ウェザーニューズ社(千葉市美浜区)は、気象とテクノロジーを組み合わせるウェザーテック・マーケティングにより、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)をサポート。その一つに気象データベースとビジネスデータの分析結果をもとに、商品需要予測や発注支援、プロモーション支援、販売/生産計画支援、SCM/BCP支援などがある。
そこで環境気象事業部セールス&マーケティンググループの武田恭明リーダーに事業部の概要を聞いた。

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【主な顧客は】流通・外食業界や食品・飲料などメーカー、電力業界などの法人向けと、個人向けの二つに分かれる。法人向けには、気象データの分析や、気象をもとにした商品の分析、来店客数などの情報提供、それにお客さまの企画作りにもかかわっている。近年、気候変動の影響で気象災害が頻発、激甚化する中において、今まで熟練者が行ってきた受発注業務などの精度をあげるには気象の専門的な知識が必要になる。個人向けについては、お天気アプリを通じて天気に関する情報を発信し、その情報量は業界№1を誇っている。アプリは2千500万ダウンロード、サポーターからのレポートは1日平均8万通で、台風時には25万通あり、マーケティングプログラムにも役立てている。


【パスカルについて】昨年から、小売やメーカー向けに荒天時における商品の急激な需要変化を予測する在庫最適化エンジン「パスカル(PASCAL)」を開発した。これは一般的な商品の需要予測に加えて、台風や大雪などの荒天によって、消費者の需要が突発的に高まるタイミングや商品の売れる量、来客数の増減などを店舗ごとに予測。例えば台風接近の数日前から売れ筋商品、売れるタイミングや量を予測し、食品の廃棄ロスや発注のチャンスロスを軽減することを目指している。

【災害に関するイオンとの連携協定】イオンと当社は、昨年11月に激甚化する気象災害に備えるため、「気象情報を活用した防災に関する連携協定」を締結した。協定の締結を通じて、当社からイオンへ提供される気象情報を活用し、災害対策本部の運営および判断に関する支援、激甚化する災害に対するレジリエンスを強化。具体的にはイオンは、当社から提供する気象情報をお客さまや従業員の安全を守り、店舗の被害を最小限に抑えるための対策に活用することに加え、イオンの販売データとウェザーニューズの気象データを連携することで、商品調達・物流機能を確保し、災害時においてもお客さまが安心して食料品や防災関連品が購入できる環境を目指す実証実験を進めている。


【物流トラブルへの対応】今年1月には豪雪の影響により輸送会社のトラックが道路で立ち往生し、運転手が車内に閉じ込められるなどの物流トラブルが発生した。最近は台風が接近すると、台風の被害により交通機関の混乱が長期化する可能性があることから、首都圏の鉄道を中心に「計画運休」が行われようになった。物流トラブルも、このケースと同じことで、高速道路会社と連携し、気象情報を発信し、無理に高速道路を使わぬようにと「出控え」を広報している。こうした情報は物流業者や小売事業者にも伝え、トラックルートの変更を促すなどの提案をしている。

【地震など防災に役立てることは】地震の予測は難しいが、当社には不特定多数の会員が存在し、会員から1日平均18万通のお天気レポートが届く。しかも情報の質も高い。
もし災害が起こった場合には、激甚災害の復旧状況など現地の生の情報を知ることができ、こうした情報を小売と共有し、提供できる体制にもあり、ぜひ、役立ててほしいと思っている。