現在21歳、詩人にしてシンガーのアーロン・パークスは10代で音楽活動を始め、卒業試験の合間を縫ってブログ向けのインタビューをこなした。ナイジェリア人の父とフランス系チャド人の母との間に生まれ、ロンドンで育った本名アナイス・オルワトイン・エステル・マリノが、好評を博した2枚のEP「Super Sad Generation」「Sophie」をリリースしたのは2019年のことだった。新型コロナウイルスのパンデミック直前に初のツアーを予定していたが、代わりに我々と同じく、自宅にこもってこの悪夢をやり過ごした。「自分を見つめ直す時間ができた。自分と向き合うようになったわ」と本人は言う。
パークスはこの時期を利用して、デビューアルバム『Collapsed in Sunbeams』を完成させた。
アルバム全編を通して、パークスはゆるぎない誠実さで共感を得てみせた。彼女が語る小さな物語が描きだすのは、誰もが思い当たる苦悩だ。「Hope」ではミリーという主人公が登場し、「喜びを再びよみがえらせようと説得する」姿を、パークスは優しく歌い上げる。憂鬱との葛藤を歌ったアンセムソングには、思いやりと気遣いがこめられている。
「最初に作曲を始めたころは逃避や空想の世界が中心だった。やがて年を重ねると、胸の奥をのぞく手段になった。自分の気持ちを歌にしていただけだったの」と彼女は説明する。「それから周りの人たちの物語を語るようになって、バランスが取れるようになった。
広大なポップカルチャーとの関係性
インターネットの影響もあり、メンタルヘルスについてオープンに語ることはZ世代の特徴でもあるが、しばしば前世代よりも感情面で研ぎ澄まされていると見られがちだ。そんな中でもパークスは感情の扱い方が上手い――決して大げさすぎず、必要に応じて表に出しているという感じだ。人前でパフォーマンスするようになってまだ数年というのに、経験を積んだミュージシャンのような風情を漂わせ、すでに幅広い年代から支持されている。
「年配の人たちは私よりもずっと長生きしてきたから、印象づけるのが余計に難しい気がする」と本人。「だから、私のコンサートに年配のご夫婦が来ているのを見るとものすごく嬉しくなる。OK、特別なことをしなくっちゃ、という風になるの」
パークスの楽曲はしばしば遊び心たっぷりに、青春まっさかりの一コマを切りとる文化的レファランスを盛り込む――すると、この世界のアーカイブが目の前に姿を現し始めるのだ。
そうした広大なポップカルチャーの世界との関係性は、彼女の名義にも表れている。「両義的なネーミングにしたかった」と彼女は説明する。「当時はOdd Futureをたくさん聴いてたかな――アール・スウェットシャツとかフランク・オーシャンとか――それで、私の名前もそれに近い感じにしたかったの」
一昨年の夏のある日、公園でこのネーミングが頭に浮かんだ。
From Rolling Stone US.
アーロ・パークス
『Collapsed in Sunbeams』
発売中
<番組情報>
「生中継!第64回グラミー賞授賞式」
※二カ国語版(同時通訳)
2022年4月4日(月)午前8:00
放送・配信[WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]
※放送終了後~4月12日(火)午後4:00までアーカイブ配信あり
出演者:ジョン・カビラ、ホラン千秋
ゲスト出演:iri、James Smith(Live Nation Japan Vice President)、小熊俊哉(Rolling Stone Japan 編集部)
レッドカーペットレポーター:鈴木美穂(音楽ジャーナリスト)
「レッドカーペット生配信」
2022年4月4日(月)午前6:00配信
[WOWOWオンデマンド]
「第64回グラミー賞授賞式」
※字幕版
4月4日(月)午後10:00放送・配信
[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
※放送終了後~4月12日(火)午後4:00までアーカイブ配信あり
グラミー賞 特設サイト:https://www.wowow.co.jp/music/grammy/