昨年、風営法の許可なく“客にダンスをさせた罪”で大阪・梅田のクラブ「NOON」が摘発された事件をめぐり、大阪地方裁判所で先月から公判が開かれている。

以下、第2回公判において、店側が客を踊らせたことを立証したい検察と、証人尋問で召喚された、摘発時に店内にいた客とのやりとりの一部だ。


検察「(店で)何をしていた?」

証人「お酒を飲んだり、音楽に合わせて踊ったりしていました」

検察「動かしていたのは足?」

証人「足です」

検察「腕を動かすときは手首、肩、ヒジのどこを基点に?」

証人「ヒジです」

検察「どうジャンプしましたか」

証人「その場で少し上に」

いったい、この裁判は何を争っているのか。傍聴席からはため息ともとれる笑い声が漏れた――。

2010年から始まった警察によるクラブの摘発は、今、全国に広がっている。摘発の理由はいずれも、「無許可で客にダンスをさせた罪(風営法違反)」である。なぜ、ダンスが風営法で規制されているのか? それは、警察によるダンスの定義が「男女の享楽的雰囲気の醸成など、社会の風俗に影響を及ぼす可能性のあるもの」だからである。

簡単に言うと、「ダンスをすると楽しくなりすぎて、悪いことをしちゃうかもしれないから」。
では、どんな動きをすると、そんな“悪いダンス”になるのか? 大阪地裁での警察官らの証言をもとに、具体的に説明しよう。


・薄暗いなかで大音量の音楽が流れ、お酒を提供している店内で客が楽しそうに踊る(享楽的なダンス)

・ステップを踏む(幅が1m以内ならセーフ)

・腕や頭を振る

・腰をくねらせる

・リズムに乗って激しく体を上下する

こういった動きをすると、「健全な娯楽の粋を超えて著しく自制心、解放感が弛緩、高揚することで風俗上の諸問題を引き起こしかねない状況となる」というのが警察庁の見解だ。

冒頭の裁判で被告(クラブ)側の弁護を務める響総合法律事務所の西川研一氏が、問題の本質を語る。

「結局、ダンスが性風俗を乱すという警察の考え方自体が時代錯誤なんです。仮に、クラブのダンスフロアで男女が全裸で抱き合ったら、周りの人間も性的な欲求が刺激されて性風俗の乱れにつながる。だから取り締まるというなら理解はできます。
それを何が享楽的なのか曖昧(あいまい)なまま議論を進めようとするから、滑稽(こっけい)な話に終始してしまうんです」

このNOON裁判は、来年3月の判決まで続く。

(取材/興山英雄)

■週刊プレイボーイ49号「今、あらためて考えたい素朴な疑問“ダンス”って、なんだ?」より

元の記事を読む