売れるためにやりたくないことをやるのは嘘だと思う

──まず、今回の対バンの企画意図を店長から聞かせてください。

柳沢英則(新宿ロフト店長):新宿ロフトにずっと出てもらっているG.D.FLICKERSのJOEさんと、ライブハウスでずっと頑張っているNAkidZが去年の8月に『KEEP the LOFT vol.2』で共演して、そのときにNAkidZのライブを見たJOEさんがすごく褒めてくれて、それ一度きりで終わらせるのはもったいないと思ったんです。今度はG.D.にバンドとして出てもらって、世代に関係なくいいものはいいんだという趣旨のもとでG.D.とNAkidZの2マンを企画しました。

ウエサカ:俺はまだ生のG.D.を見たことがないんですけど、去年の10月に高円寺LOFTXでやった配信ライブを見させてもらって、すごく格好良かったです。これぞロックンロール! って感じで。だから今回の2マンを柳沢さんから提案されて断る選択肢がなかったというか。もともとG.D.やルースターズ、ミッシェル(・ガン・エレファント)といった世代のバンドに憧れて、そういうバンドが受け継いできたロックに魅了されて俺たちもバンドを続けてきましたから。G.D.のやってる音楽はまさしくど真ん中って感じなんです。

──考えてみれば、G.D.みたいなダブルギターのロックンロールバンドってだいぶ減ってきた気がしますね。

JOE:あと、スタンドボーカルがあまりいないんだよ。

ウエサカ:ああ、確かに。

JOE:テレビとかに出てる最近のバンドはギターを弾くボーカルがほとんどでしょ? 昔は俺たちみたいな編成のバンドが外タレも含めていっぱいいたんだけどね。今もずっと好きなストーンズもそうだし、バンドを始める頃に影響を受けたハノイ・ロックスもそうだったし。

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──JOEさんは去年初めてNAkidZを見たときから太鼓判を押していましたよね。純粋に格好いいと。

JOE:長いことバンドをやってると、対バンの面子もジャンルや世代が偏ってくるんだよね。だいたい同じ年代で固まるので、若いバンドと知り合う機会がすごく少ない。あと、俺らに関してはヘンな噂が飛び交っているので敬遠されやすい(笑)。そんなところへ『KEEP the LOFT』でピーシーズの柳沼(宏孝)社長と一緒に司会をやって、まあおじさんたちも出てたけどさ、NAkidZを見て久々にグッときたんだよ。正直、見に来てくださいと言われて若いバンドを見に行ってもグッとくることは稀なんだけど、NAkidZはすごく格好良かった。柳沢が推してるバンドと聞いて、ああなるほどなと思ったね。

ルーツ的なものもちゃんと出てて、やりたいこともはっきりしてて、無観客なのにあれだけ熱量のあるパフォーマンスをやれるんだから素晴らしいよ。柳沼社長の4-STiCKSはああいうロックなことができなかったね(笑)。

ウエサカ:ありがとうございます(笑)。俺らは同世代でバンドをやってる友達が少ないし、無理に仲良くする必要もないと思ってるんですよ。同世代よりも先輩のほうにロックをやる魂を感じるし、そういうアティテュード的な部分を一番貫いているのがG.D.の世代だと思うんです。

JOE:こういうことを言う奴が俺はやっぱりかわいくなっちゃうわけ。

たとえば××××××××は複雑なコードを使って難しいことをやってるから全然かわいくない(笑)。まあそれはそれでいいし、すごい技術だとは思うけど、俺はもっとストレートなロックが好きだし、俺たちがやってきたルーツに根差したロックを継承してくれるNAkidZみたいなバンドは素直にいいなと思えるんだよ。俺たちもいつくたばるかわからないし、自分たちが頑なにやってきた音楽が残っていくのは嬉しいことだよね。

ウエサカ:俺は売れることも大事なことだと思っているのでチャートに載る音楽を最近よく聴くんですけど、売れるためにやりたくないことをやるのは嘘だし、唄いたくないことを唄うのも嘘だと思うんです。G.D.もそうだと思うんですけど、紛れもなくロックンロールに影響を受けたことを曲げる必要はないし、それを俺たちの時代でどこまで貫けるかをいつもすごく考えてます。その信念が売れてる音楽と交わらないわけがないという実感はあるんですけど。

