の直後に海兵隊に入隊して戦地で戦うことを望んでいたが、それこそまさに映画の中で主人公が捜査を進めることになる、拷問三昧の尋問を承認した戦争だったのだ。

「入隊した時は、政治のことなどまったく考えていなかった」と本人は言う。「同じ年代の人たちと同じように、自分も何かしたいという気持ちに押されていたんだ。頭に思い浮かべる敵に顔はなかった。ただ、自分たちを攻撃する者は誰だろうと仕返ししてやりたい、という気持ちだけ。政府を信頼する世界で生まれ育ってきたから、組織に絶対の信頼を置いていた。ずいぶん後になるまで、俯瞰で物事をみるということはなかったね」

誤った方向へ向けられたエネルギーが限界状態に達したところで、彼は軍隊の道を断念した。サンディエゴのペンドルトン基地での訓練中、彼と友人は朝の体力トレーニングを受けそびれた。上官は2人に、隊を離れて自主練するよう命じた。ドライバーは自分用にマウンテンバイクを購入していて、すぐさま飛び乗って急な崖を猛スピードで下って行った。「それが海兵隊の余暇の過ごし方なんだ」と彼は言う。「海兵隊で一番多いケガは、基地の外で起きるんだよ。海岸で喧嘩に巻き込まれるとか、ティワナで民兵に追いかけられるとか。しょっちゅう酔いつぶれて、そのまま車を運転したもんさ。大量のアドレナリンを伴う仕事だから、他でも同じ興奮を求めてしまうんだ」 あの日、あの崖で、彼も楽しいひと時を過ごした。側溝にはまって胸部にハンドルを強く打ち付けるまでは。その時の衝撃で胸骨を脱臼し、心臓震盪を起こした。ケガの後も軍に残り続けるつもりだったが、結局名誉除隊となった。そのことをずっと後ろめたく感じていたが、最近になって海兵隊の友人から連絡があり、もう気に病むのは辞めろと言われた。「あの一言のおかげで肩の荷を下ろすことができたよ」とドライバーは言う。

海兵隊の後、彼はジュリアードへ進み、最終的にHBOのドラマ『GIRLS/ガールズ』のオーディションにたどり着いた。番組の共同制作者レナ・ダナムは彼の向こう見ずなところに惹かれたと言う。「まさにこう思ったわ、『この人ならきっとやり遂げるだろう』って」と、ダナム本人から聞いたことがある。「彼自身が変わり者で、杓子定規なルールに縛られない人だからでしょうね。他人が敷いたレールの上を歩く人生には興味がない人なのよ」

模範的な成功とはそぐわないが、この時期どこかで、彼はその種の楽しみを覚えた。「クスリをやったことはあるよ」 『Burn This』での底抜けにタガの外れた登場シーンを見て、ドラッグとは無縁だった人間のわりにはお見事ですね、と言ったとき、彼はこう白状した。「20代のときにね。今はやらないよ! もうそんなパワーはないね。あれはエネルギーを使うから」

2月、ドライバーはロンドンからの帰国便に乗っていた。恍惚として、それでいて少しピリピリした様子だったので、キャビンアテンデントが大丈夫かと尋ねた。彼は大丈夫だと答えたが、胸中の想いはしまっておいた。『スター・ウォーズ』三部作の最終撮影が一段落し――おそらく『スカイウォーカーの夜明け』のカイロ・レンの最後のシーンになるだろう――そのまま空港に直行したのだった。「周りはみんな眠っていて、僕は自分がぼんやりしていることにも気づかなかった」と本人。「6年間あの作品と共に過ごしてきたからね。終わりを迎えるのは辛いよ――あの映画のおかげで今の自分がいるし、撮影中にいろんなことを学んだ。その映画が終わりを迎える。それをどう処理していけばいいのさ?」

それに加えて、いつものごとく、充分な数のテイクを撮影したかどうかが気がかりだった。「それがすごく気になっていた。やっと腰を落ち着けたと思ったら、その後6時間ずっと最後の撮影シーンのことを考えている。うまく演じられただろうか? あのセリフで良かっただろうか? あれでよかったか? そんなことで頭の中がいっぱいなんだ」

ドライバーは2015年のインタビューで、『スター・ウォーズ』の世界に加わることは「すぐにイエスとは言えなかった。しばらく悩んだよ」と言っていた。「リメイクするから、オールキャストが勢ぞろいするからといって、絶対に出るべきとは限らない。大規模な超大作映画でも、スペクタクルを重んじるがゆえにキャラクターやストーリーが犠牲になってしまった例はいくつも見てきたからね。どんな映画になるのかも分からなかったし、脚本もなかった。でもJ・Jが開口一番、キャラクターとストーリーのことを話し出してね。それが本当に面白かったんだ。それでもまだ疑問が残る。果たして自分に務まるだろうか? 僕も『スター・ウォーズ』のファンだから、何があっても台無しにはしたくない。多分、台無しにしたくない、という思いがあったからこそ、やるべきだと思えたんだ」

