第五十回「ボブ・マーリーの「Slave Driver」を聴いて威張りんぼうを引きずりおろしてやろう」

第五十回「ボブ・マーリーの「Slave Driver」を聴いて威張りんぼうを引きずりおろしてやろう」
 この前ラジオを聴いていたら、校則がえらいことになっているらしく、男子の丸坊主は昔からあったけれど、女子は、体操着の下に下着をつけてはいけないとか、生理でもプールを休んではならないとか、わけがわからない。最初は何かしらの理由があったのでしょうが、それが巡り巡って、どんどん歪んだ形になっているそうです。  とにかく決まり事を作ると、変えるのに時間がかかり、同調圧力の強い我が国を表しているようです。  ボブ・マーリーの『Catch A Fire』というアルバムに、「Slave Driver」(スレイブ・ドライバー)という曲があります。「Slave」の意味は奴隷で、「Driver」それを運転する奴、つまり奴隷の監視役という意味で、それが転じて、スレイブ・ドライバーとは、人使いが荒く、こきを使う上司という意味もあるそうです。このように「Slave Driver」という曲は、奴隷監視役を皮肉り、奴らへの怒り、不条理を歌にしています(英語の歌詞は完璧にわからないけど、たぶんそうだと思います)。  我々、奴隷船に乗せられてきた方々に比べたら、その気持ちは、何億分の一かもしれませんが、上の者に対しての怒りは、それなりに持ってきた人も多いことでしょう。先に挙げたように、変な校則を作る学校、親、先生に対して、さらに、大人になれば、仕事場や、体制、政治への怒りがあります。  わたしが思うに、上の立場に就いて、一番タチが悪いのは、根っからの威張りんぼう、という人種です。上司になったらいちばん嫌なタイプです。なんてったって彼らは、自分を大きく見せたくてしょうがない。怒るときなどは、情熱からだとか言うけれど、権力志向な感じが見え見えです。  そのような人は、人の上に立ちたい、羨望の眼差しで見られたい、といったことに情熱を注いでいます。つまり、このような人たちが、典型的なスレイブ・ドライバーになるのではないか。  ですから4月に就職して、2ヶ月が経った新入社員の方々、どうしようもなく威張りんぼうな上司がいたら、「Slave Driver」を聴いて、気持ちを落ち着かせ、いつか反乱の狼煙をあげる準備をしておきましょう。威張りんぼうの威張りに耐える必要なんてありません。でも出勤中イヤホンしてたら、「どんなの聴いてるの?」とか質問され、「ボブ・マーリーです」と答えると、「へぇ、レゲエかぁ、おれもレゲエ好きだ」とか言う上司もいるでしょうから、アワ・ネイティヴ・ドーターズの『Songs Of Our Native Daughters』に入ってる「Slave Driver」を聴きましょう。これ格好いいです。威張りんぼうを卑下し、いつか反乱を起こす気になります。  とにかく、みんなで「Slave Driver」を聴き、士気が高まったら、いつの日か、世の中の威張りんぼうを上から引きずりおろしてやりましょう。 戌井昭人(いぬいあきと) 1971年東京生まれ。作家。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」で脚本担当。2008年『鮒のためいき』で小説家としてデビュー。2009年『まずいスープ』、2011年『ぴんぞろ』、2012年『ひっ』、2013年『すっぽん心中』、2014年『どろにやいと』が芥川賞候補になるがいずれも落選。『すっぽん心中』は川端康成賞になる。2016年には『のろい男 俳優・亀岡拓次』が第38回野間文芸新人賞を受賞。

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