自分に100点をあげられないからバンドを続けている

──NAkidZの他のメンバー、チバシンヤさん(ds)もカミタニジュイチさん(ba)もG.D.に対して抱く思いはウエサカさんと同じなんですか。

ウエサカ:どうなんだろう。普段からあまり話さないし、俺から連絡もしないので。

JOE:同じく俺も。どこに住んでるのか知らないメンバーもいるからね(笑)。でもメンバーとはあまりベタベタしないほうが長く続くよ。ああだこうだメンバーに干渉する奴がいるとすぐに終わっちゃうから。

ウチも初期の頃は練習の後に毎回飲んで、いろんなことをメンバーと話したものだけど、そういうのは売れない劇団と同じ。稽古帰りの劇団員が飲んでクダを巻くのをよく見かけるけど、そんなことで芝居が上手くなるわけがない。それと一緒で、バンドも練習終わりに酒を飲んで「あの曲のあの部分がどうのこうの」なんて楽器を持たずに喋ったって上手くなるわけがない。俺たちもよくそんなことをやってたけど、そういうのを通り越して俺はメンバーのことを信用してるし、集まるときは集中して集まる。だから練習もあまりしない。ドラムやベースの音に歌が乗っかるのは、いつも一緒にいてああだこうだ言ってたら絶対に合わないんだよ。合わせよう! と本能でキャッチするほうがスリリングだし、グルーヴが生まれるものだから。

──あえて予定調和を排するわけですね。

JOE:メンバーは遠い親戚みたいなものだし、信頼しているからこそ馴れ合わないほうがいい。ストーンズだって来日するときはメンバー別々のジェット機で来るでしょ。別々の時間に来て別々のホテルに泊まって、リハも別々にやって本番で合わせる。それでもやれるのはメンバー間の信頼があってこそだし、俺たちはまだその域ではないけど、信頼することの大切さを感じるね。たとえば俺の歌が走るとメンバーが合わせてくれるけど、それは普段から練習しすぎるとできない。その時々で各自の神経が張ってるからこそできるもので、だからステージでちゃんとできればそれでいいじゃんって思うわけ。

ウエサカ:そういう話を聞くと、俺らはちょっとスタジオに入りすぎてる気がします。

JOE:俺たちも若い頃はそうだったよ。メジャーにいたときはツアーがないと月曜から金曜まで4、5時間スタジオに入らされてた。でも行ったってやることがない。曲を作れって言われてもそんな毎日作れるものじゃないし。近所のスタジオなのにハーレー(ダビッドソン)で通ってたから、スタジオに置いてあった掃除グッズでずっとハーレーをピカピカに磨いてたよ(笑)。同じスタジオにいたアンジーやポゴは一生懸命練習してたけどね。

JOE(G.D.FLICKERS)×ウエサカシュンスケ(NAkidZ)- G.D.FLICKERSとNAkidZという世代を超えた2マンライブ『KEEP the LOFT』が4月18日(日)に新宿LOFTで開催決定! ルーツに根差した普遍的なロックンロールを打ち鳴らす両者のフロントマンが忖度なしの本音対談!

──G.D.やNAkidZのように、ロックンロールをルーツにして真正面から体現するバンドが近年少なくなってきていることに関してはどう感じていますか。

ウエサカ:肩身が狭い気はしますよね。

JOE:狭くはないよ。こっちがルーツなんだから。7thまではわかるけど、4とか3のついたコードなんて今さら使いたくないしね(笑)。でもそんなことはどうでもいいし、自分たちのやりたいことがはっきり決まってる以上、覚えなくていいことは放っておけばいいんだよ。これだけ純粋なロックンロールをやるバンドが少なくなってきた以上、NAkidZの存在は逆に目立って有利なんじゃないかな。

ウエサカ:ロックンロールって言ってるわりにギターが鳴ってないじゃん、みたいなことを感じるバンドが多くて。俺たちの周りはみんなロックを聴いて、「このアルバム最高だよね」とか「こういう録り方してていいよね」みたいな話をするけど、チャートに載る“自称ロックンロール”を聴くと俺らと全然違う世界みたいでうすら怖くなります。まるでパラレルワールドみたいに感じますね。

