ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。
それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。
そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。
* * *
我が家の最寄駅は西武池袋線の石神井公園駅で、よく勘違いされる上石神井駅は、その少し南を並行して走る西武新宿線の駅だ。
この時点で土地勘のない人には理解する気も起きない話だろうし、実際、石神井公園で待ち合わせをしていたのに、間違えて上石神井に向かってしまった知人はこれまでに複数いる。ある人が「そろそろ上石神井公園駅に着きそうです!」と連絡をくれた時は、さすがにパラレルワールドにでも迷い込んだのかと困惑したものだ。
以上が非常に狭い範囲の西武線あるだが本題ではなく、つまり、新宿線と池袋線は、兄弟姉妹のような存在感なのだ。それらの駅を縦につなぐ路線バスは頻繁に出ているし、ウォーキング気分なら歩いていくことも苦ではない。
そして最近、僕が上石神井を訪れる機会が激増しているのは、スーパーマーケット「あまいけ」の存在ゆえ。再開発などの影響で地元石神井公園からスーパーが減ってしまってこともあり、しばらく前に少し足を伸ばして訪れてみたら、全体的にかなり商品が安い。さらに、熾烈な争奪戦を誘発しそうで本当はあまり言いたくないんだけど、商品の値引きスタート時間が地元エリアのどのスーパーと比べてもかなり早い。運が良ければ夕方と呼ぶにはまだ早いくらいの時間から、4割引の肉類がゲットできたりする。その日の夕飯に使うならばなんの問題もなく、日々その恩恵をありがたく享受しているというわけだ。
と、ここまでもまた本題ではなく、そんなわけで先日も、午後3時くらいにあまいけで買いものを終えた。
「辛ちゃん」
そういえば1、2年前にできてたな、この店。なんとなく認識はしつつ入ったことがなかった。店員さんに聞いてみると、ランチタイムは4時まで(3時半ラストオーダー)らしく、僕のように日々いいかげんなスケジュールで仕事をしているフリーライターにはありがたすぎる。よし、今日は韓国料理ランチだ!
ランチと定食のメニュー
店頭でメニューを確認すると、ランチと定食のメニューだけで24種類もあり、迷いがいがある。どの品にも小鉢料理が4品ついていて、これは韓国料理特有のおかず「パンチャン」というやつだろう。酒のつまみにいいんだよな。
店内
店内は想像よりも広く、大画面モニターにはK-POPのミュージックビデオ。ちょっとお祭り感のある内装にテンションが上がる。ランチや定食以外のメニューも豊富で、特にチキンのバリエーションは把握しきれないほどだ。
ランチビール
ちょうどいい時間帯。知った街とは思えない空間にいるそわそわ感。少し前まで予想もしていなかった、今から韓国料理を食べるという現状。あらゆる要素が絡み合い、キンキンの生ビールがうまい。
料理は最終的に「スン豆腐チゲ」の定食(968円)にした。そもそも豆腐好きの僕は、家でもたまに、この料理を作ってつまみにする。といっても、市販の素を使って作るか、もっと雑に、豆腐と、豚肉、野菜などを鍋風に煮込んで味つけ、韓国唐辛子を加えるくらいだが、好物のひとつと言っても間違いではないだろう。そういえばあまり外食で食べたことがないので、本場の味に期待が高まる。
「スン豆腐チゲ(定食)」
そして熱々の鍋から湯気を上げつつ、真っ赤なスンドゥブチゲ定食がやってきた。
まだぐつぐついってる
鍋は一見真っ赤な液体にしか見えないが、スプーンで探ってみると大量の具が発掘される。主役の豆腐は、どーんと1丁ぶん入っていそう。その他、ひき肉、野菜、あさり、海老、半熟状態の玉子など。
赤と白の対比がいい
具がたっぷり
さっそく汁をすすってみると、うわ、すごい。始めにがつんとくるのはたっぷりのあさり由来であろう海鮮系の風味と、韓国唐辛子独特の旨辛さ。さらにさまざまな具材からも味が染み出し、口あたりはさらりながら、ものすごく濃厚だ。これ、間違いなくうまい!
ビールをぐいっと飲んで臨戦態勢に入り、いざがつがつと食べすすめてゆく。そもそも「スンドゥブ(純豆腐)」とは「柔らかい豆腐」を意味するらしく、それに鍋を意味するチゲがくっついて、スンドゥブチゲ。そのまろやかな豆腐の口当たりと、食べるほどに蓄積されてゆく爽快な辛さの相性がいい。
ビールもすすむが、当然白メシにもバッチリ。はふはふ、もぐもぐ。あぁ幸せ。ちなみに僕は、白米と汁っ気のあるおかずの組み合わせにおいて、米を汁に浸すという食べかたを個人的にそれほど好まないんだけど、試しにやってみると、それはそれで味わい深い。
これもありだな
スープがかなりの量で、おかずやごはんを食べつくしてしまってもまだまだある。そこでランチ価格なのをいいことに生ビールをおかわりし、心ゆくまで本場のスンドゥブチゲランチ飲みを堪能したのだった。
またひとつ、いい店を知ってしまったな。
大満足です
取材・文・撮影/パリッコ
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