打者で明暗が分かれた交流戦。阪神の不調、巨人の巻き返しをお股...の画像はこちら >>

開幕から打撃の不振が続き、6月5日から2軍で再調整となった阪神・大山。日本一連覇へ向けて、「虎の4番」の復活は不可欠だ
良くも悪くも流れが変わり、今年もさまざまなドラマが生まれたプロ野球交流戦。
3週間の激闘で生じた数々の"異変"を野球評論家のお股ニキ氏と共に振り返る! 【プロ野球 交流戦"異変"ワイド・第1回】は阪神と巨人。
*成績は6月11日時点

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■不動の4番、大山不調の要因

交流戦の序盤3カードでわずか1勝。一時は貯金も使い果たし、セ・リーグ首位から陥落した阪神。佐藤輝明、大山悠輔、シェルドン・ノイジーという主軸が2軍落ちを経験し、ダブル守護神と期待されていた岩崎優とハビー・ゲラの救援失敗も目立ち、ゲラは2軍調整となってしまった。

交流戦4カード目の西武戦で3連勝し、復調の兆しを見せたとはいえ、この不調の原因として、本誌おなじみの野球評論家、お股ニキ氏が指摘するのは貧打に悩む野手陣。交流戦序盤3カードで13得点は12球団ワーストだった。

「そもそも開幕直後、球団ワーストタイの『10試合連続2点以下』を記録するなど、打線はずっと打てていません。

昨季優勝の反動によるコンディション不良や、他球団に研究されている点もあるでしょう。実際、昨季うまく得点力アップにつなげた"四球狙い"が今季は裏目に。阪神打線は振ってこないと思われてしまい、積極的にストライクゾーンへ投げ込まれ、追い込まれるケースが増えています」

また、今季の"飛ばないボール問題"が阪神には特にマイナスに働いているという。

「広い甲子園球場で戦う阪神にとって、今季のボールは厳しいはず。相手投手も、『スタンドまでは飛ばないから』と思い切って投げられる。飛ばないボールを飛ばそうとして、どの打者もややアッパー気味に振りすぎるなど、バランスを崩しています」

例年、好不調の波が激しい佐藤輝明は、そのドツボに今年もハマったといえる。

だが、昨季全試合4番スタメン出場を果たした大山の不調の要因はどこにあるのか?

「今季の大山は、飛ばないボールに対して反動をつけて打とうとした結果、バットのヘッドが傾きすぎてよけいにバットが出てこない悪循環に。

そもそも大山は開幕前から体重が重そうで、膝の状態も良くなかったはず。無理に開幕に間に合わせず、万全の状態になるまで待ってもよかったですが、4番の責任感でそれができなかったのでしょう」

こうした打線のマイナスが、知らず知らずのうちに盤石のはずの投手陣にも影響を与えているという。

「開幕後、打線が打たずとも首位にいたのは、昨季同様に投手陣がいいから。ただ、あまりに打てないと、投手陣に『1失点もできない』という過度な重圧を与え、投球自体が窮屈になってしまいます」

2軍落ちしたゲラの不調も登板過多の側面は大きい、とお股ニキ氏は指摘する。

「ゲラは出番が多いためか、明らかに力をセーブしながら投げていて、100%の力を出していないから打たれてしまう悪循環に。

勝負できる球種が少ないので、今回の2軍調整でフォークかツーシームを増やすなどのチューニングはしてくるはず」

数少ない明るい材料は、防御率1点台で最多勝争いを続ける才木浩人の躍進ぶり。西武戦では、ノーヒットノーラン寸前の投球を披露した。

「トミー・ジョン手術から復帰した2022年以降、防御率1点台の快投を継続。私は以前から称賛していましたが、間違いなくメジャーでも通用する投手です」

■打線が目覚めたふたつの要因

一方で、今季序盤は歴史的貧打に苦しんでいた巨人だが、交流戦では打線が好調。圧巻だったのは6月4日のロッテ戦だ。9者連続安打、1イニング12安打というふたつのセ・リーグタイ記録を作り、一挙11得点を挙げる爆発ぶりを見せた。