JOE:俺たちのやってることは世間的には格好良くないのかもね。別にそんなこと知ったこっちゃないけど。

──JOEさんがそれでも頑なにロックンロールにこだわり続けるのは、ロックンロールでやれることがまだ何かあるかもしれないからですか。

JOE:まあ、好きになっちゃったものはしょうがないよね。当時はB級ロックンロールと言われてたジョニー・サンダースを好きになったせいでパンクロックにどっぷりハマって、そういう音楽やスタイルが格好いいと信じて早40年くらい経っちゃったんだけど(笑)。結局、今もずっとバンドを続けているのは、自分に100点をあげられないから。やりたいことを100%できてないからやめられなくなった。それはあると思う。

最初はボーカリストではなかったという意外な共通点

──G.D.はベーシストが流動的なのを除けば、JOEさん、原(敬二)さん(gt)、(佐藤)博英さん(gt)、DEBUさん(ds)はずっと不変のメンバーじゃないですか。35年間同じ面子でバンドを続けてこれたのは、楽曲作りやパフォーマンスとはまた違った才能があるからだと思うんですよね。

JOE:ベースは確かにいろいろ変わったけど、35年の半分以上は岡本(雅彦)が弾いてるからね。俺はライブの本番中に他のメンバーのことを気にしないようにしてるんだけど…まあ、DEBUのドラムがあまりに乱れると気になるけど(笑)、基本的に岡本がバンドの指揮官で、斜め後ろから俺を気持ちよく唄わせようとしてくれるんだよ。だからすごく安心できるし、「好きにやりなよ」と背中を押されてる感じがする。そうやって岡本がリズムをキープしてくれて、それに乗っかる2人のギターがいて、自然と俺を気持ちよくさせてくれる。だけどトリオはもっとシビアだよね。ウエサカくんは弾きながら唄うから余計大変だと思うけど。

ウエサカ:そうですね。ピンボーカルというポジションには憧れるし、本気で格好いいボーカルが他にいるならギターに専念したいくらいなんです。実際、ウチも最初はピンボーカルがいた4人編成だったんですよ。でもそいつが抜けて、それまで唄ったこともなかった俺がボーカルをやることになったんです。俺はギターを持ってるからまだステージに立っていられるけど、ピンボーカルって本当に格好良くないと様になりませんよね。実は今もずっとピンで唄える奴を探してるんだけどなかなか見つからなくて、同い年でピンボーカルを張れる奴がいるならまた4人になってもいいかもしれない。

JOE:へぇ、そうなんだ。

ウエサカ:俺はもともとギターヒーローになりたかったんです。このままロックンロールが廃れると、俺より若い奴らがギターを弾きたくならないと思うし、下の世代がギターを弾きたくなるような音楽をやりたいんです。

JOE(G.D.FLICKERS)×ウエサカシュンスケ(NAkidZ)- G.D.FLICKERSとNAkidZという世代を超えた2マンライブ『KEEP the LOFT』が4月18日(日)に新宿LOFTで開催決定! ルーツに根差した普遍的なロックンロールを打ち鳴らす両者のフロントマンが忖度なしの本音対談!

──ウエサカさんが憧れたギターヒーローというのは?

ウエサカ:レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテです。あとはジミ・ヘンドリックス。ジョニー・サンダースも好きだけど、ブルースをルーツに持った人が好きなんです。スティーヴィー・レイ・ヴォーンもそうだし。

JOE:シブいねぇ。その辺のギタリストはどうやって知ったの?

ウエサカ:学生の頃に先輩が弾いてたんですよね。最初にレッチリを聴いて自分でも音楽をやろうと決めたので、その時点でジミヘンへ辿り着くルートがすでにあったというか。

JOE:実は俺もギタリストになりたかったんだよ。この店(CHERRY-BOMB)に飾ってあるギターは俺モデルだからね。だけど俺は唄いながら弾けない。いっぺんに2つのことができない。だからウエサカくんが羨ましいよ。

ウエサカ:弾こうと思ったことはあるんですか?

