大阪府交通安全協会(以下、府安協)が大ピンチだ。

大阪府警OBの天下り先としても知られるこの財団法人の任務は交通安全の啓蒙活動。
その費用をまかなうため、大阪府警は長年、府内で行なわれる運転免許の更新講習を委託してきた。その委託料は府安協の年間収入17億円の約3割、5億円以上にもなる。

ところが、昨年実施された一般競争入札で、府安協より6000万円も安い価格を提示した神戸市のコンサルタント会社が落札してしまったから大変。府安協は40年近くも独占してきた免許更新講習ビジネスを失うはめになってしまったのだ。

府安協の広報担当者がコボす。

「われわれは交通安全のスペシャリスト。
府内の年間の免許更新講習の受講者数は100万人を超えます。その方々に安全運転の知識を伝えることができなくなった。無念というほかはありません」

府安協を襲った激震はこれにとどまらない。3割も収入がダウンしたため、大規模な人員リストラを迫られることになったのだ。

府安協の職員は約430人(府警OB約200人を含む)。そのうち、免許更新講習に携わる職員は実に215人(うち府警OBは95人)にも及ぶが、競争入札に敗れたことでこの215人の仕事がなくなってしまった。


別の府安協関係者が明かす。

「ほかのセクションに異動させるなど、調整をしている最中です。ただ、215人もの大量の職員が仕事を失ったことは事実。他部署に異動するとしても、その人員数はそう多くない。このまま引退し、地域ボランティアとして交通安全活動を続けるという職員も少なくありません」

どうやら、215人の大半が退職するはめになったようなのだ。


府安協だけではない。
別の自治体にある交通安全協会のなかには運転免許の更新講習こそ死守したものの、競争入札で民間企業に負け、運転免許試験場の窓口業務を失ったケースもある。

免許更新事業の一般競争入札は小泉政権下の2004年、規制改革・民間開放推進会議で答申されて以来、全国に広まっている。

競争入札が一般化すれば、殿様商法の交通安全協会に勝ち目はない。民間企業との競争にさらされ、府安協どころか、全国の交通安全協会までもが、軒並み免許更新ビジネスから撤退ということにもなりかねない。

そんな危機感もあってか、前出の府安協の広報担当者はこう語る。

「われわれの役目は交通安全の啓蒙。
ですから、収入が減ろうが、リストラされようが、歯を食いしばってでも仕事はやり抜く。恨みつらみは言いません。ただ、安全講習は誰でもできる仕事ではないのです。それを入札額が安いからという理由だけで、選んでいいものか。われわれが言うと負け惜しみになりますが、当の大阪府民はわかっているはず」

つまり、交通安全のノウハウのない民間に講習を任せてクオリティが保証できるのかと、反論したいわけだ。しかし、これには講習を受ける府民からブーイング。


「講習の質? そんなもん、警察OBの教官が20分ほどモゴモゴしゃべって、あとは短いビデオを2本見せるだけやないか。誰でもできる仕事や」(門真[かどま]運転免許試験場に来ていた20代男性)

「講習は警察OBの銭儲(ぜにもう)け。世の中にはいろいろな免許制度があるけど、3年とか5年ごとに講習させて高い金取るなんてほかにあらへん」(同・40代男性)

交通安全協会が消えてなくなる日は意外と近いかも……。

(取材/ボールルーム)

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