どぎつい関西弁とキレッキレなワードセンスの尖りまくった笑いで、昨年あたりからジワジワ知名度を上げ、「2017年、ブレイク必至」と噂される新世代女芸人コンビ、それがAマッソだ。

先日、開催された『M‐1グランプリ2016』では、準決勝を経て敗者復活戦に出場。
放送作家の鈴木おさむ、クリエイター・いとうせいこうをはじめ、“芸人泣かせ”?で知られる黒柳徹子までもが太鼓判を推すふたり。一体、何者なのか?

加納愛子と村上愛による“幼馴染コンビ”のこれまでを語ってもらったインタビュー前編に続き、後編ではネタづくりの秘密から、ふたりのプライベートまでを掘り下げる!

まずは『M‐1』敗者復活戦の結果を受けてのコメントから…。

―『M‐1』敗者復活戦、お疲れさまでした。ちょっと緊張してました?

加納 そりゃあもう、めちゃめちゃ緊張しましたよ(笑)。でも、まだまだですね。

―まだまだ?

加納 反応あんまりよくなかったんで。
だって、(敗者復活戦出場18組中)16位ですよ? ちょっとハズいっすわ(笑)。

―とはいえ、予告通り、新ネタも披露されていたし、今回で認知度も上がったんじゃないでしょうか。しかも、ふたりはネタだけじゃなくて新しい衣装もおろしてましたよね!? 村上さんのブルーのスーツ、インパクトありました!

村上 あれ、ISSEY MIYAKEで買いました。

―ブランドものだったんですね!?

村上 「(衣装に)青が足りてない!」と思って、パワーアップさせたんです。

加納 気合いは伝わったんじゃないですかね。

―今回の『M‐1』を経て、いろいろ課題も見えてきたと思うんですが、来年はやっぱり決勝進出を目標に…?

村上 そうですね。
準々決勝(2015年)、準決勝(2016年)ときてるんで、来年こそ決勝行けるように頑張ります。

加納 よりおもろいネタをするっていうことだけですね。それだけ考えて、この先また1年やっていきます。


―で、今回はAマッソのネタ作りについて聞かせてもらえたらと。『M‐1』でも披露した王道のしゃべくり漫才から、Wボケ&Wツッコミ漫才、そして鈴木おさむさんの番組(『冗談手帖』)で創作した“リズムネタ”やコントまで…かなりバリエーションあるじゃないですか。今、全部で何本ぐらいあるんですか?

加納 ちゃんと数えたことないけど、200本くらい?

村上 あるかな、それぐらい。


―200本も!

加納 いや、「200本も」じゃなくて「200本しか」ですよ。だって、ジャルジャルさんとか、それこそネタ何千本もありますから。しかも、200本のうち、ほとんどがもうやってないんで。

村上 うちら、すぐ捨てるんです。同じネタを3回やった時点で「もう飽きた…」って(笑)。

加納 でも、それじゃダメなんじゃないかって気づいて、実はこの1年間、1本1本のネタをブラッシュアップするっていうことと初めて向きあったんです。
やっぱり、ネタ増やすだけじゃなくて、磨く作業をちゃんとやるのも大事だなって。

―そもそも、ネタは加納さんが書くんですよね?

村上 100%、お任せです(笑)。

加納 私がネタ書いてる間、こいつは居酒屋でバイトして。

―ネタ担当が加納さんっていうのは、もう結成当初からずっと?

加納 いや、一番最初にインディーズライブに出るってなった時、じゃあお互い5個ずつネタ考えてこようやって、マクド(ナルド)で見せ合ったんですよ。それで、村上がネタ書いてきたノート見せてもろたら、ほんまにひどくて。「…わ、わかった。
大丈夫、大丈夫。ネタは私が書くから、心配すんな」って、村上のネタの歴史はそれで終わり(笑)。

―逆にどんなネタだったのか、気になるんですけど(笑)。

加納 というか、ネタの形にすらなってなくて、単発ギャグとか、そんなんやった気がするなぁ。

村上 そうやった。「オ~!」っていう叫び声のアクセントの付け方とか。


加納 意味わからんでしょう?