JOE:亜無亜危異という大好きな先輩バンドがいて、ギターなら藤沼(伸一)先輩よりも俺は亡くなってしまったマリ(逸見泰成)に憧れててさ。リズムを刻むサイドギターで、俺も最初はそんなふうになりたかったんだよ。東京に出てきたときはギターをやろうと思ってたし。でもひょんなことから俺が唄うことになって、弾きながら唄えないことに気づいてね。それからずっとピンボーカル。今やすっかりギターは弾けないけど、でもだからこそギターには今も憧れがあるんだよね。

──JOEさんはスリーピースバンドに憧れがありますか。

JOE:自分にはできないことだから憧れはあるよ。ポリスみたいなバンドも好きだったし。でも上手くないとスリーピースはできないんだよね。俺は目立ちたくなかったからサイドギター、リズムギターになりたかったんだけど、なぜかそうはならなかったね。

──もともとギタリスト志向だったのがボーカリストになった点はJOEさんもウエサカさんも同じですね。

JOE:そうだね。ロッカーズでいえば鶴川(仁美)さん、亜無亜危異でいえばマリのポジションが憧れだった。

──とはいえ鶴川さんもマリさんも圧倒的に華がありましたよね。

JOE:そうそう。ボーカルをやることになって、ずっとやろうとは思ってなかった頃にコンテストに何回か出て賞をいくつかもらったことがあるんだよ。それがベストドレッサー賞とかベストパフォーマンス賞とかで、歌は全く評価されなかったんだけど(笑)。

ロフトのステージの先には夢がある

JOE:ウエサカくんもそうだと思うけど、みんなそれぞれ新宿ロフトに対する思い入れがあるじゃない? 俺はロフトのオーディションに2回落ちてるんだよ。G.D.の前にやってたバンドなんだけど。もうボロクソに言われてさ、「出してやってもいいけど昼の部から修行しろよ」とか言われて「冗談じゃねぇよ、こっちは夜の部からやりたいんだよ!」なんて言い返す時代もあった。それからバンドが変わって、G.D.の前身バンドでたまたま夜の部に出られることになったわけ。それは内側に潜り込んだというか、ロフトの事務所に押しかけて電話番をしたり姑息な手を使ったからなんだけど(笑)。最初は月曜から木曜の平日に出る3、4バンドの一つ。それがライブを重ねてだんだんトリに近づくようになって、今度はハードルの高い金曜、土日にやりたくなる。そのために頑張ってお客さんを増やしていったら週末もやれるようになって、初めて土曜の夜にロフトでやれたときはすごく嬉しかった。しかもトリでさ。その打ち上げをやりたいとロフトのスタッフにお願いしたんだけど、その日はあいにくゼルダのオールナイトが入ってて「出てけ!」って言われてね(笑)。結局、歌舞伎町に流れて飲んだけど。そうやって一歩ずつ徐々に階段を登っていく感覚はNAkidZにもあるんじゃないかな。ロフトに対する熱い思いがウエサカくんにもあるのを俺は感じるんだけど。

ウエサカ:俺らもピンボーカルがいた時期にシェルターのオーディションに落ちてますし、それはすごく悔しかったです。その後、杉山オサムさんというエンジニアに音源を録ってもらうようになって、「どうしてもシェルターやロフトに出たいんですけど、どうすればいいですか?」とオサムさんに相談したんです。そしたらロフトへ連れていってくれて、紹介してもらってCDを渡したのが柳沢さんだったんです。それから柳沢さんにメールしたら俺らを面白がってくれて、やっとシェルターに出させてもらうようになったんですよ。JOEさんがおっしゃるように徐々にですよね。ロフトのバーステージに出られるようになって、去年は無観客だったけどメインステージで配信ライブまでやれて。ちょっと前の自分たちには想像もできなかったことです。

JOE:一つの目標が達成できたら次はここへ行こうっていうのが絶えずあるわけじゃん。それがあるからモチベーションも保てるしさ。

ウエサカ:そうですね。ロフトへの憧れありきでここまでやってこれたところはあると思います。

JOE(G.D.FLICKERS)×ウエサカシュンスケ(NAkidZ)- G.D.FLICKERSとNAkidZという世代を超えた2マンライブ『KEEP the LOFT』が4月18日(日)に新宿LOFTで開催決定! ルーツに根差した普遍的なロックンロールを打ち鳴らす両者のフロントマンが忖度なしの本音対談!

