HG「八木さんがレア度を決めるとき、重要なのは形じゃなくて光ってるかどうかなんですよ」八木「トレーディングカードでも、キラキラやったらレアやん!」
男のコなら誰しも、ノートの端に自分で考えた架空の生物を描いたことがあるだろう。
例えば、そうして生まれた生物の図鑑が作れたとしたら?
サバンナ・八木真澄さんとレイザーラモンHGさんによる『未確認生物図鑑』が全男子の夢すぎる本だと話題沸騰!
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――童心に返ってワクワクしながら読みました。
レイザーラモンHG(以下、HG) 4年以上前から、八木さんが「#新生物図鑑」や「#未確認生物図鑑」というハッシュタグで、毎日インスタグラムにラフ画と短い解説を上げていたんです。僕はそれをずっと面白いなって見ていて。八木さんからそのイラスト化をお願いされたんです。
――作画をHGさんに依頼したのは、おふたりのユニット「ネオ☆健康ボーイズ」の関係性もあってのことですか?
八木真澄(以下、八木) そうです。ふたりで行った営業で「キャラクターを考えてくれ」って依頼を受けて。HGに「原案を考えるからキレイに描いてくれ」って頼んだら、その絵がすごい仕上がりやったんです。その場で「ちょっとほかのも描いてくれへん?」って誘ったのが発端です。
HG 八木さんが「すごい!」ってめっちゃ興奮していたの覚えています。その後、すぐにマネジャーとか関係者に電話しまくって動き出したんですよね。それが2年前。
八木 前からHGの絵がうまいことは知っていたけど、「ネオ☆健康ボーイズ」を組んでいたので運命を感じましたね。バチッとハマったというか。
HG ただ、100体の生物に300字ぐらいの生態レポートが添えられているんですけど、八木さんが途中でどうかしてしまったのか、ハンバーガーをモチーフにした生物でめちゃくちゃアメリカのこと書いてるのに、生息地が日本になっていたり、京都のことが書いてあるのに生息地が外国だったり。考えすぎてズレちゃったんでしょうね。
――100体描くにはだいぶ時間がかかったんじゃないかと思うんですが。
HG トータルだと半年かかりましたね。作業時間はキャラによってまちまちですが。「しろべえ」(真っ白な壁がモチーフの生物)は30分ぐらいだし、2日に分けて6時間かけた生物もいます。
ただ、手間とレア度が比例しなくて悔しいんですよ。「これ楽やな~」と思って描いたのがレア度めっちゃ高かったり。どうやら八木さんはテカリが好きみたいで、キラキラさせたりハイライトを入れたりするとめっちゃレア度が上がるんです。
「ミミーボール」(耳の大きい球体の生物)は最初のほうに描いたからマットなんですけど、その頃に好みがわかってたら絶対テカらせてます(笑)。
八木 トレーディングカードでも、キラキラやったらレアやん! まあ逆に、誰も集めてないような普通のキャラがレアってアツいパターンもあるか。
HG 僕は「ダブルスネーク」(両手がヘビの生物)がめっちゃ好きなんですけど、レア度は高くない。作業が大変なほどレア度が低い印象ですね。
八木 でも、「鍵魚(キーギョ)」(鍵の形をした魚)はシンプルやけどレアやないとおかしない?
HG (確認して)ほら、やっぱテカってますやん(笑)。八木さんがレア度を決めるとき、重要なのは形じゃなくて光ってるかどうかなんですよ。
「今テレビのレギュラーがゼロ。相方が10本ぐらいレギュラーあるのを考えたら、もはや面白くなってきますよ(笑)」と語る八木さん(左)
――HGさんから見て八木さんはどんな芸人ですか?
HG 大阪時代から30年近くお世話になってますけど、八木さんは怖いぐらい"芸人"。営業では手を替え品を替え90分ひとりでやり切るし、その一方でギャグもあるからショートネタにも対応できる。どの芸人よりも振り幅があると思います。
八木 今テレビのレギュラーがゼロですから、幅が大事なんです。その分、営業が多くなって年間3分の1はビジネスホテルに泊まってます。全国の宿泊費の相場にめっちゃ詳しくなりましたよ。ただ、相方が10本ぐらいレギュラーあるのを考えたら、もはや面白くなってきますよ(笑)。
HG そらそうですよ、辞めてもおかしくない。八木さんぐらいの芸歴になると営業を断る人もいるんです。でも、八木さんはそういう愚痴を一切言わない。解散する中堅芸人も多い中で、サバンナのおふたりはずっと仲がいいですし、月1回の舞台出番もあって、それぞれピンでも活動されている。僕からすると八木さんは理想なんです。
――お話を聞いていると、八木さんってピュアさとたくましさの両面を持っていますよね。
HG でも、普段の八木さんはゴシップとかお金事情とかがめっちゃ好きです(笑)。
八木 あと、お笑い界の組織図にも興味があって。5年前と今って図式が全然違うから、「じゃあ今から5年後に誰が生き残ってんねやろ?」って想像するとワクワクするんですよ。そんな僕からするとHGは生き残る才能がエグい。
「ハッスル」(2000年代に一世を風靡[ふうび]した既成のプロレスとは一線を画す格闘イベント)の全盛期、大阪府立体育館に(なかやま)きんに君とふたりでHGを見に行ったんです。メインで登場する姿を見て、マジで鳥肌立ちました。
HG 学生プロレスのバックボーンがあったし、HGのキャラクターもちょうどハマったんですよ。ホンマにレスラーになりたい時期もあったから、リングに立ててめちゃくちゃうれしかったですね。
八木 それを見たきんに君が「こんなことしてる場合じゃない!」ってアメリカ留学の決意を固めたんです(笑)。でも、それぐらいエグかった。プロレスも一線級だし、絵もうまい。すごいですよ。
HG コロナ禍に入ってから、iPadで漫画やイラストを描いてたんです。その経験もあっての今回の図鑑だから、コツコツ積み重ねてきたものを披露できて良かったなと思います。
八木 近くで見ていてビビりました。「針角ネズミ」(針のように鋭いツノを持つ生物)の造形美とかエグないですか?
HG ほら、これも光ってますやん(笑)。僕の腕じゃなくて、それ用のツールで線引けばこうなるんですよ。
八木 でも、俺からしたらすごい。カッコいいでしょ、これ。
原案を担当したサバンナ・八木真澄さん(左)と、イラスト化を担当したレイザーラモンHGさん(右)
■八木真澄(サバンナ)(左)
1974年生まれ、京都府出身。1994年に高橋茂雄とサバンナを結成。1997年にABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞受賞。一発ギャグのレパートリーは1000以上
■レイザーラモンHG(右)
1975年生まれ、兵庫県出身。1997年にレイザーラモンを結成。2005年に一発ギャグ「フォーー!」が大流行。新語・流行語大賞のトップ10に入る。『プレバト!!』(TBS系)内「春の水彩画コンクール2022」で優勝
『未確認生物図鑑』ヨシモトブックス 2000円(税込)
●『未確認生物図鑑』ヨシモトブックス 2000円(税込)
サバンナ・八木真澄が何げなくインスタグラムのストーリーズに投稿し始めた未知の生物のラフスケッチをもとに、レイザーラモンHGがカラフルでハイクオリティなイラストに描き上げていった図鑑。100体の生物のイラストと、その生物の説明をオールカラーで掲載している。注目は各生物のレア度。
取材・文/鈴木 旭 撮影/渡辺凌介