だがその時は、自分がどれほどの名声を手にすることになるか把握していなかった。この点については今も葛藤中で、最近共演したのっぽの役者仲間ビル・マレーの処世術を手本にしようと努力している。「彼は決して、世間の評判に、自分の人生を邪魔させないんだ」と言うドライバーも、常に世間の目にさらされる感覚がお気に召さないようだ。「彼は、セレブリティが1人もいない世界にいるかのようにふるまう術を心得ているんだ」

とはいえ、同じマンションに住む子供たちから「おはよう、カイロ・レン」と声を掛けられるのはまんざらでもないようだ。撮影衣装を着たまま帰宅したこともある。その時の衣装は、今も来客用のベッドルームにしまってあるそうだ。「本当に何もやることがなくなったら、それを着て近所を歩こうかな」と冗談を言った。

ドライバーはカイロ・レンを演じる際、自分の実年齢よりも少し若めに演じている。あの役柄の未完成な部分が、カイロ・レンを魅力ある人物にしているのだ。大人の男への成長途上で葛藤と怒りを抱え、耳元でささやく強大な力に心乱されながら、宿命的なトラウマを受け継ぎ、終わりなき戦争の時代に生まれ育った男。これだけでも、脅威を与えるには十分もっともらしい。だが、ダークサイドに落ちる前のベン・ソロとしての彼の姿には、意外にも同情心をかき立てられるところがある。やるせなさで半ば泣きそうになりながら、全軍にルーク・スカイウォーカーを撃てと命じる姿にも。

「少しばかり弱い一面を持つ悪役がいるっていうのが大事なんだ」とドライバーは言う。「単なるサイコパスよりも現実味がわくし、人間らしくなる」

ドライバーの名演技には、無言のカイロの瞳の奥に苦悩が見て取れるシーンもいくつかある(概してドライバーは、物言わずして語るシーンを好む)。「彼は表情で演技する役者です」と、ルーカスフィルムのキャスリーン・ケネディ社長も言う。彼女こそ、最初にドライバーをカイロ役に推した人物だ。前職でスティーヴン・スピルバーグ監督作品のプロデューサーを務めていたころ、映画『リンカーン』の端役で(電話オペレーター役)彼を起用したのがきっかけだった。「それがカイロ・レンに深みを与え、彼が過去の経験から心理的な傷を負っていることがわかるんです」 ドライバーもカイロ・レンと彼の境遇にずいぶん肩入れしているので、確認の電話をかけたときも、カイロ・レンが「怒りっぽい」という私の評価に対してずいぶん長い時間をかけて異を唱えた。

カイロ・レンにも、人を惹きつける闇の部分がある。ただし、ダース・ベーダーとは少々違う類のものだ。「僕が映画の主人公にしたいのも、まさにそういう人物なんだ」とバームバック監督も言う。「たとえいくらか悪いヤツに見えるとしてもね。あの赤い部屋での彼は、本当にヒーローだったよ」2017年の『最後のジェダイ』で、カイロがほんの一瞬、デイジー・リドリー演じるジェダイの卵レイに加担し、敵を8人一気に打ちのめすシーンのことだ。「キャラクター冥利というよりも」とバームバック監督はこう続けた。「演技や存在感のなせる業だね」

アダム・ドライバーが語る、世界が恋をした最強の悪役

Carlos Serrao for Rolling Stone

スクリーン上でのドライバーとリドリーの息の合った演技は疑いようもない。映画でも、2人が演じる役柄の間に、恋愛感情ともとれるような心のつながりを仄めかしている。ファンはファンでこの話題に大騒ぎし、カイロとレイのいわゆる”レイロ”カップルの誕生を望む熱心なファンもいる。よく耳にする反対意見は、筆者自身もドライバーに投げかけたものだが、カイロは数々の恐ろしい罪に手を染めたという点だ(ジェダイ修業時代の仲間を手に懸け、父親を殺し、母親も爆破しかけ、ストームトルーパーに無実の村人を殺させた上、ハイウェストのパンツに上半身裸でほっつき歩く)。「もちろん僕は彼に同情するし、理解もできる」とドライバーは言う。「でも、僕にはちょっと難しいけど、はた目からみればわかるよね。クラスメイトを殺すような人間が、いい恋人の条件を備えているとは思えない」公平を期すために言えば、レイロ擁護派も恋が実る前に、カイロは何らかの贖罪――ベンデンプション、とでもいおうか――を果たすべきだと認めている。

おそらく、贖罪ではないにしても、カイロ・レンはどこかへ去っていく。これまでそうだったように――ドライバーとエイブラムス監督は早い段階で、キャラクターの行く末、少なくとも『スカイウォーカーの夜明け』で迎える結末について、話し合っていたそうだ。「彼はいわば、甘やかされた金持ちの息子。何者かにならなきゃいけないんだ」とドライバー。「彼は自分が何者かを知るために、我が道を行く。人は誰でも自分自身を知るために、比喩的な意味で父親を殺さなくちゃいけないのかもしれない。この場合は、本当に殺してしまうわけだけどね。自分が自分らしくあるために、ある時点で一線を越えなきゃいけないんだ」 そこで彼はうっすら笑みを浮かべた。「でもやっぱり、自分が何者かは永遠にわからないんだ」。

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け
12月20日(金)日米同時公開