寒さの厳しい中国北部の冬に欠かせないのが、「暖気」と呼ばれる集中暖房システムだ。温水やスチームを各住居内に通したパイプ内で循環させることで、屋内を温める。
古くから「暖気」の熱源とされてきたのは石炭焚きボイラーだった。

 しかし、石炭を燃焼、しかも旧式の施設を使ったのでは大気汚染物質を大量に排出すると問題視されるようになり、ガス火力への転換が進んでいる。中国メディア・人民網は5日、北京市中心部の6区において転換作業がほぼ完了したことを同市環境保護局が明らかにしたと報じた。

 記事は、長年の取り組みにより6区エリア内に残っていた石炭ボイラーの換算蒸発量は379t/hと、かなり減少させていたが、各方面の努力によってこの冬の「暖気」供給開始前にほぼすべてガス化を実現したと紹介。これにより、この「暖気」シーズンにおいて147万トン分の石炭使用を減らし、1万2500トンの二酸化硫黄、4300トンの窒素酸化物が削減されることが見込まれると伝えた(t/hは、ボイラーの蒸気発生能力を示す換算蒸発量の単位)。

 また、郊外地域においても、小型石炭焚きボイラーの改造に対して手厚い補助を出すといった奨励政策によりガスへの転換を進めているという。


 記事によると、2015年(今年)1月から10月末の北京市における二酸化硫黄の累計濃度は1立方メートル当たり13マイクログラムだった。中国北部では昔から「暖気」が導入されていたが、南部では「気温がそれほど下がらない」との理由で、一般に「暖気」の設備は設けられていない。北京市における二酸化硫黄の累計濃度は中国北部ではトップレベルで、「暖気」のための石炭燃焼が大気を汚染することの少ない南部地域に相当する水準になったという。

 1度汚れた空が元の青さを取り戻すには大変な労力を必要とする。「APECブルー」や「閲兵ブルー」の実現には、かなりの「無理」を強いたことは想像に難くない。また、大気汚染はその原因が石炭の「暖気」だけにある訳ではなく、自動車や工場の排気ガスなど複合的な要因によるものだ。
「暖気」ボイラーの改造だけですぐに改善する訳ではないだろうが、北京の空をきれいにしようとするベクトルは確かに存在する。(編集担当:今関忠馬)


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