ドナーから提供された精子を、女性はシリンジを使って自ら膣内に注入するという。医療機関を介さないため、感染症のリスクが懸念される
精子バンクの公的整備が遅れる日本で、医療機関を介さない個人ボランティアによる精子提供が急増している。精子ドナーたちを取材した前編に続き、後編では提供された精子で実際に子供を授かった女性たちが、その葛藤や苦悩を告白する――。
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■男性にトラウマを持つ選択的シングルマザー
ネット上で「精子提供ボランティア」と称し、夫が無精子症の夫婦やシングルマザー志向の女性らに私的に精子を提供している人たちがいる。前編記事「私が精子ドナーになった理由」では3人の精子ドナーを取材。彼らはいずれも「子供が欲しいという、ごく自然な願いを叶えられずに苦しんでいる女性たちを放ってはおけない」と、真っすぐな善意を口にした。
精子提供の方法はふたつある。ひとつは「シリンジ法」で、採取した精液を手渡し、女性が自らシリンジ(注射器)で膣内に注入するというもの。もうひとつは「タイミング法」で、実際に性交渉をして精子を提供するものだ。
3人はいずれも既婚者で、そのうちふたりはタイミング法も採用。その活動は家族には「秘め事」とし、「墓場まで持っていく」という。
また、精子提供により生まれた子供が将来的に自分に会いたいと望めば「会うつもり」というが、被提供者の女性には自分のフリーメールのアドレスしか知らせていない。