この試合を見たスポーツ紙記者が興奮気味に語る。
「いや~、すごかったですね。あの試合では150キロ台中盤の球でもカットされたり打ち返されたりしてましたけど、相手打者は完全にストレート待ちで、ヒットを打たれたシーンも“出合い頭”みたいなもの。さすがにあの160キロはちょっと(スピードガンが)盛っちゃったとは思いますけど(苦笑)。ただ、仮に5、6キロの誤差だとしても、むちゃくちゃ速いことに変わりはない。もっと緩急をつけられたら、高校生は手の出しようがないでしょう」
大谷といえば、春のセンバツに出場した際も、“岩手のダルビッシュ”“大会屈指の投手”として注目を浴びたものの、結局は初戦の大阪桐蔭戦に9失点であっさりと敗退している。故障明けだったとはいえ、酷な言い方をするなら「評判倒れ」だった。あのときからどれほど進化したのだろう。
高校野球に詳しいスポーツライターの田尻賢誉(まさたか)氏はこう語る。
「進化というより、センバツのときとは別人ですよね。彼はあの大会前に『故障は完治した』と言っていましたが、どう見ても完全な状態ではありませんでした。事実、春の時点では左足を強く踏み込むことができていなかった。しかし、今は故障した左足にも体重を乗せられているし、さらに重心をグッと下げながら、左足で地面をつかむように踏ん張れている。映像を見比べれば一目瞭然ですが、春とはまったくフォームが違います。先日、お会いした日大三高(昨夏の甲子園優勝校)の小倉全由(まさよし)監督も『テレビで映像を見たけど、春とは比べものにならないくらいよくなった』と驚いていました」