取材に応じた代表取締役の竹内氏は「自社ブランド(NB)を強化していく。
同社は1946年に創業。創業以来、「あられ、おかき、ひとすじに」をモットーに、餅米菓造りの技術とノウハウを蓄積している。
これまでOEM製造を事業の屋台骨とし、ものづくりで業界から高い評価を得る一方、あらゆるコストが上昇基調にあり効率化が求められ、新境地を開く必要があった。
2022年から現職で三代目の竹内氏は、専務時代の2019年頃からNBのリブランディング構想を描く。
「NBも手掛けていたが、どちらかというとその時々のニーズに対応したものが多くSKUだけが増えてしまっていた。当社はマーケティングやブランディングが弱いと自覚しており、世代交代のタイミングで本当に何か形を変えなければいけないと考えた」と語る。
リブランディングにあたり、同社の独自価値(USP)が「あられ、おかき、ひとすじに」のモットーにあることを社員と確認した上で、新ロゴマークを策定し主力商品のパッケージを刷新した。
新ロゴマークは、四角を丸型に切り抜いた江戸時代から続く餅の家紋を採用。
パッケージは、試行錯誤を重ね、外部のデザイナーを起用し、商品名を一番大きく、その次に社名と新ロゴを目立つようにあしらった現行のデザインに辿り着いた。
パッケージの下半分を半透明にして目新しさを打ち出し、商品のキャッチコピーを新たに記載した。現行のデザインはリブランディングが始まってから二回目の改版になる。
2021年、「柿の種」「サラダ柿の種」「ひび辛大柿」の「餅紋」シリーズ3品を皮切りにリブランディング商品を販売開始。滑り出しは上々で、同年の夏頃から軌道に乗り、年末には供給がタイトになるほど引き合いが強まる。
年明けには一息つけると見込んでいたが、翌年22年に米菓業界の供給バランスが崩れ市場に米菓が不足する予期せぬ事態に陥る。さらに5月にはロシアがウクライナに侵攻。これによりコストが急増の中で増産対応に追われることになる。
春先から注文が殺到し供給が逼迫。納期2ケ月の状態がしばらく続き、この状態を打破するため主力品の「柿の種」を終売するという決断を下す。
「エネルギーコストや原材料価格が高騰しフル稼働しているのに利益が出にくい状態になっていた。商品供給を維持して収益を改善させるため、売れ筋ではあったが量目が一番多く利益率ももしかしたら低かったかもしれない醤油味の『柿の種』を終売にして、独自色の強い4品を残した」という。
この決断により1か月程度で生産体制は安定化。ただ、終売したのが主力品であったことから、その年の売上は激減した。
「主力品の終売に加えて、ロシアの軍事侵攻により加工澱粉などの原料が入荷できない状況になった。
八方ふさがりの中、製造コストの削減や原材料の配合を見直すなど1つ1つ課題を解消していったところ、23年の中盤から持ち直す。
「先輩方が育てて下さった商品もあったが、どうせやるなら効率化を一気に進めようと全社員一丸となって取り組んだ。NBは35品あったのを10品以下に削減し、PBも断腸の思いで止めさせていただいた」と述べる。
現在、主力品の「柿の種」が復活し「餅紋」シリーズは「柿の種」「ひび辛大柿」「サラダ柿の種」「こざかな君」「えびかきもち」の5品体制となっている。
営業・販売面では久慈食品(埼玉県戸田市)の協力を得る。久慈食品の売り込みにより、じわり拡大しているのが「サラダ柿の種」。
“米と塩を味わう。”をコンセプトに「シンプルな塩味だけに生地のお米の風味を生かすことにこだわった」商品で、久慈食品が販売を手掛けるようになって以降、販売規模は10倍程度拡大した。
今期(10月期)売上高は、これまでの改善が奏功して、増収増益で着地する見込みだ。来期は「餅紋」シリーズ・ハイエンド商品・お土産ルート向け商品を柱にさらなる成長を目指していく。
「餅紋」シリーズは10月1日に価格改定を実施。
「極上柿の種」と「ホットサラダ」 ハイエンド商品については「原料から製法の全てにこだわり、少々高額だが竹内製菓の歴史を語る上でフラッグシップになる」との位置付けで「極上柿の種」と「ホットサラダ」の2品に注力する。
来年に向けてハイエンドシリーズも新商品を検討している。
お土産ルート向け商品の好例はギフト商品「おぢやおかき」。売行きは上々という。
「人口減少の中でも地元のいい会社は残っており地元の異業種の方たちとのコラボも推進していく。米菓業界も横とつながった方が絶対にメリットがあると考えており、微力ながら米菓業界にも貢献していきたい」と力を込める。
高い技術力に磨きをかけうる近年のトピックに、歴代の日産車23種をかたどった米菓「新型カキノタネ」への製造協力が挙げられる。
同商品は、日産自動車と神奈川県伊勢原市のコラボ企画で生まれた商品で龍屋物産(伊勢原市)が販売を手掛けている。
竹内製菓は同商品のOEMを手掛けている。
「開発にあたっては日産の方々が弊社の工場で試作を繰り返していた。通常は1つの金型で1つの形しかつくれず、23種類の自動車の形に打ち抜く金型は不可能と思っていたが、日産の技術者は高度なCAD技術などを駆使して実現してしまい、我々も大きな学びになった」という。
今後は「得意とするOEM商品の豊富な経験則を活かし、NB商品の商品力を更に高めていきたい」と意気込む。