M-1チャンピオンでありながら、これまで数々のやらかしをしてきた迷える40歳、ウエストランドの河本太が、さまざまな先輩・仲間に人生相談を受けに行く不定期連載「人生相談する側チャンピオン」。
爆笑問題の太田光さん、田中裕二さんを迎えた第3回は、ついに究極の人生相談をすることに...!?(全4回、4日連続更新)
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人生相談③
「僕のいいところってなんですか?」(東京都・河本太・40歳)
河本 3つめの相談は、究極の質問なんですけど...。僕のいいところってなんですか?
一同 (笑)
太田 ないよ。
河本 そんなことないです。
太田 じゃあお前が言ってみろよ。
河本 やっぱり田中さんは持ってますよ。
太田 何を?
河本 スター性というか。
田中 (笑)。
太田 そんな漠然とした答えじゃ誰も納得しないぞ。
河本 やっぱり田中さんはアイドルなんですよ。カラオケに一緒に行かせていただくと、僕ら若手を差し置いて誰よりも一番盛り上げますからね。
田中 おい、それじゃ俺、下がってるよ(笑)。
河本 いやいやいや。太田さんは田中さんと一緒にカラオケ行かないから分からないと思いますけど。
田中 昔は何度も行ったよ(笑)。
太田 あの悦に浸って歌ってる感じだろ?(笑)
河本 いやー、アレ、他の人はなかなかできないですよ。普通なら恥ずかしいですし。
――そもそも、長年見てきて田中さんのいいところはそこでいいんですか?(笑)
河本 いやいや、他にも器用ですし、芸人としてなんやかんや助けてもらってますし、病気をしても死の淵から帰ってきて......ってなんで僕が田中さんのいいところをこんなに言ってるんですか(笑)。
田中 (笑)
太田 田中のそれらを「持ってる」っていうなら、お前も持ってることは持ってるだろ。そもそもM-1優勝してさ、話題を集めてさ。
河本 まあ、よき相方とコンビを組んだということで言えば持ってるかもしれませんけど。
太田 それで事件を起こしてさ、また話題を集めて。
田中 離婚の一歩手前から生還したりもしたじゃん。「自分の子供に会えない」って泣きながらウチの子を抱いて(笑)。
河本 奥さんが実家に帰っちゃった時に、田中さんのお子さんが1年違いでお生まれになって。自分の子供に会えない時に、田中さんのお子さんを抱かせてもらって。
太田 だからそういう意味ではお笑い芸人って、みんなどの世代も最初はネタで審査されるのよ。ネタが面白けりゃ世に出れるんだけど、そこから先って「誰が言ってるか」が重要になってくるわけ。
例えば同じことを言っても、たけしさんやさんまさんが言うのと河本が言うのじゃウケ方が違うでしょ。それはたけしさんやさんまさんのキャラクターを日本中のみんなが分かってるからなの。そうすると、たとえ内輪ネタでもウケるわけですよ。みんなが知ってるから日本中を学生同士のノリみたいにできちゃう。だから、一度世に出たあとは、いかにその人の性格やバックボーンが世に受け入れられるかの勝負になってくるんだよね。
そういう意味で言うと、河本がいろいろやらかしたことっていうのは、事件になったとはいえ、まだ日本中の人、例えばおじいちゃんおばあちゃんにまでは伝わってないよね。そういうキャラクターをいかに世に広げられるかじゃないですかね。そういう失敗談っていうのは、芸人にとっては絶対プラスになるからね。
◆炎上したその後
――太田さんは炎上した際にきちんとへこむと聞きますけど、そこからどうやって元気を取り戻すんですか?