村上 普通に「オ~!」って叫ぶのはつまらんから「オッ、オッ、オッ~~ウ!」って、歌舞伎みたいに声が裏返ったらおもろいんちゃう?とか。言葉の響きの面白さをアピールしようって…そんな感じのネタでした。

加納 せやから、ネタになってないねん(笑)。いざコンビ結成っていう段階でそんなん見せられたら、どないします? 私の頭ん中、「あかん。ムリかも。見込み違いやったかも…」って。だから、あの日のことを思えば――

村上 私、ようやってますわ(笑)。

加納 ほんまや。ようやってるで、村上(笑)。


―Aマッソのネタって、すごく「男前」だなって思うんです。口の悪い関西弁が連発される感じもそうですけど、いわゆる「ウザい女あるある」とか「イタいOL同士の会話」みたいな、女芸人にありがちなネタは絶対やらないじゃないですか。それって何か理由でもあるんですか?

加納 いや、やらないっていうポリシーがあるわけじゃなくて。

村上 ふたりともほんま世間知らずなんで、「ウザい女あるある」とか、よくわからないんです(笑)。

加納 OLでも女子高生でも、やれるんやったらやりたいです。でも、できないんですよねぇ。女の人の平均値みたいなのをそもそも知らんから。あと、うちらが好きだったのが、そういうタイプの笑いじゃなかったっていうのもあるかなぁ。

―元々、笑い飯に一番影響を受けてるわけですもんね。

加納 それで言うたら、ネタを作る時、シチュエーション自体はベタでも、設定を絶対ありきたりなものにはしないっていうのは意識してるかもしれないですね。

―確かに加納さんが書くネタって、「思い出の話」「海水浴」「射的」「ゲーム」とか…モチーフ自体は身近ですけど、どんどんブッ飛んだ方向に話が展開して、お客さんが食らいついていくのが大変!みたいなことも時々あったりしますもんね(笑)。そこをうまいことマイルドに見せてるのが、村上さんの柔和なキャラクターと演技力だと思うんですが。

村上 今、褒(ほ)められてます?

加納 そんな大したもんちゃいますけどね(笑)。まあ、でも私がネタ書いて、こいつに見せた時、反応がイマイチやったり「意味わからん」ってなったら、取り下げるというか、ボツにするネタもザラにありますよ。

村上 いっぱいある(笑)。でも、基本おもろいんで。そこはほんまに信用してます。

―あと、Aマッソといえば、加納さんのツッコミに独特なワードが散りばめられてるじゃないですか。あのセンスって、どういうインプットをしながら磨いてるんですか?

加納 本は読んでますね、結構。

―どんな本を?

加納 10代の後半から歴史にハマって、そこから司馬遼太郎はずっと読んでます。途中でミステリーに行って、アガサ・クリスティを読んだり。最近は後輩に借りて三島由紀夫をしばらく読んでますね。でも、それが具体的にどうネタに活かされてるかっていうのは、うまく説明できないですけど…。

―じゃあ、言葉をチョイスする時の判断基準みたいなのはあるんですか?

加納 それはやっぱ、既視感ですかね。

―既視感…。

加納 芸人が最近ネタでよう使ってるなあとか、よう聞くなあっていうフレーズがあるじゃないですか。例えばですけど、「めっちゃイヤや」っていうフレーズを使いたいなって思った時、そのまま使うんやなくて、“めっちゃ”の類語を調べたりして、「ものすごくイヤ」、「もんすごいイヤ」、「しごくイヤ」って、既視感がありつつ、でもちょっとズレてるみたいな、ちょうどいいとこのフレーズを探っていく作業は結構やってるかなぁ。割と真面目にやってるだけです、そこは。

村上 真面目なんです、このコ(笑)。

加納 ただ、そんなんばっかやって「こいつ凝ってるだけやん」とか思われるのもあれやし、最終的に「なんでやねん」が一番面白かったりする時もあるから難しいですよね。でもほら、千鳥のノブさんの「こする」ツッコミあるじゃないですか。拳をこすりつけるアクションがツッコミに乗っかったやつ。ああいうワードの面白さを超えたのってほんま強いですよね。誰ともかぶってない、発明みたいなツッコミ、いつか編み出したいですね。


―現在も上京以来の共同生活は続いてるんですか?

