
記事が紹介したのは、「教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に改革する」という本だ。日本が製造業で勢いのあった80年代には、米国を追い抜き「日本脅威論」が流れるほどだったが、日本がそこまで強くなった理由は「貧しさにある」としている。戦後貧しかった日本では、貧困から脱出するために教育を受けようとする若者が多く、高収入の仕事を得るために「大学で数学や科学、システム工学を学ぶ」のが人気だったという。
ではなぜ日本の製造業は力を落としたのだろう。この本によると、皮肉なことに「豊かになったから」だという。豊かになった国では、若者は「好きなことを学ぶ」ようになるそうだ。実際、有名な科学者の子どもが科学の分野ではなく文学・社会学に進むのはよくあることだとした。それで、経済的に豊かになったことが、科学技術分野での優位性が日本から中国やインドに移っている大きな理由だとしている。
中国は近年、科学技術で力を付け、GDPに占める製造業の比率も非常に高くなった。その結果、都市部はすでにかなり豊かになっており、若者が「好きなことを学べる」ようになってきているのは興味深い傾向だ。この本の分析が正しければ、豊かになった中国も今後は製造業の競争力低下という問題に直面する可能性があり、日本から中国やインドに優位性が移ったように、中国からさらに別の国へと優位が移っていくのかもしれない。