野宮真貴をヴォーカリストに迎えた日本コロムビア時代のピチカート・ファイヴの名曲を、 小西康陽完全監修でニューエディット&ニューミックスを行い、 さらに全曲ニューマスタリングを施したアナログ盤7inch BOXとCDアルバム「THE BAND OF 20TH CENTURY:Nippon Columbia Years 1991-2001」。本日、 今作のCD音源が11月6日より全世界配信されることが発表された。
日本のみならず世界中にファンをもつピチカート・ファイヴだが、 コロムビア音源のオフィシャル配信が行われるのは今回が初めてとなる。世界中のファンが待ちわびた配信楽曲は、 アナログエディットやCDエディットとは異なる箇所もあるとのことで、 こちらも聴き比べてほしい。 また、 11月6日のアルバム配信に先駆け、 本日から「スウィート・ソウル・レヴュー」の先行配信が各ダウンロードサイトおよびストリーミングサイトで開始された。一足早く楽曲を聞けるチャンスなので、 ぜひチェックしよう。 さらに本日、 信藤三雄氏がデザインを手掛けたCDジャケットと、 小西康陽自らによるアナログ収録曲の楽曲解説第1弾がアーティスト・オフィシャルサイトにて公開された。 今まで明かされることのなかったエピソードや今回の制作に関するエピソードなど、 読めば読むほど今作を楽しめる大ボリュームの楽曲解説は、 ピチカート・マニア必読のものとなっている。 楽曲解説はアナログ盤7inch BOXの発売まで数回にわたって連載され、 併せて各曲が収録されているスリーブジャケットもサイトに公開されていく予定。 アナログ盤7inch BOXは11月3日、 CDアルバムは11月6日発売。 先日デザインが公開されたCDの法人・店舗別特典も数量限定となるため、 ぜひ早めにゲットしたい。
『THE BAND OF 20TH CENTURY:Nippon Columbia Years 1991-2001』楽曲解説 第1弾
1. ●万事快調 1992年に発表して以来、 長らくDJでプレイしてきた曲です。 イントロやエンディング、 1番と2番の間のブリッジなどが長いのは当時のクラブ・ミュージックの編曲の影響で、 今回は7インチに収まるサイズに編集しました。 イギリスやヨーロッパでは1990年代、 クラブ・ミュージック的な長尺の曲でも、 かならず7インチ・エディットが出ていましたよね。 あの無理やり感を感じ取っていただけましたら。 ●キャッチー この曲も当時のクラブ・ミュージックの影響下にある編曲で、 本来は12インチ・シングルで聴くべき音楽ですが、 今回は無理矢理7インチのサイズにしてみました。 これもすこし無理がありますね。 でも、 たいへん気に入っていた曲なので、 この機会に聴いていただけましたら。 2. ●スウィート・ソウル・レヴュー なぜ発売当時、 7インチを作らなかったのか、 とずっと後悔していた曲です。 広島のDJ・三村くんはじめ、 多くの方がこの曲をクラブでプレイするとき、 みな米国マタドール盤LPを掛けていて、 ああ、 いつか7インチ化を、 と考えておりました。 今回、 スタジオであらためて聴き直してみたとき、 野宮真貴さんのヴォーカルの素晴らしさに気づいて感動しました。 ヴォーカルを録音した翌日、 高浪慶太郎さんがそのOKテイクを激賞してくれたのですが、 そのときじぶんははじめてのタイアップ・シングルを完成させることで頭がいっぱいで、 その素晴らしさに耳が届いていなかったはずです。 ですから今回、 じぶんの中で「悪くない曲」から「かなり気に入っている曲」にランクアップしました。 これこそ、 シングル盤で聴くべき「チャート1位にはなれなかったけれど、 レコードも持っているけれど、 ラジオで掛かったら嬉しい」タイプの曲。 ●マジック・カーペット・ライド 「スウィート・ソウル・レヴュー」のCDシングルのジャケット撮影の前日、 1993年2月6日の土曜日に子供が生まれて、 記憶違いでなければ、 次の土曜日、 1993年2月13日の夜、 当時住んでいた祐天寺の駅前の角を曲がったところで降りてきたのがこの曲です。 これはライヴでもかならず終わり近くに歌っていた曲で、 1995年の米国・ヨーロッパ公演旅行がスタートする直前にサンフランシスコのヘイト・アシュベリーの楽器屋で入手した、 シャガールふうの絵がボディにペイントされたアコースティック・ギターを弾きながらいつも歌っていたので、 なんとなく身体が憶えている歌。