JOE:去年、初めてNAkidZを見たときにすごく嬉しそうだなと感じたし、ロフトのメインステージに立つ喜びを3人が噛み締めているように見えたんだよね。諸先輩方にも怯まず精一杯やっていたのが格好良かった。

ウエサカ:まだ数えるほどですけど、ロフトのメインステージでライブをやるときは機材を壊しがちなんですよ。

JOE:自分の?

ウエサカ:いや、ロフトの。

JOE:そんなのどんどん壊しちゃえ! (平野)悠さんに払わせておけばいいよ(笑)。

ウエサカ:機材は壊すし、すごい緊張するし…それでもロフトでライブをやらせてくれる柳沢さんを始めスタッフのみなさんには感謝しかないですね。

──ロフトのステージには他のライブハウスとは違う空気がやはりあるものですか。

JOE:今のロフトのステージは小滝橋通りにあったロフトのステージと同じ高さにしてあるんだよ。ステージの幅は若干広いけど、動き回るスペースは昔とほぼ一緒。先代の社長だったシゲ(小林茂明)もよく言ってたよ。「ロフトのステージはたかだか何センチ何ミリの高さだけど、この先に夢があるんだよ。自分次第でこれから立つステージは何メートルの高さにでもなるんだ」って。そんな話を20代で聞いたものだから、今もロフトのステージは特別だよね。ロフトのフロアに倣ってこの店の床も市松模様にしてあるしさ。まあ、元はCBGBだと思うけど(笑)。でもそういうのって大事だと思うんだ。他の人にはどうでもいいことだけど、自分にとってすごく大事なことにはずっとこだわり続けるっていう。地方のライブハウスでももちろん一生懸命ライブをやるけど、ウチのバンドはロフトで生まれ育ったし、いまだにロフトではちゃんとしないとな、って思う。

誰にも指さされないならもっと派手にやれ!

──そうやって今もずっとロフトに対して深い愛情を抱いてくださるのは本当にありがたいことです。

JOE:前のロフトは横にあるボロい楽屋から直でステージで、そこに上がるための2段の階段があったわけ。俺が若い頃、氷室(京介)くんに「あの階段の向こうに武道館がある」って言われたことがある。そいうのって夢があるじゃない?

ウエサカ:はい。

JOE:BOØWYもロフトで育って、ライブイン、渋谷公会堂、武道館、東京ドームと着実にステップアップしていった。BOØWYが初めて武道館でライブをやったときに呼ばれて、終演後に楽屋に顔を出したら氷室くんに「JOE、ちょっと来いよ」と言われてね。ああいう場所でのステージセットって、お客さんを出したらすぐにバラさなきゃいけない。それを大道具さんに崩すのを待ってもらって、氷室くんがわざわざ俺を武道館のステージに立たせてくれたんだよ。あの景色はすごい迫力だったし、ロックンロールには夢があると思えたね。だからNAkidZにはもっと高いステージを目指してほしいわけ。一人でも多くの人に見てほしい、聴いてほしいでしょ?

ウエサカ:そうですね。

JOE:だったらロフトを始まりとして、これから一歩ずつステージを駆け上がっていってほしい。俺たちが今からそれを目指すと70とかになっちゃうし、俺は今後B級アンダーグラウンドの王様になるから(笑)。でもNAkidZにはいま流行りの音楽を認めつつも自分たちの信念は曲げず、もっと高くて広い場所を目指してほしいよね。

ウエサカ:武道館はロックをやってる以上、一度は夢見る場所なので出てみたいですね。でも俺たちはまだ何も成し遂げていないので…。

JOE:そんなことないよ。これから成し遂げていけばいいんだし。

ウエサカ:今はただ、その都度掲げた目標を地道に達成していくしかないですね。

JOE:やるなら今だよ。30、40、50代と歳を重ねるにつれ、感性は変わっていくから。悪い意味じゃなくてね。大きい夢を持てるのは勢いがあるうちだよ。

ウエサカ:それは自分でもすごい感じてます。

JOE:焦る必要はないけれども、一歩ずつ階段を駆け上がっていこうというのはお客さんが何千人と入る前に言えることだから。今ならいくらでも言えるじゃん。

ウエサカ:そうですね。黙って自粛してる場合じゃないっていうか、誰に指さされようが自分たちらしいライブをやるしかないわけで。

JOE:指さされるのがロックだから。俺なんて40年近くあちこちから指さされっぱなしだよ?(笑)