お股ニキ氏は「打線が本来の力を発揮し出すとやはり強い」と評価する。

「9連打は『メークドラマ』と呼ばれる大逆転優勝を果たした1996年の長嶋巨人以来です。

今季の巨人は、投壊状態だった昨季から一転、甲子園でノーヒットノーランを達成した戸郷翔征、完全復活を遂げた菅野智之、山﨑伊織を中心に先発陣が整備され、大勢に代わって抑えを務めるアルベルト・バルドナードもいい。守備も鉄壁なだけに、打線が打ち始めると順位も上がります」

打者で明暗が分かれた交流戦。阪神の不調、巨人の巻き返しをお股ニキが解説!
5月に入団し、交流戦でいきなり大活躍を見せた巨人・ヘルナンデス。開幕から貧打に悩まされてきた巨人打線も交流戦で目を覚ました

5月に入団し、交流戦でいきなり大活躍を見せた巨人・ヘルナンデス。開幕から貧打に悩まされてきた巨人打線も交流戦で目を覚ました
巨人打線が爆発し始めた要因はふたつある。ひとつは、5月28日の交流戦開幕とともに1軍登録され、ヒットを量産するエリエ・ヘルナンデスの存在だ。
新外国人の球団新記録となるデビューから8試合連続安打、球団最多タイの3試合連続猛打賞を記録する活躍で打線を牽引(けんいん)している。

このヘルナンデスについて、お股ニキ氏は、「MLB本塁打王の経験もあるホルヘ・ソレア(ジャイアンツ)に似ている」として、さらにその特徴を深掘りしてくれた。

「少し崩されても芯でとらえる能力があり、日本の横に広いストライクゾーン、スライダー系の変化球にも対応できる。

外へ逃げるボールに手をうまく伸ばしてレフト前へ運んだ来日初ヒットを見て、『日本向きだな』と思いました。アメリカ時代の指標は決して良かったわけではないので、日本への適応力を見抜いた海外スカウト担当者がいい仕事をしたといえます」

さらにお股ニキ氏は、「ヘルナンデスを2番に起用しているのがいい」と話を続ける。

「阿部慎之助監督は2番に打てる打者を起用したいようです。

開幕直後にはオープン戦で活躍した佐々木俊輔を置き、その後もオコエ瑠偉を試した末、上位互換としてヘルナンデスが2番に定着。1番の丸佳浩は今季、長打が減った代わりにリーグ1位を争う出塁率を記録しているだけに、相乗効果を発揮しています」

そんなヘルナンデス加入以外でお股ニキ氏が挙げるもうひとつの好調要因は、打線全体の意識改革だ。そのきっかけとなった試合があるという。

「『王貞治デー』と銘打ち、王貞治さんと原辰徳さんの元監督が解説を務めた、ソフトバンクとの交流戦初戦です。この試合の6回、1点を追う場面で無死一、三塁のチャンスをつかみながら、バッターのオコエにバントのサイン。原さんも『強気でいってほしい』と苦言を呈していました」

このシーンは、SNSで「阿部采配」「オコエのバント」がトレンド入りするほどファンの間でも物議を醸した。

「この場面に限らず、今年の巨人は『どうせアウトになるなら』という高校野球的なバントが多かった。また、首脳陣が併殺を嫌い、選手が消極的になっていることに対して、『萎縮してバットが出ていない』と王さんも原さんも指摘しました。その言葉が阿部監督の耳にも入ったのか、吹っ切れたのでしょうね」

上述の「1イニング11得点」の試合は、この「オコエのバント」事件からちょうど1週間後の出来事だった。

「三振しても、併殺になってもしょうがないから思い切って振っていこう、という姿勢がチーム全体として出てきた。阿部監督もシーズンを戦ってまだ3分の1。残り3分の2でどんな采配を見せるのか、見守っていきたいです」

文/オグマナオト 写真/時事通信社