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阿佐ヶ谷の控え室

 現在5月中旬のとある月曜日、PM19:08ーー。というわけで今、阿佐ヶ谷ロフトAの楽屋で、ビール舐めながらこれを書いてる。

ライブハウスの楽屋って、独特の雰囲気があって良いよな。狭い地下の一室。壁には、出演者が記念に残した落書きがいっぱい。蒸し暑くて猥雑で、最近はエアコンの性能がいいから、カビ臭いってことはないんだけど、思わずそう言いたくなるような裏ぶれた雰囲気で。

 客席から、お客さんたちの拍手が聴こえてくる。入りはまあまあかな。

今夜のイベントは、『90年代サブカルチャー最高会議』ということで、ケロッピー前田さんと釣崎清隆さん、姫乃たまさん、ロマン優光さん達と一緒です。

第11回「高次脳機能障害で、"朗らかな明るい人"になっちゃった!? ......これはもう大問題」

全員集合~

 ところでーーさっきお客さんが、「脳卒中を経験してから、人が変わったみたい」とビールおごってくれた。

 「へー、それどういうこと?」と聞くと……いわくーー「前とくらべて、なんていうか、誰にでも親しく話しかけている」と、そんな感じのことを言うわけ。あらそう??ビールありがとう。振り返るに救急車の中で、『これで俺もおしまいか……』と観念してから、気取って生きることとかバカバカしくなっちゃったのかも。と答えたんだけど、もちろんそれは嘘ではないが、そうか……性格が変わっているか。

スルドイ指摘だ。

 じつはNOOOOOO!!~脳梗塞とか脳出血(=いわゆる一つの脳卒中)をやった人が、病前病後でガラッと別人のようになってしまった!という話は、ガーン!!じつは典型的症例として"あるある"なんですよ、再度NOOOOOO~!!

第11回「高次脳機能障害で、"朗らかな明るい人"になっちゃった!? ......これはもう大問題」

白玉あもちゃんとのうがみまいさん

 たとえば、globeのKEIKOさんとか。クモ膜下出血で倒れて、退院してからたまに写真誌に撮られたりすると元気そうだったりして。でも、看病疲れの小室哲哉さんが記者会見で、「KEIKOは人格が変わってしまった」と言っていたのを覚えてますか。それ。小室さん確か、KEIKOさんが小学4年生のドリルを解いている、と言ってたじゃん。

で、一度カラオケに一緒に行ったけど、音楽には興味を失って、子供みたいになってしまった、と。それ。

 子供のようになる(退行)、怒ったり笑ったり感情が安定しない(感情障害)、突然泣き出したり(感情失禁)、なにかを始めると、そのことだけにこだわり続けてしまう(固執生)、二つのことに同時に注意がいかない(注意障害)……などなどなど。ううう……症状はいろいろだけど、病前病後で人格が大きく変化する。かつ、「自分が病気だ」という認識を持てない=病識の欠如。

第11回「高次脳機能障害で、"朗らかな明るい人"になっちゃった!? ......これはもう大問題」

ロマン優光さんとダースレイダーさん。


レイダーさんは、脳卒中仲間~。
ロマンさんも、脳卒中になれ~

 それらもいわゆる高次脳機能障害の現れの一つなんだけど、脳が物理的なダメージ(損傷)を受けてそうなってるわけだから、これはもう、元には戻らないわけ。でも友達も、記者も読者もファンも、本人も、もしかしたら家族もそれを飲み込めてなくて、だから希望を込めて「いつか治る」と思ってしまう。

 だから、さっき「性格が変わった」と唐突に言われて、おお!キワドイとこを突いてくるなーと驚く同時に、スルドイ!ニヤリと感心してしまったのだが、お金払って見に来てるお客さんはスルドイね。

第11回「高次脳機能障害で、"朗らかな明るい人"になっちゃった!? ......これはもう大問題」

ネイキッドにて//12 末井さん川崎さん

 ていうのも、自分もそのことに、今日、気がついたばかりなんですよ。というのは、今日、本当にちょうど今日ここに向かう途中、たまに行くスーパーのレジ係のおばちゃんが犬を連れて、道に立ってたわけ。

それはいい。問題なのは、わたくし反射的に、そのおばちゃんに「ごきげんよう~」と、にこやかに手を振って、で、あまつさえ歩み寄り、犬を抱き上げ、なでたりしてる。空と書いてクウと読むらしいんだけど、「クウーちゃん♪」みたいな。名前呼んじゃったりして。そうじゃなくて!……。その瞬間、「あれ……おれ、いつからこういう人になったんだ?」という猛烈に奇妙な強い自分への違和感。
こんなこと今まで一度もしたことないし、そもそも犬、好きじゃないし。相手は話したこともないスーパーのおばちゃんだよ。なにやってんだおれは!という。もう、びっくりしちゃった。

 でーー、も、もしかするとこれは、高次脳の症状かもしれないぞ、と。そういうことがあった後だったから、だーから、お客さんの指摘に、なおさら驚いたのだった。

第11回「高次脳機能障害で、"朗らかな明るい人"になっちゃった!? ......これはもう大問題」

ゆきゆきて原監督とフェッテーズ

 「自分が高次脳機能障害であるということを客観的に理解して、対処法を考えることができる」(と、担当医がカルテに書いたように)、自分は、自分が高次脳だということをまあ理解しているから、だからいろんな奇妙な自分の姿を日常の中で発見して、のけぞったりしてるのだが、でも、言われて気がつくこともやっぱあるわけ。

 しっかしクーちゃん、わん!驚いた。まあでも自慢するわけではないけれども、普通なかなか言われても気づかないんだよ。性格変わってたか。怒りやすい人になるよりマシか。エロくなる人もいるんだよ。

第11回「高次脳機能障害で、"朗らかな明るい人"になっちゃった!? ......これはもう大問題」

GウイークはMCハピネスと釣り堀

 そういうわけでーー、出番が来たからもう行くけど、これは大問題だ。日本を代表するジャンキーのわたくしが、親しみやすい、道で見かけたスーパーのおばちゃんが連れた犬に話しかける人になってしまった!病院へ伝えないと。忘れないように病院用のアプリに打ち込んでいたら、はっ!気づくとこれは原稿ではないか。しかも、もう出来上がっている。なにやってんだよ。でも、ちょうどよかったかも。呼ばれてるじゃないか、早く行かねば、ん、しかし問題だ、全部大問題だ。どこがかと言うと、なにを書いたか思い出せない。えーん!! ……みたいな。

第11回「高次脳機能障害で、"朗らかな明るい人"になっちゃった!? ......これはもう大問題」

1枚くらい自分も入れとく