アルバム・ジャケットを眺めていたら興奮してしまって、ひとり相撲、自慰、センズリ、オナニーなどをしたことはありますか? みなさまどうでしょう?  世間にはさまざまなセクシー・ジャケットがあります。別にセクシーだからといって、わざわざ自慰をしなくても良いのですが、興奮してしまうものがあるのはたしかです。
 さらに、セクシーな上に音楽も良いと最高です。アルバムを聴きながら自慰……。なんだか下世話ですみません。そこで今回は、ただのセクシー・ジャケットではなく、音楽も素晴らしい、セクシー・ジャケットのアルバムを紹介してみます。  まずは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『1969 Velvet Underground Live with Lou Reed』です。ジャケットは、めくれたスカートに、ちょいとばかし食い込んだパンティーの肉感的なお尻、これには興奮いたしました。
想像をかきたてられます。もちろん自慰も辞さず、中学生のわたしは、これで自慰をしました。  次は、ジミ・ヘンドリックスの『Electric Ladyland』のイギリス盤のジャケット、裸の女の方がたくさん。このジャケットは、ジミ・ヘンドリックス本人は嫌がっていたそうです。たしかに“Ladyland”だからって、裸の女の人をたくさん集めるなんて安易です。これ普通の盤も、見開きにたくさんの女性がいて、数えてみたら19人いました。
いや、わたしが間抜けで、数え方がいけないのか、18人になったりもする、どういうことだろう? とにかく裸の方がたくさん、いま見ると微妙な感じの方も多いのだけど、中学生の頃は、今のようにネットもないから、裸の女性を見れるというだけで興奮してしまっていました。そして自慰をしました。ジミさん自慰してすみません。もちろんアルバムの内容も最高です。  他に、ブラインド・フェイスの『Blind Faith』とか、レッド・ツェッペリンの『Houses of the Holy』は、収められている音楽は最高で、さらにセクシー・ジャケットなのではありますが、これで興奮してしまうのは、ちょっと問題があるかもしれません。もし興奮してしまった人がいたら、病院に行ったほうが良いかも、今後犯罪者になりかねません。
わたし、これで自慰はしていません。  でもって、わたしの一番のお気に入りのセクシーアルバム・ジャケットは、山口冨士夫さんのアルバム『RIDE ON』(リマスターCD盤)。顔は写ってないけれど、肉感的な体、シミのある女性の肌、透ける乳首、この生々しさが最高に色っぽい。いったいどうしてこのようなジャケットになったのか? 写っているのは誰なのか? 内容も最高にロックンロールで、山口冨士夫さんのギターと歌声が最高。これ、中学時代ではなく、もっと大人になってから、ジャケットを見ながら、いろいろ想像して自慰をしてしまいましたことがあります。すみません。
戌井昭人(いぬいあきと)/1971年東京生まれ。作家。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」で脚本担当。2008年『鮒のためいき』で小説家としてデビュー。2009年『まずいスープ』、2011年『ぴんぞろ』、2012年『ひっ』、2013年『すっぽん心中』、2014年『どろにやいと』が芥川賞候補になるがいずれも落選。『すっぽん心中』は川端康成賞になる。
2016年には『のろい男 俳優・亀岡拓次』が第38回野間文芸新人賞を受賞。