自己紹介

——前作に続き『カルト宗教やめました。』出版おめでとうございます!漫画の内容と重複してしまうかもしれませんが、お答えいただければと思います。まずは、簡単に自己紹介をお願いします!

たも:はいっ。

たもさんです。漫画を描いております。ただ、漫画家と名乗るとなんだかイキってるようで、あんまり言わないんです…。

——そうなんですね(笑)。細かい出来事の描写が多く、たもさんの境遇が理解しやすかったです!

たも:ありがとうございます…!

エホバの証人への入信、母と子の関係

——早速ですが、エホバの証人について、どういう宗教か説明していただいもよろしいでしょうか?

たも:はい。エホバの証人は、19世紀にアメリカで生まれた新興宗教です。聖典は、彼らが独自で翻訳した「新世界訳聖書」で、キリスト教原理主義に近いものでした。

信者たちは、自分たちこそが正当なキリスト教の流れをくむ最古の宗教だと信じていますね。

——そのエホバの証人に、たもさんが入信した経緯というのは…?

たも:私の母が先に入信していて、私は母に誘われて入信しました。小学校5年生の頃です。

——ちょうど物心がつく頃ですよね。やはり、お母さんだから信用したのですか?

たも:父に怒鳴られていた母が可哀想だったので、味方をしてあげたいと思ったんです。それに、宗教の研究を紹介してくれた女性がとても美人で穏やかで、まんまとほだされてしまったんですよね。

——もしかして、紅茶を出してくれた人ですか?

たも:そうです、ちなみにあれはハーブティーです(笑)。ハーブティーを見ると、今でも思い出してしまうのであんまり飲みませんね…。

——そういえばハーブティーでした(笑)。

たも:はい(笑)。あ、あと、当時は、霊界やらノストラダムスの予言やらで、オカルトブ—ムがあって、うさんくさいのがテレビでよくやってましたよね。1999年に世界が滅びるとかそういう…。

それで、興味があったのもあります。

——入信に違和感はありましたか?

たも:違和感は…確かに「宗教…?」という感じはありました。ただ、彼らはカルト宗教であることをうまく隠していて、「世界のベストセラ—である聖書を学ぶと、良いことがいっぱいあるよ」といったスタンスだったので、純粋な私はすっかりだまされました(笑)。

——なるほど…。お母さんが入信した理由は、なんだったのでしょうか?

たも:母は、今で言うワンオペ育児をしていて、孤独に悩んでいるところを優しく声をかけられ、柔和なエホバの信者に魅せられて入信したみたいです。

——他の兄弟に入信の誘いは?

たも:他の兄弟も一通り誘われたようです。

ただ、私よりも年上の兄弟はみんな大きくなっていましたし、反抗したり途中で飽きたりして続きませんでした。

——たもさんとお母さんのことを、他の兄弟はどういう風に見ていましたか?

たも:多分、「キモイ」と…(笑)。家族としては普通に接してくれていましたが、宗教になるとノ—タッチでしたね。こちらも嫌がるだろうからなにも誘いませんし、向こうもなにも言ってこなかったです。

——暗黙の了解といった感じですかね。

たも:そんな感じです。

ただ、いつも母からは、「楽しそうにしなさい。」と言われていました。「宗教をやってるとこんなに幸福なんだよ!」とアピ—ルしろと…。

——互いに介入しなかったことは、いま振り返ると、どう思いますか?

たも:反対すればするほど、宗教をやってる人は頑なになるので、介入せず優しく接してくれたのは良かったのかもしれません。

——漫画では「矛盾がある!」と父親から問い詰められるシ—ンがありましたよね。その時に、漫画の中のたもさんは、耳を塞いでいました。ちょうど、エホバに否定的な言説が全く耳に入らない時期だったと思うのですが、その頃の自分に今だったらどんな声をかけますか?

