定番お菓子を缶詰にして5年間保存を可能にした商品が大ヒット中だ。「ビスコ保存缶」(グリコ/420円)、「リッツ缶」(ナビスコ/S缶実勢価格315円)、「コアラのマーチビスケット保存缶」(ロッテ/実勢価格420円)、「えいようかん」(井村屋/525円)など、災害に対する意識が高まるなか、「保存食でもおいしいものを」という消費者のニーズに応えているようだ。

どれも定番のヒット商品ばかりなので、味に関しては安心。だが、非常食としての実用性はどれほどのものか、健康食品に精通する加藤三千尋氏(バレア代表取締役)に聞いた。

「激しい運動はしないけれど避難時の体力程度はキープしておくために平均的な日本人が1日に摂取するエネルギーを2100kcalとすると、ビスコ缶だと3.5缶必要となりますね」

ビスコ缶しか無かった場合を想定すると、1日にビスコ100枚……。いくらおいしいとはいえ、何日も続けるのはキツいだろう。

とはいえ、保存食として人気の「サトウのごはん」1パックが290kcal、「カロリーメイト」4本が400kcal、「カンパン(100g)」1缶が410kcalであることからわかるように、非常食1種で1日の必要カロリーを補うのはたやすくない。言い換えれば、これらのお菓子缶も、定番の保存食と比較してもその実用性は決して劣ってないことがわかる。

ちなみにカップ麺は、加藤氏いわく「おいしいけど塩分が多すぎ、非常時は水不足になりがちなのに喉が渇いてしまう。血圧の高い人は特に危険」とのこと。

「保存できるお菓子の中で最もエネルギー変換効率がよいのは、やはり糖分の固まりであるようかんやキャラメルです。とはいえ空腹時に『かんで食べる』ことの充実感は大きいので私の家でもこれらの缶入りお菓子は購入しました。栄養バランス的には脂質が多すぎますが、非常時にダイエットを気にしてもね(笑)」(加藤氏)

さらに、栄養バランスを考えるなら複数の保存食を組み合わせることが重要だ。

「それより問題は、これだけではタンパク質が不足し、1週間程度で筋肉が弱ってくること。

そのため、併せて鶏ささみ缶や豆乳の買い置きもオススメします。紙パック入り豆乳は常温で90日保存できるので、多めに買って日常的に飲みながら入れ替えていくと便利でしょう。あと、脂質の代謝にはビタミンB2、炭水化物の代謝にはビタミンB1、タンパク質の代謝にはビタミンB6が必要なので、マルチビタミンサプリもあるとよいですね」(加藤氏)

昨年の東日本大震災時、発生から数日間は多くの地域で物流が滞った。最低限の保存食を常備しておくことで、心にも余裕が生まれるはずだ。

(写真/佐賀章広)

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