レアル・久保建英が戦うセグンダB(スペイン3部相当)のレベル...の画像はこちら >>

セグンダBについて語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第107回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、久保建英が戦うスペイン3部リーグについて。レアル・マドリードに移籍し、今シーズンはスペイン3部リーグ相当のセグンダBを戦うとみられる久保建英。しかし、セグンダBとは、いったいどのようなリーグなのか? 宮澤ミシェルが解説する。

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久保建英がプレシーズンツアーとはいえ、レアル・マドリードのトップチームのなかで存在感を発揮しているね。久保がここまでやれるというのは、ジネディーヌ・ジダン監督にとっても想定外だったんじゃないかな。

プレシーズンマッチはトップチームに帯同している久保だけど、ラ・リーガが開幕したらセグンダB(3部リーグ相当)を戦うカスティージャでプレーすると見込まれている。

だけど、それは久保の能力を考えると、勿体ないことのような気がするんだ。

カスティージャというのはレアル・マドリードの下部組織(カンテラ)で、最上位に位置するBチームのこと。

カスティージャがセグンダ(2部)を戦うのなら、久保にとっても多くの経験を積めたんだよ。しかも、日本のサッカーファンにとってもメリットはあったんだ。デポルティーボ・ラ・コルーニャに移籍した柴崎岳や、マラガが新天地になった岡崎慎司と対戦になったら、盛り上がるのは間違いなかったからね。

だけど、カスティージャが戦うのはセグンダ"B"。

日本人対決は望めないうえに、同じくセグンダBを戦うバルセロナBとは地域が違うから対決はない。古巣との対決や、バルセロナBに入った安倍裕葵との対戦は、来季以降の楽しみっていうわけ。残念だよ。

そのセグンダ"B"は、プロからアマチュアまでが混在しているスペインの地域リーグ。Jリーグと実力を比べるのは難しいね。方向性が違うから。

セグンダBは、才能に恵まれた若い選手たちが、ここから世界のトップに躍り出てやろうしのぎを削っている。粗削りだけどパワーの漲ったリーグなんだ。

久保もこれからの選手ではあるし、今季からカスティージャを率いるのがスペイン代表として活躍したラウル・ゴンザレスだから、糧になる部分は間違いなくある。

だけど、1シーズン丸々をカスティージャでとなると、久保のレベルはそこを超えちゃっているから、いずれは物足りない舞台になると思うんだよな。

だから私は、久保をレンタル移籍させてもらいたいんだ。スペイン1部のほかのクラブでした方がいいよね。

彼のクオリティーなら欲しがるクラブはあるだろうし、高い次元でプレーすることで、久保の才能はさらに磨かれていくと思うんだ。それで1年か2年後にレアル・マドリードに戻って、トップチームを目指せばいいと思うよ。

だけど、ジダンはそれをしないだろうな。久保をカスティージャでプレーさせていれば、シーズン途中でもトップチームに引き上げて、手元に置くこともできるからね。リーグ戦やチャンピオンズ・リーグでは難しいだろうけれど、故障者との兼ね合い次第ではスペイン国王杯で起用する可能性もあるかもしれないよね。

いずれにしろ、日本だけではなく、スペイン国内でも久保の使い方が焦点になるっていうのがすごいよ。

それもこれも久保が実力でまわりの評価を変えているから。まだ18歳だというのに、本当にすごいよ。

久保自身は年齢で判断されたくないと考えているし、結果を残して初めて評価されるプロの世界では当然のこと。とはいえ、やっぱり日本から初めて登場した世界の頂点のレベルで評価されている選手だからね。焦らず、無理せず、怪我しないで成長してもらいたいんだ。

それで2、3年後には世界の頂点に立つクラブの中心選手になっている。

そんな夢を見られる時代が、日本サッカー界に訪れている。しかも、久保に続く存在がまだまだいる。久保が牽引しながら、日本代表がもう一段も二段も高みへと登る日は、すぐそこまで来ていると期待しているよ。

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太