たも:そうですね…。

信じている最中の人って、なかなか反対意見が耳に入らないんですよね。それがどれだけ的を射ていても、「騙されるな、サタンは巧妙だ!」と心の中で抵抗をするんです。なので、当時の私にはなにを言っても無駄かなと思います。

——なにを言っても無駄ですか…。重い言葉ですね。

たも:「自分でちゃんと考えてね」と言ったところで「考えてるよ」と返されると思います。ただ、私の場合はエホバの証人に憧れの存在がいたのが大きいですね。私の兄弟は、みんな気性が荒く喧嘩ばかりしていたので、ああいう優しい雰囲気をまとった女性になりたい気持ちがあったのかな、と…。

エホバの証人が抑圧した娯楽との向き合い方

——少し脱線するかもしれないのですが、学校で運動会に参加できない生徒がいて理由を聞くと、「宗教的に争えない」と言っていたんですよね。エホバの証人だったんじゃないかなぁと思っていたのですが。

たも:運動会の件は、多分エホバだと思います。

——たもさんも参加しなかったのですか?

たも:騎馬戦や、応援合戦は参加しなかったです。騎馬戦は戦いなので禁止されていて、応援合戦は”フレ—フレ—“や、”三三七拍子”がダメだったみたいですね。戦争や宗教ぽいのは全部ダメでした。でも、私は小5からの入信でしたし、他の反抗期の子供も校歌や国家を歌いたがりませんから、紛れて良かった方です。

——制作のお話を聞かせて下さい。絵のタッチの面で、影響を受けた漫画はありますか?好きな漫画を教えてください!

たも:絵のタッチは特に…下手なのでおこがましいというか…。少女漫画のりぼんに「岡田あ—みん」という漫画家さんがいて、その方の漫画が大好きでした。あと、西原理恵子さんも好きです。

——幼い頃から、絵を書いていたのですか?

たも:大した絵ではありませんが、ノ—トやプリントの裏によく落書きをしてました。友達を主人公にして漫画にしたり、日常を漫画に落とし込むのが好きでした。

——その中に、漫画に描かれていたエホバの頃のエピソ—ドもあったんですか?

たも:いや、不敬というか…。エホバのことは、「漫画にしちゃいけない」と心のどこかで思ってました。一度、キリストを主人公にした漫画を描いたら信者にめちゃくちゃ怒られたことがあったんです。

——漫画を読むことは、大丈夫だったのですか?

たも:母はいい顔しませんでしたが、こっそりと。兄弟が普通に買っていた漫画を見せてもらえたので、りぼんやジャンプを読んで育ちました。テレビで『北斗の拳』や『聖闘士星矢』を観ていた時は、チャンネルを手で押さえておくんです。それで、母が通りかかるとチャンネルを変えて『日本昔ばなし』にしてました(笑)。テレビを消すと、当時はブラウン管なので熱や静電気でつけてたのがバレるんですよね。

——私も『ギルガメッシュナイト』を観ている時に同じようなことをしてました(笑)。『日本昔ばなし』のような、日本の神話や神様には寛容だったのでしょうか?

たも:本当は神道や仏教てきなエピソ—ドもふさわしくないんですが、暴力的なものよりはマシということで、我が家ではOKでした。『世界名作劇場』もOKです。

——なるほど!そういう意味では『北斗の拳』とかは、最悪ですね。

たも:ですね(笑)。血が出るとダメでした。『北斗の拳』なんかは、血が四方八方に飛び散りますからね。

信仰を続ける両親との関係は…?

——宗教をやめたきっかけは、息子さんのちはるくんへの輸血を決断した時かと思います。ちはるくん自身は、当時のことをどのくらい覚えているのでしょうか。

たも:エホバを辞める大きなきっかけになったのが息子の病気です。本人も、たまに思い出すみたいです。先日、今度のロフトのイベントに使う昔の写真を探していたんですが、宗教施設の写真を見て、「この場所覚えてる!」と言ってました。

——ちはるくんの持つエホバへの印象は?

