大戸屋ホールディングスの14年3月期の売上高は前年比13.9%増、経常利益は同76.9%増で、過去最高を記録。
業界誌編集長のA氏が話す。
「大戸屋の客層は大学生からサラリーマン、OL、ファミリー、シニア世代と実に幅広い。なかでもほかの外食チェーンと一線を画すのは女性のひとり客が多いところ。
大戸屋があらゆる世代から支持される理由について、外食事情に詳しい食品安全教育研究所の河岸宏和氏が話す。
「単純に、メシがうまいからです。ほかの大手外食チェーンはコスト削減を優先し、セントラルキッチンで大量加工した食品を店舗で温めて提供する。一方、大戸屋は料理の品質を重視し、セントラルキッチンを持たずに店内調理にこだわる。豆腐も北海道産の大豆、トヨマサリを100%使用した豆乳とオホーツク海の天然にがりを使用し、厨房で作るくらいですから」
また、大戸屋はタイ(47店)や台湾(22店)などアジアを中心に86店舗を展開し、海外事業も成功させている。その手法について、企業の海外進出支援の専門家であるエッグフォワード株式会社の徳谷智史代表がこう語る。
「大戸屋の海外展開は非常にユニーク。まず、進出先のパートナー企業と合弁会社をつくるんですね。例えばタイでは、食品供給会社と手を組んで食材を供給してもらい、出店力の強い大手不動産会社とも提携して店舗開発を進める。こうして役割分担を明確にした上で、大戸屋は店舗運営に専念します。
ここまではよくある話ですが、大戸屋の場合、事業を軌道に乗せると、株式をすべて不動産会社に売却し、完全フランチャイズ(FC)に切り替えるんです。儲かっている直営事業を手放すなんて、そう簡単にできる決断ではありません。
大戸屋はそれを原資にほかのアジア諸国に進出。和食ブームも後押しし、海外でも繁盛店を増やしているという。
おいしさにこだわった店作りと、投資ファンド並みの事業展開のうまさ。このふたつを併せ持った大戸屋の好調ぶりは、まだまだ続きそうだ。
(取材・文/興山英雄 撮影/下城英悟)
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■週刊プレイボーイ21号「大戸屋は本当にスゴいのか?」より