これも「好きな曲のB面に入っている、 やっぱり好きな曲」というポジションに収まって、 すこし嬉しいです。 3. ●ロックンロール 小山田圭吾さんにプロデュースしていただいた『ボサ・ノヴァ2001』というアルバムの冒頭に収めた曲。 クルマに乗っていたらカーラジオから流れてきそうな、 短くて、 耳ざわりが良くて、 何も残らない曲。 まさにそんな感じのこの曲を7インチ化したのは、 まさに「短くて、 耳ざわりが良くて」DJで使い易いから。 耳ざわりが良くて、 何も残らない、 ということを音楽の、 あるいはこのバンドの重要な要素と考えていた時期がありました。 ●優しい木曜日 いまでもクラブでときどき思い出したようにプレイする、 作者としては捨てがたい小品です。 あるラジオのトーク番組で長らくテーマBGMのように使われていた、 という話を聞いたことがあって、 へえ、 と思ったのですが、 ある晩タクシーに乗ったら、 たしかにこの曲が流れてきて、 すこし嬉しかったことを憶えています。 その後、 そのラジオ番組のホストの方と大きな仕事をしましたが、 その曲のことは何も仰らなかったので、 彼が気に入って選んでくれたわけではなかったようで。 こちらもこの曲の話はしませんでした。 4. ●東京は夜の七時 これこそ7インチで欲しかった曲です。 もっとも野宮真貴さんによる4ビートのライヴ・ヴァージョンや少林兄弟とレコーディングしたヴァージョンはすでに7インチ化されていて、 よく使っていますし、 いままでに最も多くクラブ・プレイしたのは野本かりあさんの歌ったヴァージョンでこれはいまだにレコードバッグの中に入れていますが、 何年か前に渋谷や池袋の名画座で映画を観た帰り道、 盛り場のどこかから聴こえてくるこの曲がひどくフレッシュに響いて、 やはりオリジナル・ヴァージョンには強い説得力がある、 と思いました。 とはいえ、 だいぶバッサリと短くエディットしてしまいましたけれども。
。 こうしないと7インチのサイズに収まらないのです。 ピチカート・ファイヴの楽曲はふつうの歌謡曲、 あるいはポップスのABC構成、 さらに3番まで、 あるいは、 いわゆる「2 ハーフ」2番とサビがもう1回という堅牢な、 動かし難い構成なのに、 編曲はクラブ・ミュージック的で、 つまり短くエディットすることがムズカシイのです。 今回、 編集やリミックスの作業をこの曲の編曲を担当した福富幸宏さんと行ったのですが、 福富さんの記憶力が素晴らしくて驚きました。 じぶんは忘れていることだらけ。 この歌もまた野宮真貴さんのヴォーカルが完璧でちょっと感動しました。 ●陽の当たる大通り 発表したときは「シングル・カットしたけれど、 あまり評判にならなかった曲」という印象しかなかったのですが、 1995年の北米・ヨーロッパ演奏旅行から戻ってきてすぐの日比谷野音でのライヴのときにゲスト出演していただいた新宿二丁目「マットビアンコ」のある方から「コレってアタシたちの歌よね」と言われて以来、 さまざまな場所でいろいろな方々から「この曲がとても好き」「コニシさんの作った曲でいちばん好きかも」などと褒められて、 じぶんでも悪くない曲だな、 と考えるようになりました。 そういうわけで、 この曲も7インチにしたら使う機会も増えて喜んでもらえるかな、 と思いまして。 これもかなりバッサリと短くしていますが。 5. ●悲しい歌 この曲はプロモ盤のアナログLPでとにかくよく掛けていて、 とくに朝方近く、 あるいはオールナイトのパーティーの最後にプレイすることが多く、 酔っぱらいたちがみんなで声を限りにエンディングの「ラララララララらーらららららー」を合唱するというのが楽しくて、 これもいつか7インチにしたい、 と考えておりました。 またこの歌は演奏もミックスも素晴らしくて、 とりわけエレクトリック・ベースのキタダマキさん、 ピアノの島健さんのプレイは何度聴いても感動的です。 じぶんの音楽にはギターは要らないのかも、 と考えていた時期があって、 この曲などはその典型。
今回、 あらためて聴いてみて、 ああ、 これもロックンロールだな、 と納得できました。 ●アイスクリーム・メルティン・メロウ 毎年、 夏になるとかならずクラブでプレイしてしまう曲です。 これも12インチ・シングルのイメージでサイズと編曲を決めたので、 7インチのサイズにエディットするのはきわめてムズカシく、 けっきょく33回転となりました。 DJの方は現場でお間違えなきよう。 この曲も個人的なお気に入りです。 どうもこの楽曲解説、 現場DJとしての視点と、 曲の作者としての気持ち、 そしてかつてのバンドのメンバーだった、 という思い出モードが入り乱れてしまいますが、 とはいえ、 これが正直な気持ちですので。
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