裏金問題で今回は自民党非公認での出馬となった西村康稔元経産大臣。写真は淡路市で行なわれた出陣式の様子
新政権発足後、即解散・総選挙に踏み切った石破茂新首相。
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裏金問題のペナルティとして非公認処分となり、無所属での出馬となった西村康稔(やすとき)元経産大臣(62歳)。
一時は将来の宰相候補と目される時期もあっただけに、さぞかしへこんでいるはずと思っていたら、これが大間違い。裏金問題などどこ吹く風。持ち前の活力で、選挙区の兵庫9区内を駆け回っていた。
「とにかくエネルギッシュ。小さなお祭りや集会に呼ばれてもないのに押しかけ、『イチから出直します!』と有権者へのアピールに余念がない。主催者から『顔を出してもいいけど、今は自粛のとき。挨拶はやめてほしい』と言われても無視して挨拶してしまうこともしばしばと聞いています」(兵庫県政関係者)
そのトーンは反省モードというより、まさに「オレは悪くない」モード。
場所は淡路市内の某神社。そこで行なわれた出陣式でまずは「今年1月26日、検察から嫌疑なし、いわゆる不起訴となりました」と、無罪アピール。そしてダメ押しをするかのように、3月1日の政倫審での枝野発言を切り抜きして大音量でスピーカーから流し、こう自己弁護した。
「総計で100万円の還付を受けたのは事実だけど、不記載でも裏金でもない。そのことを政倫審で私に質問した枝野さんが『(政治資金パーティに収支として)計上しているので、確かに裏金にはなっていない。西村さんの分については裏金になっていない』とはっきり言っています!」
ただし、突然会場に流された枝野氏の声に毒気を抜かれたのか、聴衆の拍手はまばら。それでも西村氏はへこたれる様子もなく、「聞いていただけましたか!?」と叫ぶのだから、その強心臓ぶりは並じゃない。前出の兵庫県政関係者が言う。
「本当にへこたれない人です。だから選挙も強いし、負けない。
兵庫9区はこの西村氏に野党新人が挑戦する構図。立憲の橋本慧悟(けいご)氏(35歳)、維新の加古貴一郎氏(61歳)、共産の高田良信氏(78歳)の3候補だ。
中でも9区の大票田である明石市で抜群の支持を誇る泉房穂前明石市長が全面支援する橋本氏は西村氏の強敵となるかもしれない。
西村氏が強い淡路島(淡路市、洲本市、南あわじ市)の有権者数は約11万人。それに対して泉チルドレンとして橋本氏が集票を見込める明石市は約25万人にもなる。泉前市長の呼びかけに応じて明石市民が橋本氏に大量投票すれば、当選7回のつわもの・西村氏も苦戦は免れない。
橋本慧悟氏を明石駅前で撮影。すると高齢の女性が「がんばって」と声をかけてきた。初出馬ながら泉房穂前明石市長の弟子ということで、少しずつ知名度が上がってきている
「裏金作りという違法行為は絶対に許せない。でも、ここで西村さんが当選すればみそぎは済んだとばかりにカネがモノをいう政治が復活しかねない。それだけは避けたいとの一心で出馬しました」(橋本氏)
政治とカネ問題の根絶を訴える野党3新人がどこまで無所属の西村氏を追い込めるかが兵庫9区の焦点となる。
取材・文・撮影/ボールルーム