ウエサカ:今の人たちは指さしすらしませんよね、俺たちみたいな奴らを。

JOE:だからもっと派手にやったほうがいいよ。警察の世話にならない程度に(笑)。だって俺たちが憧れたロックスターって世界中おかしな人ばかりでしょ? 普通じゃないことをやるのがロックンロールなんだし、そういうことに憧れてきたんだから普通の人にはできないこと、普通の人の感覚じゃ計り知れないことをやったほうがいい。

JOE(G.D.FLICKERS)×ウエサカシュンスケ(NAkidZ)- G.D.FLICKERSとNAkidZという世代を超えた2マンライブ『KEEP the LOFT』が4月18日(日)に新宿LOFTで開催決定! ルーツに根差した普遍的なロックンロールを打ち鳴らす両者のフロントマンが忖度なしの本音対談!

──何をやるにもコンプライアンスの重要性が叫ばれるこのご時世では、ロックミュージシャンも当たり前のように常識を求められるのでいろいろとやりづらいでしょうね。

JOE:昔は今よりも監視カメラが少なかったしね。俺はこの街(高円寺)のどこに監視カメラがあるのか全部知ってるけど(笑)。

ウエサカ:とにかくもっともっと派手にやってやるしかないですよね。

JOE:NAkidZは他人の目なんて気にせずに今のままやれば俺はいいと思う。俺がデビューした頃は空前のバンドブームで、猫も杓子もバンドをやってるような時代だった。1週間前にバンドを組んだばかりの連中がデビューしたりするような時代で、年間に200バンド以上がメジャーデビューする感じでさ。そんな風潮に当時から違和感があったし、何だこいつらとか思ってたから全然友達ができなかった(笑)。周りのやることなすこと全部が嫌いだったね。

ウエサカ:俺たちも友達は少ないし、全部が嫌いですよ(笑)。

JOE:そもそも“全部が嫌い”からロックは始まるんだよ。

ウエサカ:そうですね。俺も最初はローリング・ストーンズが嫌いだったし。

JOE:俺も最初は嫌いだった。何だこのクネクネしたボーカル、気持ち悪! って思ったし(笑)。今は大好きだけどね。

ウエサカ:俺も今は大好きです。

JOE:似てるね、やっぱり。どのタイミングでストーンズを好きになった?

ウエサカ:高校をやめた辺りですかね。自分が普通じゃないのかもなと思って、それまで気持ち悪いとかダサいとか思ってたロックをやってる人たちが実は格好いいってことに気づいて、こういう生き方のほうが自分には向いてるなと感じた瞬間があったというか。気持ち悪くてダサいと思ってた人たちを自分なりに真似し始めたら周りの奴らを見る目が変わってきて、関わる奴らも変わってきて…着る服、身につけるものも全部変わって、そしたら自分と似た奴らが周りにこんなにいるんだと知って、こっちの世界は住みやすいなと思うようになったんです。

いくつになってもキレイなおねえちゃんをはべらかせたい

──バンドを組んだのはその後ですか。

ウエサカ:高校をやめるくらいの頃ですね。

JOE:高校中退、いいね。俺は一応大卒だけど(笑)。まあそれはともかく、いつもライブの前にメンバーがリハで集まるのは1、2回なんだけど、今度はNAkidZとの対バンだからたっぷり練習するよ。そうだな、3回はやろう。いや、それはちょっと多いか(笑)。

──それだけ気合が入っているということですね。

JOE:だってこっちも負けたくないし、おじさんが負けたら面目が立たないでしょ。気を抜くとすぐ負けるから(笑)。

ウエサカ:俺たちも生半可な気持ちじゃ臨めないし、死に物狂いでやりますよ。

──G.D.のお客さんをぶん取ってやるくらいの気持ちで?

