かつて日本での連続殺人鬼ブームの火付け役の本が元FBI捜査官R・レスラーの『FBI異常心理捜査官』だったが、彼の相方J・ダグラスの回顧録を元にしたドラマが本作。殺人鬼の衝動が性的なものであることなどの、今となっては常識のセオリーが生まれる過程を描く。
また、制作総指揮のD・フィンチャーが『ゾディアック』から好む、捜査する者が殺人鬼の暗黒の世界に飲み込まれそうになる様も描かれる。なにより出てくる殺人者たちはみな実在の人物で、主人公の捜査官を導き魅了するE・ケンパーは『羊たちの沈黙』のレクター再来のようで、隣家の犬に命じられた殺人鬼サムの息子やご存じC・マンソンもそっくりである。気になるのは精神的な障害を抱え、家庭崩壊の危機を迎え…と捜査官達が異常性に日常を浸食されていくことである。本来は安らぐはずの家庭のシーンで緊張し、殺人鬼のシーンの方で安心するという逆転現象が起こっている。先がとても気になるドラマの1本である。(多田遠志)