村上 そうですね。1K7万円のアパートに一緒に住んでます。

加納 食えてないですから、まだ。

―普通に結婚とか考えてもいい年齢ではあるじゃないですか。そのへんは?

村上 当分、ないなぁ。

加納 ほんまに結婚とか見えてないです、今は。食えてないし。もっかい言うけど(笑)。

―ちなみに、ふたりの好きな男のタイプってどんな感じなんですか?

加納 何聞いとんねん、この流れで!

―いやいや、気になるじゃないですか。ネットの検索でAマッソって入れたら“Aマッソ かわいい”っていう並びが何番目かに出てくるんですよ(笑)。

加納 そんな情報要らんねん、マジで(笑)。

村上 えっと、私は…言うことを聞いてくれる人かなぁ。

加納 んで、ちゃんと答えんのかい!

村上 従順な人がタイプです。

加納 でも、ほんまにこいつそうなんですよ。今まで付き合ってきた男見てたら全員、村上の言うこと聞く、聞く(笑)。村上を女王にしてくれる男ばっかりで。

村上 なんでやろなぁと思って、お母さんに聞いたことあるんです、「男がみんな私の言うこと聞いてくれんねんけど、どう思う?」って。そしたら「そういうふうにあんたのこと育てたから」って言われました(笑)。

―じゃあ、加納さんは?

加納 うちはねぇ、ゲラな人です。よく笑う人。ふたりで一緒におる時もボケたいんで、やっぱり。


―顔のタイプとかあるんですか?

加納 顔。顔か。ほんまに言うんですか? え~っと、(小声で)香田晋

―えっ?

加納 香田晋。

村上 演歌歌手の?

加納 そう、演歌歌手の。

村上 ほんまに?

加納 いや、ほんまに。なんや、あかんのか? あと、学生時代ずっと好きやったのは、元阪神の藤本(敦士)っていう。なんでしょう、だから男前ですよね、いわゆる。

―村上さんは?

村上 …………(10秒くらい沈黙があって)ILMARI。

加納 はあ?

村上 ILMARI。RIP SLYMEの。

加納 ウソつけよ、おまえ! 初めて聞いたわ、そんな話。ILMARIの音の響きでボケんなって、ほんま(笑)。

村上 ハーフっぽい顔立ちとか、ほんまカッコええ。いや、ILMARI、最高や。

―じゃあ、最後に芸人としての目標を聞いていいですか?

加納 100億円稼ぐ。

―お金ですか。冠番組を持ちたいとか、『M‐1』史上初の女芸人チャンピオンになりたいとか、そういう話ではなくて…?

加納 いや、そういうのを全部クリアした上での100億円ですから。ほんで、フランスに別荘買って、そこで大喜利したい(笑)。

村上 誰が笑うねん、それ(笑)。私はいろんな場所にロケで行けるような芸人になって、食べたことないもの食べたいです。

加納 例えば?

村上 …ピロシキとか。

加納 それは食ったことあるやろ、普通に。

村上 いや、本場の。ロシアやっけ。今度、一緒に食べに行きます?

加納 誘うな、誘うな。さっきから、何回も言わすなや(笑)。

(撮影/中川有紀子)


■Aマッソ(エーマッソ)


2010年結成。村上愛。1988年生まれ、大阪府出身。ボケ担当。加納愛子、1989年生まれ、大阪府出身。ネタ作り、ツッコミ担当。コンビ名の由来は「造語です。“A”は愛と愛子のイニシャルで、“マッソ”は『キン肉マン』の“マッスル”から取ってきました」。静岡朝日テレビ「SunSet TV」で定期配信中の初冠番組『Aマッソのゲラニチョビ』が好評につき地上波へ進出決定!

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