JOE:そりゃそうだよ。NAkidZは客に媚を売るようなことはしなくていいけど、俺はNAkidZの若いお客さんに媚を売るよ(笑)。こっそり今どきのカバーを入れたりして(笑)。

ウエサカ:俺たちも媚は売りたいところですけど…売れなさそうですね。媚を売る気持ちはあるけど、結果的にいつも売れないんですよ。そういう曲もあまりないし。自分が好きな曲はラモーンズみたいに全部キャッチーだし、自分ではキャッチーな曲だと思って書いてるんですけど、あまりキャッチーには思われないんですよね。

JOE(G.D.FLICKERS)×ウエサカシュンスケ(NAkidZ)- G.D.FLICKERSとNAkidZという世代を超えた2マンライブ『KEEP the LOFT』が4月18日(日)に新宿LOFTで開催決定! ルーツに根差した普遍的なロックンロールを打ち鳴らす両者のフロントマンが忖度なしの本音対談!

JOE:NAkidZのお客さんって若くてかわいいおねえちゃんいる?

ウエサカ:いると思いますけど(笑)。

JOE:よし! じゃあ一緒にツアーに行こう!(笑) ロックンロールに憧れて、こうしてずっとロックンロールをやり続けているのはいろんな理由があるけど、俺はやっぱりおねえちゃんにモテたいっていうのが今もあるわけよ。おねえちゃんたちを両手にはべらかせてさ、自分をバカにしてきた奴らにザマアミロ! って言いたいの。エリートさんがお金でしかおねえちゃんたちをはべらかせないところを、俺はどうだいこのヤロー! こっちのほうがいいだろ!?ってはべらかせてるところを見せつけたい。それってロックだと思うし、俺はいくつになってもそんなことをやってると思わせたい。モトリー・クルーのプロモーションビデオにもキレイなおねえちゃんがいっぱい出てくるし、ロッド・スチュワートもブロンドの美女を抱いた写真をわざわざアルバムジャケットに使ってたし、俺はそういうのに憧れてたから。還暦を過ぎてもべっぴんのねえちゃんをはべらかせてたら夢があると思わない?

ウエサカ:思います。ミック・ジャガーが70歳を超えてもなお子どもを授かるとか最高ですよね。やっぱりああじゃないとなって。

JOE:ロックンロールにはアメリカンドリーム的な一攫千金もあるし、べっぴんのねえちゃんにもすごいモテる。だから最高なんだよ! っていうのがないとリアリティを感じられないよね。ただいい曲を書いてお金を稼げばいいってことじゃないから。次から次へとやりたいことを叶えていかないと夢がない。

ウエサカ:そういうロックドリームみたいなことは今やヒップホップの人たちがやってますよね。ロックンロールをやってる奴らはちょっとそこで負けてるというか。

JOE:負けちゃいないよ、まだまだ。流行りの音楽はいずれ飽きられて廃れるけど、ブルースやロックみたいに普遍的な音楽はずっと残るし、強いからね。発展した枝葉の部分は消えていくのがいっぱいあるけど、俺たちがやってるのは根幹の部分だから。

ウエサカ:その根幹にあるものがいま一番格好いいと言われたいし、俺がかつて憧れたように、俺より下の世代にも「ロックンロールには夢がある」と思わせたいんです。

JOE:50年代や60年代と違って、今の時代は映像も音源もこの先必ず残っていくから絶対に途切れない。ネットとかの情報が多すぎるとは思うけど、俺たちが先代から受け継いだもの、今までやってきたことが形として残るのはいいことだと思う。

ウエサカ:とにかくロックの底力を見せつけてやりたいですよね。ヒップホップの人たちが女の人たちをはべらかせてたらなんか悔しいし、それはやっぱりロックの人たちがやるべきだし、やってほしいし俺もやりたいし。

JOE:そうだよ。そのためにも一緒にツアーに出よう! ずっとG.D.を追いかけてくれるお客さんにはもちろん感謝してるけど、NAkidZを好きな若い人たちにもぜひ俺たちのことを知ってほしいから。逆に俺たちのお客さんはNAkidZのことを絶対気に入ると思うし、どっちのお客さんもきっと満足してくれると思う。そうやってお客さんを増やして、10人のお客さんが100人、1,000人になっていけば、その中に絶対いい女がいるからね(笑)。