太田 だから、一切元気は取り戻せないですよ。しばらくは後を引くし、いまだにここは俺の居場所じゃないんだろうなっていうのは思います。
一同 (笑)
河本 やめてくださいよ(笑)。
太田 例えば「サンジャポ」でちょっとギャグやったとするでしょ。「サンジャポ」は客を入れてないから、パネラーだけが愛想笑いかもしれないけど笑ってくれるじゃない。そこで「よし!」って思って、そういうところでなんとか自己肯定感を保つ。そうやって毎回綱渡りでやってるよね。だって何やってもダメなんだから、俺なんか。
河本 そんなことないです。
太田 本も小説もあれだけ一生懸命書いてもさ、全然売れないし。何かやるたんびにボロクソ言われてさ。
田中 お前が人生相談してるじゃねーか。
一同 (笑)。
太田 だから、そういう現場でちょっとウケたとか、そんなちっちゃなことを一生懸命頼りにしがみついて、自己肯定感を保つっていうことだけだよね。
河本 太田さんくらいの存在になっても、そうなんですね。
太田 だってお前、俺くらい世の中から反発受けてみろよ。しかも今に始まったことじゃないからね。俺は高校時代からずっと周りに友達がいなかったし、大学の時も嫌われてたし、だから「世の中こんなもんだろう」っちゅうのはどこかにあるよね。大学の時なんか、なあ。
田中 入学して間もない頃に(太田と)仲良くなる友達は何人かいたんだけど、ちょっと距離があったり、それを外から見てたりする友達からはすげえ嫌われてて。
太田 うるさいし、授業妨害するし、鼻つまみ者でね。
田中 そりゃそうだ、その人たちが普通なの。
太田 今と違って匿名じゃないよ、自らの名前を名乗って「嫌いです」って言われるからね。俺らは「演技コース」だったけど、「演出コース」のヤツは全員俺のこと嫌いって言ったのよ。その時は「ふざけんな!」とか言ったけど、もう内心ボロボロよ。
一同 (笑)
田中 俺は別のバスに乗っててワーワー騒いでたから、サービスエリアで会ったら「こんなことがあったんだ...」ってどんよりしてるわけよ(笑)。「何それ!」って。
太田 それで合宿だから泊まりじゃん。夜中に演出コースの先輩に起こされて行ってみたら、演技コースの先輩と会議しててさ。「ウチの後輩たちが悪いことをした。申し訳なかった」って言うわけよ。それがまた傷つくわけ! そもそもなんだよその会議は!
田中 それで熱出しちゃってな(笑)。
河本 (笑)。そもそも、太田さんってなんでああいう騒ぎを起こしちゃうんですか?
太田 ウケると思ってやってるのよ。面白けりゃいい、楽しかったらいい。嫌われると思ってない。それがずーっと今まで続いてるわけだよ。壮絶な人生だよ(笑)。
河本 芸人になってよかったというか、なるべくしてなったというか。
田中 まだお前のほうが社会に出てたじゃん。水道管がどうだ、家のリフォームがなんだってできるわけでしょ。
太田 そんなの俺はできないよ。社会性はまったくない。
河本 でも、田中さんは社会性ありますよね。
太田 コイツは何でもできるよ。コンビニの店長になりかかってたもん。若い頃イキイキして働いてたよ。
河本 さっき太田さんは、やらかしたことも含めてキャラクターを日本中に知ってもらうって言いましたけど、だからと言って事件って自分から起こすものでもないじゃないですか。
太田 まあね。俺はそういう気質もあるんだろうし、根っこにそういう「目立ちたい」って気持ちとか、多少嫌われてでもこの状況を破壊してやりたいっていう気持ちがあるんだろうね。それは「なんで?」って聞かれても分かんないよ。それが面白いと思ってる。でも、そこが世間一般とズレてるんだろうな。
爆笑問題からの回答③
「いいところなんて探しても無いし、人生は孤独! だから、せめてそのキャラクターを世に広めろ! そして小さな成功にしがみついて自己肯定感を保て!」
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■河本太(こうもとふとし)
タイタン所属。1984年1月25日生まれ。岡山県津山市出身。2008年に同級生の井口浩之とウエストランドを結成。M-1グランプリ2022チャンピオン。リフォーム会社に勤めていた経験から電気工事、配管工事が得意。趣味は登山、キャンプ。
■爆笑問題(ばくしょうもんだい)
タイタン所属。ともに1965年生まれの太田光、田中裕二が日大芸術学部で知り合い1988年に結成。数多くのテレビ・ラジオ番組のレギュラーや執筆活動を抱えながらも、隔月開催される「タイタンライブ」では新ネタで出演している。
取材・文/酒井優考 撮影/山添 太