
そんな評判が広がり、昨年1月の放送開始直後から話題になった『魔法少女まどか☆マギカ』。かわいらしい絵柄と“魔法少女もの”というイメージにそぐわないダークな世界観は、アニメファンにとどまらない幅広い視聴者を獲得。“社会現象”といわれるまでになった。そんな『魔法少女まどか☆マギカ』の総集編が、現在劇場版として前後編で公開されている。この2000年代最高のアニメの魅力を、現役大学講師を務める学者芸人・サンキュータツオ氏に語ってもらった。
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普段アニメを観ない人は、このかわいい絵を見て「ただの萌えアニメでしょ」っていう先入観を持つかもしれません。でも、そう思った時点で、すでに演出の意図にだまされているんです(笑)。このかわいいキャラたちが展開する意外なほど重いストーリーに触れたとき、そのギャップにあなたはヤラれるでしょう。
僕は、ドラマ『家政婦のミタ』を面白いと思った人にこそ、このアニメを観てほしいと思っています。ミタさんって、まるで『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイのような、アニメ的なキャラクターでしょう? しかも、1話完結のストーリーの組み立て方も、実はこれまでのアニメ的な文法をかなり踏襲している。
そして、『まどか☆マギカ』は、そんな過去のアニメ的なキャラクター造形であったり、ストーリーの文法から、一歩先へ踏み出しているんです。
例えば、暁美ほむらのようなすごく記号的なキャラクターがいる一方で、美樹さやかのような複雑な内面を持つ少女が描かれていますよね。僕は彼女のようなめんどくさい女が大嫌いなんですが(笑)、観ているとつい「俺が助けなきゃ!」と思ってしまう。非常に魅力的な人物造形になっていると思います。...続きを読む