たも:教理的なことは教えていなかったので、エホバというワ—ド以外は覚えていないようなんですが、集会はずっと座っていて退屈だったみたいです。

——漫画の中でも、ちはるくんが集会を嫌がるシ—ンが印象に残ってます。

たも:Noがはっきり言える子でよかったです。

——YouTubeなどをきっかけに、エホバへのネガティブな情報が入ってきた当時は、どのような心境だったのでしょうか。

たも:そうですね…。それまでにも信者同士のいさかいや干渉などに、「ん?」と思うことは何度かあったのですが、「そんなはずはない、この宗教以外のどこに救いがあるっていうんだ」と、押さえ込んでいました。ただ、大きな矛盾に気付いてからは、「やっぱりそうか!なんでもっと早く気づかなかったんだ!私はなにをしてたんだ!」という後悔やら自責やら、いろいろですね…。

——そこから、お父さんへの感情に変化はありましたか?

たも:その時になって初めて、父が理性的に改心させようとしてくれていたことを理解しました。なので、一気に敵から味方に変貌です。ただ父は、私がエホバからいなくなった後の母のことを心配していましたね。

——優しいお父さんですね。

たも:そうですね。「どこの組織にも落ち度はあるから、とりあえず母さんのためにも集会は行ってくれんか」みたいなことを言われました。「だが断る」ですが(笑)。

——一蹴(笑)。

たも:今は、父が母に付き合って集会に行ってあげてるみたいです。母が辞める選択肢はないようなので。

——私は全く活動をしていない創価学会2世なのですが、両親には今更変に揺らいでしまうより、宗教を全うしてほしいと思っています。たもさんはどうでしょうか。

たも:う—ん…。もう60後半になった母親に、友達がひとりも居なくなるのは気の毒ですし、いきなり心の支えを失った穴埋めをしてあげるだけのキャパが自分には無いんですよね…。

——同じくです。

たも:夢を見ていたほうが幸せに人生を終えられるんじゃないかと思います。

エホバを辞めて、依存をしないで生きる

——エホバをやめてから、不安が沢山あったことを漫画でも知りました。やはり、支えになったのは家族の存在ですか?

たも:「カルやめ」の話ですね。家族がいるのはもちろん支えになりましたし、親や仲間に嫌われても家に帰れば子供が笑っていることは大きな力になりました。でも、依存のしすぎも危険だな、とも思います。母が私に依存していたように、唯一の居場所にしてしまうと相手は重荷になると思うんです。

——なるほど…。

たも:自分で自分を充たしてあげられるようにできたらいいなと思います。なので時々おしゃれなカフェに行くのです(笑)。

——楽園に(笑)。

たも:はい(笑)。

——自分で考えて決断するというのが、カルト宗教2世が抱えるテ—マなような気もしますね。

たも:それは大いにあると思います。エホバに入信していると、自分で考えることがなくなるので自分の考えが分からないんです。

——そこが宗教の怖いところだと思っています。

たも:中には、エホバを辞めたのに、自然派や子宮系などに流れて行った人もいますね…。

——でたー。(大喜び)

たも:私もおまたを温めてみたことが…。痒くなってすぐ辞めました。

——(笑)。以前、とんでもスピリチュアルの潜入をしている山田ノジルさんにイベントを開催して頂いたのですが、かなり闇が深かったです。

たも:そうだったんですか。行きたかった…。

——気持ちが揺らいでる人につけ込む商売は、本当に悪だと思ってます。

たも:ほんとですね。

——今は、新しく漫画を描いていますか?

たも:実は、性教育の関連で、「withnews」さんで連載をさせていただくことになったんです。私自身がすごく変わった環境で、性教育を全く受けてこなくて、どうやって息子を育てようかと…。犯罪の被害者にしない、加害者にさせない。そういうテ—マで描いていこうと思っています。いま、性教育にすごく興味があるんです。

——そうなんですね! 性教育熱いですよね。

たも:私自身が勉強になるので、面白いです。ただ、漫画連載の最初のセリフが「ち◯こ!ま◯こ!」なんですけどね。

——(笑)。楽しみです!では最後に、このインタビュ—をここまで読んでいただいた方々にメッセ——ジをお願いします!

たも:はいっ。ここまで読んでくださりありがとうございます。私のつたない経験談ですが、宗教二世の方も、ご自分で信じた方も、大切な人を宗教に取られた方も、一般の方で興味を持ってくれた方も、みんなが、「あるある、分かる」と笑ってくれたら嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします。

たもさん - エホバの証人2世の告白!『カルト宗教やめました...の画像はこちら >>